太陽光発電事業者のための法律Q&A

太陽光システムの販売は、消費者契約法による規制対象ですか?

<第50回>「消費者」と「事業者」、法律上の判断基準

2019/04/25 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生

 消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があります。このような状況を踏まえて消費者の利益を守るため、平成13年4月1日に「消費者契約法」が施行されました。同法は、消費者契約について、不当な勧誘などによる契約の取消しと不当な契約条項の無効などを規定しています。

 太陽光発電システムを販売する場合にも、「消費者契約法」は適用され、発電システムの購入者は保護されるのでしょうか。今回は、この論点について解説してみたいと思います。

太陽光用地に「仮差押え」が…

 まず、そもそも売電利益を得るための太陽光発電システムの契約は、消費者取引とは言えないのではないか、という見方があります。この点について争われた裁判例として、東京地裁平成30年 4月20日判決の事案があります。

 原告と被告は、被告が所有する土地(以下「本件土地」という)に、原告から被告が太陽光発電システムを購入して設置する工事を請負い、原告が被告から本件土地の利用権を取得し、その対価を支払うことを内容とする契約を交わしました。

 しかし、被告の債権者の申立てにより、本件土地の仮差押命令が発令されました(以下「本件仮差押」という)。

 この仮差押の事実に気付いた原告は、被告に対し、本件契約は、本件土地に仮差押がされていることを認識しつつ、これを秘して締結されたものであり、消費者契約法上の不実の告知・不利益事実の不告知に該当するとして、消費者契約法4条に基づき、本件契約を取り消す旨の意思表示をした事案です。

 この事案において、被告は、原告は消費者契約法のいう「消費者」にあたらないと主張しました。

 この点、東京地裁判決は、以下の判示をしています。

 原告は、会社を経営しているものの、本件契約は会社として締結したものではないことはもとより、会社の事業と関連のないものであり、飽くまで個人としての投資として本件契約を締結したものであること、太陽光発電事業について契約を締結するのは本件契約が初めてであり、その後業として行うつもりであったとも認められないことからすれば、消費者契約法2条1項の消費者に該当する。この認定に反する被告の主張は採用することができない。

 東京地裁判決が「太陽光発電事業について契約を締結するのは本件契約が初めてであり、その後業として行うつもりであったとも認められないことからすれば、消費者契約法2条1項の消費者に該当する」と判示したことから、2度目、3度目の取引であれば、消費者契約法上の「消費者」には該当しないのか、という論点が生じます。

2~3度目なら「消費者」でない?

 消費者契約法による保護を受けるのは、「消費者」のみで、「事業者」は保護されません。太陽光発電設備の設置は、売電による利益を得るための取引であるので、個人がシステムを購入したものであっても、実質的には当該個人は「消費者」ではなく「事業者」に該当するのではないか、が問題となります。

 そもそも、消費者契約法において、「消費者」と「事業者」を区別するのは、どのような趣旨からでしょうか。

 消費者契約法が「消費者」と「事業者」を区別し、消費者のみを特に保護する理由は以下の2点にあります。(1)契約の締結、取引に関する「情報・交渉力」の格差。(2)この格差は、「事業」に由来するため。ここで、「事業」とは「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」を指します。営利の要素は必要でなく、営利の目的をもってなされるかどうかを問いません。

 つまり、「事業として」とは「同種の行為を反覆継続して行うこと」を指します。「業」にあたるかは、社会通念上それが事業の遂行とみられる程度の社会的地位を形成するかどうか、によって最終的に判断されます。

 ある期間継続する意図をもって行われたものであれば、最初の行為も「事業として」行われたものとなります。

「個人」は消費者か、事業者か?

