メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

七ツ島70MWのメガソーラー、稼働から3年、火山灰の影響は?

1386本の避雷針が発電所を守る

2016/11/09 00:00
金子憲治=日経BPクリーンテック研究所
図1●出力70MWの「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」(出所:京セラ)
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 鹿児島市七ツ島は、鹿児島県南部の臨海部に位置する。かつては大小7つの島があったが、1970年代に工業用地として、約205haの区域が埋め立てられた。出力70MWの「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」は、この埋立地の半分以上となる約127haに、約29万枚の太陽光パネルを設置した(図1)。IHIが造船所の用地として購入したが計画変更となり、長年、遊休地になっていた。

巨大な太陽光発電所の幕開けに

 2013年11月の運転開始時点では、国内最大の太陽光発電所だったが、その後、「大分ソーラーパワー」(約82MW)、「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」(約111MW)、「ユーラス六ケ所ソーラーパーク」(約148MW)が完成し、竣工済みの太陽光発電所としては、現在、国内で4番目の規模になる。

 それでも、50MWを超える巨大な太陽光発電所の先駆けとして、国内で広大なメガソーラー(大規模太陽光発電所)時代が始まった象徴的な存在となっている(関連記事)。

 発電事業者となるSPC(特定目的会社)には、京セラのほか、KDDI、IHI、九電工、鹿児島銀行、京都銀行、竹中工務店の6社が出資した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、京セラソーラーコーポレーション(京都市)、九電工、竹中工務店の3社による共同企業体が担った。京セラ製の太陽光パネルを設置角20度で設置し、パワーコンディショナー(PCS)はドイツSMAソーラーテクノロジー社製を採用した。

 完成後の運用・保守(O&M)は、京セラソーラーコーポレーションと九電工の2社が担当している。

稼働後にも桜島の噴火で火山灰が飛散

 「七ツ島メガソーラー発電所」は、運転開始当初から、安定的な運営に関し、いくつかの懸念が指摘されてきた。1つは、桜島の南西、約20kmに位置しているため、同島が噴火した場合、火山灰が太陽光パネルに降り積もるのではないか、という点。そして、鹿児島湾に突き出した埋立地であることから、波しぶきなどよる塩害のリスクだ。

 稼働から3年経ち、こうした点に関し、実際の運用状況がどのように推移しているのか。

 まず、発電実績に関して、京セラ・ソーラーエネルギー国内営業部・O&M部責任者の北道弘氏によると、「年間の発電量に関して正確な数値は公表できないが、事前に見込んだ年間7880万kWhより、10%程度上振れし、順調に推移している」と言う。

 実は、桜島の噴火活動は、2013年11月に運転開始後も、断続的に爆発を繰り返している。特に2015年には夏から秋にかけ、噴火が活発化し、爆発に伴う噴煙が上空4000mにまで達し、大量の火山灰も噴出した。鹿児島地方気象台の推定では、火山灰の総噴出量は、1カ月間で最大100万tを超えた月もあり、鹿児島市街にも火山灰が積もった(図2)。

図2●鹿児島県が実施している降灰の観測データから推定した桜島火山灰の月別総噴出量(出所:鹿児島地方気象台)
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 京セラでは、パネルに火山灰が降り積もった場合の対応をあらかじめ決めている。それは、パネル表面に灰が堆積し、予想発電量を下回る日が6日間程度続いたら、高圧洗浄装置で灰を取り除く、というもの。具体的には、トラックの荷台に高圧洗浄機と発電機を載せてパネルに沿って移動しながら29万枚を洗浄するという。

 こうした洗浄作業に備え、常時、5台の軽トラックと高圧洗浄装置などを待機させ、井戸で組み上げた200tの水をタンクに用意しているという。

3年間で高圧洗浄装置の出番はない

 ただ、稼働後、3年間で、高圧洗浄装置が稼働したことは一度もないという。京セラの北氏によると、「桜島の火山灰の多くは、風で北側に流されていくために、メガソーラーのある南西側一帯には、火山灰の降り積もる日は少ない」という。

 とはいえ、風向きによっては、七ツ島にも降灰の可能性はある。だが、その場合でも、「太陽光パネルの上に降り積もった火山灰は、翌日には海風でほぼ吹き飛び、雨が降ればきれいに流れ落ちる」(北氏)と想定している。

 実際に、稼働後、これまでに数回、パネル表面に薄っすらと火山灰が降り積もったことがあったという。灰が堆積した日には、発電量は目に見えて減少するが、想定した通り、1~2日後には、風や雨で灰が除かれ、発電量は回復しているという。

 結果的に、高圧洗浄装置に出番はなかったという。「1回の降灰によって、どの程度、発電量が目減りしたかについては公表できないが、年間を通じて1割程度発電量が上振れしていることからも分かる通り、事業性に影響ないレベル」(北氏)という(図3)。

図3●桜島の火山灰による発電量への影響は少ない(出所:京セラ)
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20度に設置し火山灰を雨で流す

 降灰の影響を最小限に抑えられている背景には、設計上の工夫もある。太陽光パネルの設置角を20度まで傾けたのは、雨で灰が流れやすいように配慮したからだ(図4)。九州のように積雪の心配のない地域では、設置角を10度に寝かせてパネルの影を短くし、アレイ(パネルの設置単位)間隔を詰めて、より多くのパネルを設置する設計も多い。

