太陽光発電事業者のための法律Q&A

太陽光パネルの反射光で近隣住民から苦情を受けました。これは違法でしょうか?

<第12回>パネルの反射光を巡る「受忍限度」の要件に関する法律問題

2016/02/17 00:00
匠総合法律事務所 秋野卓生代表社員弁護士、同事務所 森田桂一弁護士

 太陽光パネルからの反射光を巡っては、住宅用太陽光発電について横浜地裁平成24年4月18日判決(判例集未掲載)において「受忍限度」を超える反射光を生じさせている、として太陽光パネルの撤去命令及び損害賠償請求が認められたところ、同控訴審である東京高裁平成25年3月13日判決(判例時報2199号23頁)は判断を変更して「受忍限度」を超える反射光が認められない、との判断を示した。

 以後も太陽光発電パネルの反射光を巡る紛争はみられたが、そのほとんどは住宅用太陽光発電を巡るものであった。ところが、今般、報道によると、兵庫県姫路市に設置したメガソーラー(大規模太陽光発電所)からの反射光を巡って、訴訟となっているようである(関連記事)(図1)。

図1●反射光を巡って訴訟となっている姫路市のメガソーラー(出所:日経BP)
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 以下では、これまでの判例の到達点を踏まえて、大規模太陽光発電所と反射光に関する問題について、若干の解説を行う。

東京高裁平成25年3月13日判決の意義

 騒音や悪臭など、近隣者間のトラブルについては、その程度が法的に許容すべき限度である「受忍限度」を超えているかにより、適法性が判断される。反射光の問題もその一つとして、適法性は、「受忍限度」を超えるかが問題となる。「受忍限度」は、法的評価であり、数値基準があるものではない。諸事情を総合的に考慮して判断することになる。

 前掲東京高裁平成25年3月13日判決は、太陽光パネルからの反射光について、第一審である横浜地裁の事実認定を、(1)まぶしさの強度、(2)反射光の差し込む時間の長さ、(3)被害回避措置の有無の3つの観点から変更したうえで、「そのまぶしさの強度は、一般に用いられている屋根材と比べてどの程度強いかは明らかではなく、また、反射光が被控訴人らの建物に差し込む時間は比較的短く、まぶしさを回避する措置を採ることも容易である、ということができるのであるから、これらを総合すると、本件パネルの反射光による被控訴人らの被害は、それが受忍限度を超えるものである、と直ちに認めることはできない」と判断し、第一審である横浜地裁の判断を変更した。

 同判決は、太陽光パネルの反射光について、一律に受忍限度を超えない、ということを述べたものではない。もっとも、太陽光パネルからの反射光という社会問題は、太陽という自然に存在する強力な光源の反射光の問題であり、直ちに受忍限度を超えるものと評価することは出来ないこと、カーテンなどを使用することで被害を完全にゼロにすることができる、といった問題であることを考慮し、直ちに受忍限度を超える被害があったとは言えない、との判断を下したものである。

住宅用太陽光発電と大規模太陽光発電所で判断は異なるか?

 上記判決の事案は、住宅用太陽光発電に関するものであるところ、大規模太陽光発電所と大きく判断基準を異にするものではない、と思われる。ただし、事実問題として、太陽光パネルからの反射光の程度にはかなりの違いが生じるであろう。

 住宅用太陽光発電からの反射光は、近接した太陽光発電パネルについて問題となりがちであり、反射光の影響が生じる時間がある程度、継続したものになりやすい、ということが指摘できる。

 例えば、受忍限度を超える被害と判断した横浜地裁の第一審判決においては、「本件パネルによる反射光は、…ほぼ1年中に渡り、原告建物…に差し込む。1日のうち反射光が差し込む時間は、午前8時45分頃から午後0時55分頃までであ…る。」という極めて甚大な被害を認定している(ただし、高裁はこれを否定している)。

 他方で、大規模太陽光発電所からの反射光が問題となる事案では、多くの場合、太陽光パネルから相当程度距離が離れているものであるため、反射光の影響を受ける程度・時間がある程度限定されるものと推察される。ただし、太陽光パネルの枚数が相当程度あるため、存外、距離にも関わらず、相当程度継続して被害が生じる場合も否定出来ない。

 このように、元来自然にも存在している太陽光の反射光を巡る問題については、直ちに違法といえないから、抽象的な判断よりも具体的にどのような被害が、どの程度継続的にあらわれるか、ということが重要な争点となってこよう。

熱被害についてどう考えるか?

 なお、今回の報道をみると、反射光からの「熱被害」も問題とされているようである(図2)。

図2●訴訟となっている姫路市のメガソーラーでは、植樹による対策も取られていた(出所:日経BP)
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 熱を巡る被害については、越境状態にあるエアコンの室外機からの騒音・熱風が違法とされた例も確認できるが、裁判上の先例はほとんど確認できない。もっとも、前掲東京高裁などの判断に鑑みると、この「熱被害」を巡っては、冷房の活用などの近隣住民側の対応も考慮要素となるであろう。冷房を使用しなければ、屋内が相当程度、暑くなることはある程度、やむを得ないものであり、通常の住まい方が問題となるからである。

 反射光などのいわゆる「相隣関係」を巡る問題は、主に住宅用太陽光発電の問題と思われてきたが、必ずしもそうではない。そして、単なる価値判断ではなく、法的判断である。

 今後も、裁判の推移を注目していく必要があるであろう。