 「個人」は、どのような場合に、事業者になるのでしょうか。まず、事業を行っていない個人は、当然「消費者」にあたります。事業を行っている個人である「個人事業者」は、「消費者として」、又は「事業者として」、契約当事者になる場合の双方があります。個人事業者の場合、当該契約において「消費者」か「事業者」か、判断にくい場合があります。

 この場合、個々の具体的契約に即して、客観的にみて判断することとなります。その際の考え方は、(1)契約締結の段階で、該当事項が目的を達成するためになされたものであることの客観的、外形的基準(例:名目等)があるかで判断し、(1)のみで判断することが難しい場合、物理的、実質的(例:時間等)基準に従い、該当事項が主たる目的を達成するためになされたものかで判断することとなります。

4つの判例に見る「消費者」

 取引上、「消費者」にあたるのか、あたらないか、という論点に関しては、いくつか参考になる判例がありますので、以下に紹介します。

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「2~3度目」だけでは判断できない

 こうした判例などから、「消費者」にあたるかは、当該具体的事情によるものと考えます。1回目の取引だから消費者にあたる、と定型的には判断できません。

 契約の目的が、利益を得るためかというのは関係がなく、「一定の目的のためにされたものか」「反覆継続されるものか」という観点から判断されることとなります。

 また、契約書面では法人などの名義で契約したとしても、実態として「事業として又は事業のために」契約を締結していないのであれば、当該個人は「消費者」であると判断されるケースも生じることとなります。

 以上より、1度目の取引は、消費者契約法上の消費者に該当し、2度目、3度目の取引であれば、消費者契約法上の消費者には該当しないこととなる、と定型的に判断することは出来ないという結論となります。

「違反」となる勧誘形態とは?

 販売先が「消費者」と判断されたとして、どんな場合に、消費者契約法に違反となる勧誘形態とされるのでしょうか。

 消費者契約法4条1項1号は、重要事項について、事業者が事実と異なる説明を行い、これにより消費者が誤解し、契約を締結した場合について、契約の取消権を認めています。

 同法4条1項2号は、契約の目的物に関して、事業者が将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供し、当該提供された断定的判断の内容が確実であると誤認して契約を締結した場合には、これを取消せるとされています。

 さらに同法4条2項は、事業者が消費者契約の締結について勧誘する際、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限ります)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないと誤認し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消せると定めています。

 以下では、同種の先例を検討し、どのような場合に取消のリスクがあるか検討します。

「太陽光+オール電化」販売で判例

 この問題について、既に、太陽光発電システムをめぐっては、消費者契約法4条1項、2項に基づき、システムの設置契約が取消された裁判例が存在します。

 神戸地裁姫路支部平成18年12月28日判決は、太陽光発電システムの訪問販売業者が、太陽光パネルの設置とオール電化工事の勧誘を行うに際して、モニター契約として、太陽光パネルの設置工事費用だけでオール電化工事もおまけとして行うとの勧誘を受け、契約を締結しましたが、実は、太陽光パネルとオール電化の代金として相当な金額であり、太陽光パネル単体の値段としては極めて高額なものであったという事案において、消費者契約法4条1項、2項(及び特商法9条の2:訪問販売について消費者契約法4条1項、2項と同等の内容を定めたもの)に基づく取消を認め、太陽光パネルの設置工事の取消を認め、これの撤去工事を命じました。

 上記の事案において、裁判所は、詳細な法律の適用関係を示していませんが、裁判所の認定事実を前提とすれば、太陽光パネルの値段について、大幅なおまけを行なっているとの虚偽の説明を行ったという事実及び仮におまけを行なっているとしても太陽光パネルの単体の値段としては極めて高額に設定されていることを説明しなかったという事実の不告知を理由として取消権を認めたものと思われます。

オール電化と太陽光発電システムはセットで販売されることも多い
(出所:三洋電機、本文の内容とは関係ありません)
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「違反」なら「遡及的無効」に

 消費者契約法に基づく契約取消の効果は、遡及的無効です。すなわち、契約は当初より遡って無効になります。もっとも、工事請負契約が解除された場合、請負人が施工した工事が可分であり、かつ当事者が既施工部分について利益を有するときには、特段の事情がない限り、既施工部分について契約を解除できないとの取扱がなされています。

 そして、消費者契約法に基づき、建築請負契約が取消された場合の効果について、原則どおり、契約全体が取消されて無効になるという見解もありますが、前記と同様に請負人が施工した工事が可分であり、かつ当事者が既施工部分について利益を有するときには、特段の事情がない限り、既施工部分について契約を取消せないとの見解も主張されています。

