太陽光発電用地についての売買契約や賃貸借契約を締結する際、土地の地主が高齢であるケースも少なくありません。なかには、認知症を疑わなければならないケースも出てくるでしょう。

 しかし、意思能力に問題があるとして、成年後見の申し立てなどをすると、手続きに時間がかかってしまい、スムーズな契約に至らないリスクがあります。

 だからといって、無理な契約締結を強引に推し進めてしまい、後々売買契約や土地賃貸借契約が「無効」になってしまうと、設置した太陽光パネルを撤去するなど多大な損失が生じることとなり、また、当該土地上における発電事業が出来なくなると言った大きな逸失利益も生じてしまいます。

 今回は、高齢故、認知症が疑われる地主と契約を締結する際の法的注意点を解説します。

改正民法は「認知症高齢者」保護

 改正民法は、第3条の2という条文を新設し、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。」と規定しました。

 契約が無効となるということは、契約がはじめから無かったことを意味するのであり、取引の相手方がリスクを負うこととなるのですが、それ以上に本人保護の必要性を民法は確認しているのです。

 今後、到来する高齢化社会において、この「意思能力」の有無は大きな論点として議論されることになろうかと思います。

「成年後見」申し立てへの抵抗感

 高齢化社会の到来ゆえか、最近、認知症の疑いがある高齢者と契約を締結する際の注意点についての法律相談を受ける機会が多くあります。

 意思能力がない者の行為は無効であり(民法3条の2)、この無効リスクは、取引の相手方が負うこととなる(原状回復義務について、民法121条の2)以上、家庭裁判所に後見開始の審判申立をした上で後見開始の審判決定をしてもらい(民法第7条,同838条)、「成年後見人」との間で契約を締結することを弁護士としては、お勧めしています(図1)。

図1●「成年後見制度」の役割
(出所:法務省民事局)
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 しかし、高齢者の側の家族としてみると、自分の肉親を「成年被後見人」とし、「精神上の障害により自利を弁識する能力を欠く状況にある者」とすることに抵抗感がある人も多いと思いますし、何より、家庭裁判所への申し立ての手続きには手間がかかり、たった1度の契約(不動産売買や土地賃貸借契約など)のために、成年後見開始の申し立ては避けたい、と言われるケースもあります。