メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

今冬の大雪で、太陽光向け除雪サービスに脚光、損壊防止も目的に

北陸では常駐で除雪する案件も

2018/06/20 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 2017~18年にかけての冬は、島根県から青森県までの日本海側などで、記録的な降雪が相次いだ。道路や鉄道で通行が長時間停止したほか、交通の遮断によって陸の孤島となった地域では、食糧や生活物資の入手が長期にわたって困難となった。

 太陽光発電所でも、多くの被害に見舞われた。パネルへの積雪で発電が停止しただけでなく、設計時に想定していた以上の積雪によって、架台やアレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)が倒壊したり、パネルが割れたりする被害があった。

 積雪地域のメガソーラー(大規模太陽光発電所)では、過去一定期間の年間最大積雪量や平均積雪量などを基準に、多少の余裕を持たせて設計することが多い。ある程度、想定外の積雪量であっても耐えられるようにアレイや架台、基礎などを設計する。

 ただし、今冬の日本海側で相次いだような「記録的な積雪」の場合、余裕をもって設計された発電設備であっても、余裕の度合いによっては損壊に至る場合も出てくる。

 稼働済みの太陽光発電所において、有効な積雪対策の一つが「除雪」である。実際に太陽光発電所を対象に、除雪作業を請け負う企業も登場している。その一つが、Golden Leaf-Works(東京都江東区)による、土木機械を使った除雪サービスだ(図1)。

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図1●重機を使った除雪
アタッチメント(作業用の部材)を取り替えて使っている(出所:Golden Leaf-Works)

 同社の除雪サービスは、これまで北海道旭川市の拠点を中心に展開してきた。顧客となる太陽光発電所が、北海道の中部や東部を中心に立地しているためだった。

 ところが、今冬の日本海側を中心とする記録的な大雪の影響で、秋田県や青森県、岩手県など東北北部に立地する太陽光発電所からも、除雪の依頼が相次いだという。

 いずれも、発電量の減少を抑える目的とともに、太陽光パネルの割れや架台の倒壊など、安全面のリスクを最小に抑えるための依頼だった。最近では、こうした安全面を重視した依頼が増える傾向にあるとしている。

除雪と太陽光のノウハウ

 同社は、2015年以降、重機を使った太陽光発電所向けのサービスを展開してきたベンチャー企業である(関連コラム)。ブルドーザーや油圧ショベル(ショベルカー)などの土木機械を使い、アタッチメント(作業用の部材)を取り替えて、除雪や草刈り、太陽光パネルの洗浄などのサービスに応用している。

 除雪については、ブルドーザーで太陽光パネル下から雪を押し出す(動画1)、道路などの除雪と同じように、雪を集雪口から吸い込んで投雪部から数m先に吹き飛ばす(動画2)、といった手法を採用している。

動画1●ブルドーザーで雪を押し出す
これはアタッチメントを変えない(出所:Golden Leaf-Works)
動画2●雪を吹き飛ばす
除雪用のアタッチメントに取り替える(出所:Golden Leaf-Works)

 アレイの間隔が狭いなど、重機を使いにくい場合には、手押し型の除雪機を使う場合もある(図2動画3)。ただし、豪雪地域の太陽光発電所において、手押し型の除雪機による作業は、身体的な負担が大きく、極力、避けているという。

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図2・動画3●間隔が狭い場合、手押し型除雪機を使う
身体的な負担が大きく、極力、重機を使いたいという(出所:Golden Leaf-Works)

 一般的に、土木関連の企業による除雪では、ブルドーザーや油圧ショベルなどをそのまま使う。道路などの除雪では、その手法を使う前提でインフラが整備されているため問題なく除雪できるものの、太陽光発電所では、走行や除雪作業、雪の処分などに制約が多く、そのままの手法では難しい場合もある。

 Golden Leaf-Worksの溝渕英明社長によると、適切なアタッチメントに交換することによって、制約の多い太陽光発電所内に適した除雪などの作業を実現できる点が強みとしている。除雪については、北海道などにおける土木機械を使った経験者のノウハウも武器になっているという。

 例えば、太陽光パネルの直下、架台のすぐ近くまで土木機械で除雪できる(図3動画4)。パネルの下は、滑り落ちた雪が溜まって山のようになり、最も除雪したい場所になる。山のように積もった雪が、パネル低部につながるためだ。

図3・動画4●パネル直下、架台近くまで除雪
ノウハウの一つ(出所:Golden Leaf-Works)
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 太陽光パネルの下や、架台の近くまで除雪するには、土木機械を使った作業と、太陽光発電設備の両方の知識やノウハウが必要という。発電設備を損傷させず、かつ、しっかりと除雪できるサービス事業者は限られているという。

