太陽光発電事業者のための法律Q&A

住宅太陽光の点検要請への対応は義務でしょうか?

<第48回>消費者庁「火災事故報告書」に関連したクレーム対応

2019/02/25 05:00
弁護士法人 匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野卓生

消費者からの問い合わせが殺到

 消費者庁は今年1月28日、住宅用太陽光発電システムから発生した火災などに関する報告書を公開しました(消費者庁の調査報告書)(関連記事

 消費者庁による発表は、NHKニュースでも報道され、太陽光パネルを設置した住宅の施主から住宅会社に対し、多くの問い合わせがなされている現状にあります。

 消費者庁の調査報告書は、住宅用太陽光発電システムから発生した火災・発火・発煙・過熱などの事故について、具体的な発生状況や原因を調べたもので、調査対象は、2008年3月~2017年11月までに事故調査データバンクに登録された火災事故127件のうち、原因調査中や原因不明のものなどを除く72件とし、太陽電池モジュールまたはケーブルから発生した火災事故13件が重点調査されました。

 その結果、鋼板等なし型については、モジュール・ケーブルとルーフィングの間に遮るものがないため、モジュールやケーブルが発火した場合、野地板に延焼する可能性がある、鋼板等付帯型においては、モジュールの下へのケーブルの挟み込み等の原因で、ケーブルが発火した場合は、ルーフィングや野地板に延焼する可能性がある旨の報告がなされています。

屋根への太陽光パネルの設置形態
(出所:消費者庁)
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 他方で、屋根置き型や鋼板等敷設型では、野地板まで延焼に至った火災事故は発生していないとのことですから、火災事故が起きたのは「ごく一部のみ」と言えます。

 しかし、消費者からは「我が家の太陽光発電システムはどのタイプか(不燃材敷き込みの有無(鋼板等なし型か否か))、また問題はないか」という問い合わせが入り、「心配なので点検してほしい」「いつ点検対応の連絡が来るのか」という問い合わせに対し、各住宅会社は対応を迫られている状況です。

「点検」の法的根拠は?

 今回、消費者庁の報告書にて、太陽光発電システムから発生した火災が屋根の野地板にまで延焼したのは、全て「鋼板等なし型」であったとのことですが、この型の累積設置棟数は、約10万7000棟もあり、それ相応の点検費用が発生するため、当該点検の法的根拠が問題となります。

 消費生活用製品安全法38条は、以下の規定を設けています。

(事業者の責務)

 第三十八条 消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う者は、その製造又は輸入に係る消費生活用製品について製品事故が生じた場合には、当該製品事故が発生した原因に関する調査を行い、危害の発生及び拡大を防止するため必要があると認めるときは、当該消費生活用製品の回収その他の危害の発生及び拡大を防止するための措置をとるよう努めなければならない。

 2 消費生活用製品の販売の事業を行う者は、製造又は輸入の事業を行う者がとろうとする前項の回収その他の危害の発生及び拡大を防止するための措置に協力するよう努めなければならない。

 3 消費生活用製品の販売の事業を行う者は、製造又は輸入の事業を行う者が次条第一項の規定による命令を受けてとる措置に協力しなければならない。

 消費生活用製品安全法に基づく重大事故報告制度に基づく報告がなされた事例として、平成27年12月24日に接続ケーブル(太陽光発電システム用)から火災が発生したとして平成27年12月28日に事故報告がなされた事例があります(消費者庁のリリース)。

 仮に、太陽電池モジュールやケーブルが「消費生活用製品」に該当するとなると、消費生活用製品安全法38条に基づく点検義務をメーカーは負うこととなり、38条2項に基づく協力義務を住宅会社は負うこととなります。

 しかし、消費生活用製品安全法第2条1項にて「消費生活用製品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品をいうと定義されており、太陽電池モジュールやケーブルが「消費生活用製品」に該当するか? という点は法的論点となります。

 売電している消費者は、固定価格買取制度(FIT)法に基づき事業者に該当することとなりますので、太陽光パネルやケーブルなどは、「一般消費者の生活の用に供される製品」とはいえず、「消費生活用製品」には該当しないと考えられています。

 もっとも、消費者庁の対応如何によっては、メーカーによる点検や、これに対する住宅会社への協力を求められるのが実情です。住宅会社の協力義務としては、メーカーが点検を行う際に太陽電池モジュールを設置した消費者の情報を提供することなどが考えられます。

改正FITで点検は「義務」に

 改正FIT法とは、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の一部を改正する法律です。平成28年6月3日に改正され、平成29年4月1日に施行されました。

 FIT法において、事業計画認定申請時に 再生可能エネルギー発電事業計画を提出することとされており(9条1項、2項)、当該事業計画の内容として、発電設備の管理の方法等についても記載することになっています(9条2項)。

 また、平成29年3月に策定された(平成30年4月に改正)「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」において、太陽光発電システム所有者は、「保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定すること」が求められ、当該計画に基づいて、「保守点検及び維持管理を実施すること」が求められています。保守点検及び維持管理については、民間のガイドラインである「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」(日本電気工業会・太陽光発電協会技術資料、2016年(平成28年)12月28日制定)等を参考にし、これらと同等または同等以上の内容で行うことも定められています。

 発電設備の管理方法を含めた事業計画や、「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」に違反した場合は、次の3つの措置、すなわち、FIT法12条に基づく「指導・助言」、FIT法13条に基づく「改善命令」、FIT法15条に基づく「認定の取り消し」がなされることになります。最悪の場合「認定の取り消し」となるので、その設備での発電事業ができなくなります。なお、努力義務として記載されているものについても、それを怠っていると認められる場合には、FIT法第12条(指導・助言)等の対象となる可能性があります。

点検未実施が債務不履行に該当するか?

