現実的な方法として、多く採用されてきたのが、接続箱の全体のブレーカーを開放した上で、点検するストリングの断路器を切った状態などで、絶縁抵抗計により測定する方法だった。

 太陽光パネルは発電し続けているので、電圧がかかっている状態で測定する。また、測定器から電圧を印加する場合もある。

 こうした方法によるリスクとして、電圧が印加されている状態で測るために、絶縁抵抗値を正しく測定できない場合があること、また、電圧が印加されている状態で計測器を接続するために、電気的な事故の危険を伴うことがある。このため、太陽光パネルの電気的な特性をよく理解した上、一般的な電気設備の絶縁診断時以上に安全を確保して点検する必要がある。

 この手法では、測定の精度を増すために、接続箱のサージアブソーバー(雷サージによる過電圧から電気機器の絶縁性能を保護する装置)を外す。この作業の手間も大きく、定期点検において、絶縁診断が所要時間の多くを占める原因になっていた。また、点検後にサージアブソーバーを戻し忘れるというミスも少なくなかった(関連コラム)。

 サージアブソーバーを取り外す必要があるのは、サージアブソーバーに流れる電流が、絶縁抵抗計による診断に影響を与えるためである。絶縁抵抗の測定中に、測定電圧が上がることがあり、それが雷サージによる過電圧並みに高くなると、サージアブソーバーが作動する。これによって、地面との間が短絡状態となり、絶縁抵抗を正確に測定できない。

 現在では、こうした特別な知見が必要なく、さらに、危険性の低い手法で、日中に絶縁診断を正確に実施できるようになっている。

 太陽光発電所の電気保安管理業務の受託では国内トップクラスの経験と件数を持つ中部電気保安協会(図1)がアイデアを構想し、マルチ計測器(東京都千代田区)が製品化した。

図1●中部電気保安協会による太陽光発電設備の研修の様子
太陽光発電の点検で国内トップクラスの経験と受託件数を持つ(出所:日経BP)
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 マルチ計測器は、電気関連の計測器や電流センサーなどを手がけている。中でも、交流の漏電検出用のクランプは、全国各地の電気保安協会向けで約8割という高いシェアを持つ。

 中部電気保安協会によると、こうした関係からマルチ計測器に開発を打診し、同社が実用化した。2011年6月から共同開発を始めた。翌2012年には関連特許を出願した。

 マルチ計測器・市場開発室の大西恭二室長によると、同社は顧客の要望に迅速に対応することを心掛けており、今回の打診にも繋がったのではないかという。