図4●設置角20度で降灰に備えた(出所:日経BP)
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 加えて、パネルを収めるフレームの底部の左側、中央、右側の3カ所に、約8mm幅のスリット(隙間)を3本設けている。雨の日には、このスリットを通じて、火山灰が雨で流れ落ちていく。従来のフレームを使うと、火山灰の一部がフレームの底部に残るという。

 灰が降り積もっても、1週間は、放置することにしているのは、費用対効果を考えてのことだ。29万枚のパネルをすべて高圧洗浄するには、トラック5台を使っても1~2日かかり、人件費やトラックの燃料費、洗浄水などの費用は800万円程度になるという。数日で発電量が回復するとすれば、ここまでコストかけても元が取れないという。

 ただ、今後、天候の状況によっては、降灰による発電量の低下が1週間に及ぶ可能性がないとは言えない。「その場合、発電事業者であるSPCに対応について打診したうえで、高圧洗浄に取り掛かることになる」(北氏)という。

常駐者6人で月に1回の目視点検

 塩害についても、いまのところ、太陽光発電設備の不具合につながるような兆候は見られない、という。

 七ツ島の埋立地は、海に突き出した工業用地で、重塩害地域ではあるものの、「海面から5mほどの防波堤に囲まれおり、日常的には、発電設備に波しぶきかかるようなことはない」(北氏)という。

 加えて、太陽光パネルの端子箱(ジャンクションボックス)は塩害に強い防錆仕様になっており、パネルを設置する架台には、高耐食性の溶融亜鉛めっき鋼板(ZAM)を採用するなど、部材には、設計段階で塩害対策に万全を期しているという。

 ドイツSMAソーラーテクノロジー社製のPSCは、国内メーカーと違い、設備本体を筐体(エンクロージャ)に収納しない仕様のため、「日本のような高温高湿の環境に加え、塩害地域に設置した場合、長期信頼性を確保できるのか」との指摘もある。だが、「半導体素子などの心臓部には、外気に触れずに熱交換できる構造になっており、いまのところ、腐食などの兆候はない」(北氏)という。

図5●常駐者6人で目視点検を徹底(出所:京セラ)
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 「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」では、O&Mのために6人が常駐している。3カ月に1回の定期点検のほか、6人で分担して担当エリアを決め、1カ月に1回は全設備を目視チェックする巡回スケジュールを組んでいるという。巡回しながら、高い雑草を抜いたり、腐食の兆候などを点検したりしているという(図5)。

 こうした巡回によって、これまで、3年間でパネル数十枚のカバーガラスが割れていたのを見つけたという。いずれも打痕が残っており、鳥による石落としと見られるという。

1386本の避雷針を設置

 稼働3年間は、ほぼ順調に発電量を確保し、火山灰や塩害について大きな問題になっていないものの、予想外だったのが、「かなりの頻度で避雷針に雷が落ちていること。そして、防草対策の効果が長続きせず、雑草が伸び始めていること」(北氏)という。

 同発電所を見学すると、横置きの太陽光パネル約16枚ごとに1本、4mほどの長い棒が立っている。これは避雷針で、発電所全体に1386本にもなる(図6)。

図6●多くの避雷針に落雷の痕跡がある(出所:日経BP)
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 避雷針は、高さ20m以上の建物では、設置する義務があるが、こうした高い建物が敷地内にない太陽光発電所の場合、避雷針を設置する義務はない。

 落雷被害には、施設に直接、落ちる「直撃雷」と、周辺に落ちた雷の影響を受ける「誘導雷」がある。太陽光発電所は、風力発電設備などに比べると、地上からの高さが低いので、直撃雷を受けにくいといわれる。このため、日本でメガソーラー敷地内に避雷針を設置しているケースは少ない。

 ただ、敷地が広くなるほど、周囲に避雷針などが少なく、低い施設にも雷が落ちやすいとの指摘もある。七ツ島メガソーラー発電所でも、こうしたリスクを考え、避雷針を設置した。

カミナリモニターで落雷を記録

図7●展望台に「カミナリモニター」を設置(出所:日経BP)
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図8●砕石による防草効果が弱まり雑草も(出所:日経BP)
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 実際には、「避雷針に雷が落ちたどうかは、記録に残らないものの、避雷針のアース部分が変色していることが多く、雷が落ちたとみられる。その数は予想よりかなり多い」(北氏)という。その分、パネルなど発電設備への落雷を防いだことになる。

 現在、落雷の実態を調べるため、展望台に「カミナリモニター」を設置し、避雷針への落雷の様子を記録する試みを始めている(図7)。

 雑草対策に関しては、造成時に草本をすべて抜根し、砕石を10cm程度の厚さに敷き詰めて、転圧したうえで、基礎・架台を設置した。だが、稼働後3年で、50cmを超える背の高い草が生えはじめ、パネル低部を超え始めている(図8)。

 「砕石による防草効果は、予想よりも長続きしなかった。クローバーなど被覆植物の植栽を始めたほか、今後、ヤギによる動物除草も検討課題になっている」という。