 雪は、主に前のアレイ下に飛ばす。ここには雪が積もっても、安全と発電の両面で問題がないためである(動画5)。

動画5●前列のアレイ下に雪を吹き飛ばす
雪が溜まっても問題のない場所(出所:Golden Leaf-Works)

 もし、春までアレイ下に雪が残っていれば、気温が急激に上がった際、太陽光パネルを冷却する効果もある。結晶シリコン型パネルは、高温時に発電効率が下がるため、温度上昇を抑えられれば、発電ロスを抑えられる。

定期的な除雪も開始、夜間対応に集魚灯

 北海道では、旭川市に拠点を置いて重機を確保し、除雪サービスに取り組んでいる(図4)。同社のサービスでで多く活用している「スキッドステアローダ」と呼ばれる土木機械については、米キャタピラーの「259D」を5台所有している。必要に応じて、さらに5台をレンタルで確保できる。

図4●米キャタピラーの土木機械を使う
旭川市に拠点を置き、出向いていく(出所:Golden Leaf-Works)
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 同社のこれまでの除雪サービスのほとんどは、北海道の太陽光発電所から積雪の多かった日の後などに依頼を受け、旭川市から出向いて作業し、1回あたりのサービス対価を得ていた。

 この冬に東北地方の太陽光発電所から受託した除雪も、同じように単発の依頼だった。

 一方で、同社にとって、事業を安定化させるためには、定期で除雪を受託することが望ましい。同社の試算では、除雪に要する費用と、それによる売電額の増加分を差し引きした場合、十分にプラスになるメガソーラーも多いという。ただし、日本の太陽光発電所では、前例がほとんどないために定期的な除雪の受注が実現しなかったという。

 しかし、積雪による発電量の低下が、事業計画時の想定よりも大きかったり、太陽光パネルや架台が損壊しかねないといった安全面の理由から、定期での除雪作業の依頼を検討する発電事業者が出てきたという。

 例えば、北海道において、定期に近い除雪サービスを請け負う発電所が出てきた。北海道東部に立地するメガソーラーから受託し、旭川から出向いて除雪している。

 このメガソーラーでは、遠隔監視用のカメラの画像を、発電事業者だけでなく、Golden Leaf-Worksも日常的に確認している。

 発電事業者との間で、一定以上の高さまで雪が積もった場合に、除雪するという契約となっている。その段階では、取り決めた高さまで雪がなくても、その後に多くの積雪量が予想されたり、積雪中の様子から予想よりも多く積もり、パネル低部までつながると予想された場合には、発電事業者の了承を得て除雪している。

 積雪期には、除雪の依頼が集中することから、このメガソーラーでは夜間に除雪することもある(図5動画6)。

図5・動画6●夜間は集魚灯で視認性を向上
定期的な除雪を受託したメガソーラーにおける作業の様子(出所:Golden Leaf-Works)
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 一般的な太陽光発電所では、人が常駐したり夜間に作業することはほとんどなく、特殊な場合を除いて、照明機器を備えている例は少ない。このメガソーラーにも照明はない。

 そこで、夜間の除雪では、漁業で使われる集魚灯を土木機械に取り付けて、視認性を高めて作業している。

 こうした夜間の作業の経験も含めて、北海道での除雪ノウハウが役立ちそうな案件の受注を目前に控えているという。

北陸で大型案件の受注も

 北陸に立地する出力数十MWのメガソーラーによるもので、この発電所が売電を開始する予定の2018年秋以降、同社が除雪サービスを担当する予定となっている。

 このメガソーラーが立地する地域も、今冬は積雪が多かった。施工中に設置された太陽光パネルの多くが、積雪の重みによって割れる被害が起きた。

 こうした状況を受け、発電事業者が、稼働後に定期的に除雪作業を行う方針を決めた。

 今冬の東北の発電所からの依頼と同じように、発電量の減少を抑えるとともに、太陽光パネルの破損を防ぐ目的を重視した除雪となる。

 Golden Leaf-Worksによると、このメガソーラーの隣接地には、宿泊可能な管理用施設が建てられ、そこに10人以上の除雪作業者や賄い料理人が常駐し、昼夜交替で除雪を続ける予定という。

 宿泊を前提としたのは、市街地からメガソーラーまでの道順に、地方自治体による除雪が間に合わず、通行できなくなる道が出てくる可能性があるためである。

 Golden Leaf-Worksでは、北海道でのネットワークを生かし、冬は出稼ぎに出ている北海道の農家から、北陸での除雪作業者を確保する予定としている。同じ機械を使うことで慣れた作業を長年にわたって続けられる利点があり、作業担当者にとっても魅力があるのではないかという。

 このメガソーラーでは、太陽光パネル下だけでなく、パネルの上も除雪する。パネル上の除雪には、非接触の除雪機を使う方針という。非接触でパネルから雪を吹き飛ばすような機能のある機種を使う予定としている。