AIやスーパーコンピュータの技術革新は目覚ましい。現在進行中の取り組みが実を結べば、人間のような知能を持つコンピュータが2030年頃にも出現するかもしれない。シンギュラリティを予感させる研究開発の最前線を追う。

 経験を基に学習を重ね、環境の変化にも柔軟に対処できるのが人間の知能である。コンピュータは既に計算や検索など特定の作業で人間を凌駕するが、こうした汎用性はいまだ持ち得ていない。

 だが遠くない将来、汎用的な人工知能(AI)が実現するかもしれない。「第三次ブーム」と呼ばれるAI開発の盛り上がりを受けて期待が高まり、シンギュラリティをめぐる議論も熱を帯びている。

 きっかけとなったのは、「ディープラーニング(深層学習)」。人間の脳の構造の一部を模した「ディープ・ニューラル・ネットワーク」を情報処理に応用した手法だ。

 ディープラーニングの強みは、大量のデータを解析して、特徴を自動的に導き出せること。従来は何を特徴とするかのルールを人間が決めており、環境の変化や例外的な事象にうまく対応できなかった。ディープラーニングを使うことで、人間が思いも寄らないような特徴をコンピュータが見つけるため、処理精度が上がる。

 ディープラーニングは目覚ましい成果を上げ始めた。一部の分野では、既に人間を超えた例も報告されている。

 富士通研究所は2015年9月、中国の富士通研究開発中心有限公司と共同で、中国語の手書き文字認識で人間を超える精度を達成したと発表した(図4)。手書き文字のパターンは多様だが「既存の文字から様々な変形パターンを自動生成し、学習した」(富士通研究所知識情報処理研究所 Big Intelligence PJ 岡本青史プロジェクトディレクター)。人間の認識率とされる96.1%を超える96.7%の精度を達成した。

図4 AIブームの変遷
画像や音声の認識精度が急激に向上
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