ただし、このようにパネルを洗浄する国内の発電事業者は少数だった。この理由には、費用対効果の利点が少ないほかに、設備の保全上の理由もあった。

 従来の太陽光パネルの洗浄は、主に三つの方法で実施されていた。一つ目は、水を流しながらスポンジなどでふく方法。二つ目は、ロボットの利用。三つ目は、高圧洗浄機の活用、というものだった。

 スポンジでこする方法は、多くの枚数に実施するには、手間と時間がかかりすぎる。そこで、目視点検中に見つけた鳥のフンの固着など、敷地内のごく一部のパネルを部分的に洗う目的で使われる。この方法ならパネルを傷つける恐れは少ない。

 ロボットには、パネル洗浄用に開発された複数の機種がある。ただし、費用対効果で利点を得られる場合が限られている。

 さらに、30kgなど重い機体がパネル上を動きまわる中で、フレームとカバーガラス間の段差を越える際に、音を立てるような機種も多い。この時のパネルへの荷重によって、セル(発電素子)に微細な割れが生じることを懸念し、採用を見送る発電事業者もいるなど、それほど普及している状況にはない。

 高圧洗浄は、高い圧力で押し出した水を当て、主にその圧力で汚れを押し流す。この方法も、ロボットを使う場合と同じように、費用対効果とセルの損傷の面で課題があり、限られた発電所のみで採用されてきた。

 高い圧力で水を飛ばして当てるためには、細い流路とノズルを通す必要がある。細いノズルで洗える面積は狭く、パネル1枚を洗うにも、高圧洗浄機のノズルを何度も上下に動かす必要があり、時間と手間がかかる。

 また、高い水圧をかけることから、やはりセルに微細な割れが生じる懸念も指摘されている。多くの太陽光パネルメーカーが、高圧洗浄した場合、保証の対象から外す方針を採っている。

 ここにきて、太陽光パネルの洗浄の需要が増えてきているのは、課題だった費用対効果とセルの損傷の恐れの両方を解消しやすい方法が登場したことによる。

 例えば、太陽光発電所向けのO&Mを手掛けるエネテク(愛知県小牧市)では、ここ1年ほどで、パネル洗浄の依頼が急激に増えた。受注に至る成約率も高いという。

 同社の場合、洗浄費用は、1MWあたり約100万円に設定している。エネテクによると、洗浄の引き合いが多いのは、やはり汚れやすい環境にある太陽光発電所で、洗浄コスト以上の売電収入の増加が見込める場合も多く、受注の増加につながっている。

 太陽光パネルの洗浄に使っているのは、高圧洗浄機メーカーであるドイツのケルヒャー製の機材である。パネル用に開発された部材を、高圧洗浄機に取り付けて洗う(動画)。

動画●エネテクによる太陽光パネル洗浄の様子
ケルヒャーの専用部材と高圧洗浄機を使用(提供:エネテク)

 水を送り出す方法として高圧洗浄機を使うものの、通常の高圧洗浄のように、水圧を汚れに当てて落とすという原理ではない。