 この点、太陽光発電システムの設置請負契約が消費者契約法4条1項/2項及び特定商取引に関する法律9条の2に基づき取消された場合の効果について、前掲の神戸地裁姫路支部平成18年12月28日判決は、「本件契約は取消しにより無効であり、原告は本件工事代金請求権を行使できず、かつ被告に対する原状回復義務を履行すべきである」と判示し、工事全部の遡及的無効を認めています。

個人が投資目的で太陽光発電システムを購入することも多い
(出所:日経BP、本文の内容とは関係ありません)
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地裁は消費者契約法の適用を肯定

 さて、冒頭に紹介した東京地裁平成30年 4月20日判決の事案では、下記のように判示して、消費者契約法4条2項の適用を肯定しました。

 原告は、Bとともに、本件契約の締結に至る過程において、本件契約により本件土地において太陽光発電システム設置の契約をすれば、本件土地の権利が原告に移転する旨説明を受けてきており、さらに、前記認定事実のとおり、平成28年5月15日に本件契約が締結された際に、被告の従業員であるCは、本件土地の太陽光事業は問題がなく、事業が円滑に進んでいる、土地の名義の移転もする旨述べていたのである。そうすると、被告は、本件契約の締結の勧誘に際して、原告が、本件契約により本件土地の権利を取得でき、本件契約に基づく太陽光事業によって収益を得られることを告げていたと認められる。

 一方で、前記認定事実のとおり、被告は、原告に対し、本件契約締結の際に、本件仮差押の事実及び登記の存在について一切述べていない。

 そして、消費者契約法4条2項における重要事項とは、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容等であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものであり、これは、契約締結時の社会通念に照らし、当該消費者契約を締結しようとする一般的平均的な消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて、その判断を左右すると客観的に考えられるような、当該消費者契約についての基本的事項(通常予見される契約の目的に照らし、一般的平均的な消費者が当該消費者契約の締結について合意的な意思形成を行う上で通常認識することが必要とされる重要なもの)をいう。

 これを本件仮差押の事実及び登記の存在についてみると、本件契約において、太陽光パネルは本件土地上に設置されるものであり、かつ、本件土地の所有権等の使用権原も購入対象となっているところ、本件仮差押が本執行に至れば、本件契約の主目的である太陽光パネルが土地の使用権原を失い撤去されてしまうだけでなく、原告は本件土地の所有権等の使用権原をも失う可能性があるものであり(なお、実際に、後になって本件仮差押の申立人から執行文付与の申立て(甲7)をされている)、本件土地の所有権等の使用権原の評価(これに担保権を設定し融資を受けることを検討している場合には尚更である)や太陽光パネルの存続可能性、更には発電事業の持続可能性を検討し、本件契約を締結するか否かを判断するに当たって重要なものであるといえること、一般に不動産取引においても重要事項説明書に記載すべき内容とされていること(甲6)からすれば、契約締結時の社会通念に照らし、消費者契約である本件契約を締結しようとする一般的平均的な消費者が本件契約を締結するか否かについて、その判断を左右すると客観的に考えられるような、本件契約についての基本的事項であるといえる。

 そして、前記認定事実のとおりであり、本件契約より前に本件仮差押の登記がされ、被告に本件仮差押の通知がされていたのであるから、被告は本件契約締結時において、本件仮差押の事実及び登記の存在を知っていたと認められ、この事実を原告に対し告げなかったことについて、証拠及び弁論の全趣旨によっても告げないことを正当化するような特段の事情も認められないから、被告は原告に対し、本件仮差押の事実及び登記の存在を故意に告げなかったものと認められる。

 以上によれば、本件契約の締結において、消費者契約法4条2項(不利益事実の不告知)に該当する事実が認められ、原告は、前記前提事実のとおり、本件契約を取り消したから、被告に対し、既に原告が被告に支払った代金2283万円の不当利得返還請求権を有する。

 現在、消費者庁にて、消費者契約法改正に向けた議論がなされています(消費者庁の関連ページ)。

 太陽光発電をめぐっても、消費者トラブルは多く発生しており、太陽光発電に関わる事業者の皆様方には、消費者契約法改正の動向にも注目をして頂きたいと考えております。

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