 上記の通り、改正FIT法によると、太陽光発電システム所有者は、「保守点検及び維持管理に係る実施計画を策定すること」が求められます。

 従って、一般の消費者であってもFIT法に基づき、売電をしている以上、太陽光発電システムについて点検を実施することが法的義務となるのです。

 そのため、太陽光発電機器の取扱説明書に1年目に無料点検、その後4年に1度有料の点検を受ける必要があると記載があるケースがあります。

 他方で、消費者の多くは、FIT法に基づく点検義務について「知らない」ケースが多く、この点、今回の点検実施の際に、消費者であっても自らが点検義務を負うこと(メーカーとの間で保守点検契約を締結すること)が法的義務であることを知り、点検対応を実施していく運用がなされることを期待します。

経年劣化による火災に法的責任は?

 消費者庁報告書によると、配線接続部の高抵抗化は、経年劣化や製造上の問題(製造時にはんだ強度が十分ではなかったなど)により発生すると考えられるとしています。

 この点、後者はメーカーの製品欠陥であると考えられますが、前者の経年劣化について、太陽光パネルを設置した住宅会社に法的責任が発生するか、について検討をする必要があります。

 請負契約における「瑕疵」とは、完成された仕事が契約で定めた内容どおりでなく使用価値もしくは交換価値を減少させる欠点があるか、又は当事者があらかじめ定めた性質を欠くなど不完全な点を意味し、当事者間の合意内容に適合しているかどうかが主位的に判断されます。

 東京地判(平成29年2月24日)は、マンションの外壁タイル落下事案について、発生していた、タイルの浮き及びクラックは、経年劣化の範囲内であるとして、「瑕疵」は存在しないと判断しています。部材等の性質・耐用年数などから、個別事案において、「通常持つと期待されている期間」を超えたものについては、劣化しないことが「契約で定めた内容」とはいえないため、経年劣化として、「瑕疵」には該当しない、という判断がなされるものだといえます。

 そのため、太陽光システムが耐用期間内であるにもかかわらず、火災が生じるような施工をした場合には、「契約で定めた内容」を満たしていないとして「瑕疵」に該当する可能性は否定できません。瑕疵に該当する場合は、瑕疵の補修を行う必要もでてきます。

 他方、例えば、モジュールの発火は、使用年数が7年以上の製品で起きており、経年劣化で内部の電気抵抗に異常が発生したために、電気が正しく流れずに事故に至ったとみられています。住宅用の太陽光システムの耐用年数は17年であり、耐用年数内であれば、当該年数内の経年劣化も考慮した上で設置するべきと言えるでしょう。

 そうすると、「鋼板等なし型」で太陽光パネルを設置しているケースでは、請負契約上の瑕疵に該当する可能性も否定できません。

住宅太陽光の被災例
(出所:消費者庁)
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施工に起因する瑕疵か?

 ケーブルの発火原因は施工不良によるものが多いと言われています。

 単純な施工不良は、施工業者の瑕疵ある施工と言うことになりますが、マスコミ報道の中には、「屋根瓦が数㎝被さっただけで、太陽光パネルのバイパス回路の焼損に至った」というものもあり、施工誤差の範疇であるにもかかわらず、火災事故の発生に至るケースもあるようです。

 施工誤差は、建築工事において、常に生じうる問題ですので、設計図書と実際の施工との間に多少の寸法等の違いがあったとしても、それが社会通念上許容されるものであれば、瑕疵にはあたらないとされています。裁判上、施工業者の施工が施工誤差といえるかどうかが問題となった場合、施工業者において、自らの施工が、社会通念上許容される誤差であることを主張立証する必要はなく、消費者において、施工業者の施工が、社会通念上許容される範囲を逸脱したものであることを主張立証する必要があります。

クレーム対応マニュアルの必要性

 消費者からの問い合わせの中には、太陽光発電システムについての保守点検の必要性についての説明を受けていなかった、といった住宅会社の説明義務違反を問うものや経年劣化により発火の危険のある製品なのであれば、そもそも当該製品は購入するつもりはなかったといったクレームも寄せられています。

 クレーム対応については、物件毎のケースバイケースによる対応が必要となって参りますが、基本的事項については、クレーム対応マニュアルを作成し、対応していく必要があるというべきでしょう。

 また、住宅用太陽光パネルは、今後もZEH住宅の普及にあたり、不可欠の存在であり、保守点検の必要性を建物引き渡しの段階で説明していく必要性も大きいと言うべきでしょう。

 請負契約の締結段階、建物引渡段階の太陽光発電システムについての維持管理の必要性についての説明マニュアルも作り上げていきたいところです。

住宅太陽光の被災例
(出所:消費者庁)
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