メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

「通信線も電力線も不要」、無線ストリング監視の実際

太陽誘電が製品化、国内67カ所に供給

2017/05/31 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 茨城県南東部に広がる霞ケ浦。その北側のかすみがうら市に出力約1.7MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「パラカかすみがうら太陽光発電所」(図1)がある。2015年12月に稼働を開始した(関連コラム)。

図1●出力約1.7MWの「パラカかすみがうら太陽光発電所」
太陽誘電のストリング監視システムを採用(出所:パラカ)
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 発電所名の通り、駐車場運営のパラカが発電事業者となる。このメガソーラーでは、無線通信と太陽光発電電力を使い、外部の電源や通信線の不要なストリング監視システムを導入した。すべてのストリングの電圧と電流を監視し、無線通信でデータを送信している。

 ストリングとは、複数の太陽光パネルを接続した回路を指し、多くのメガソーラーで使われている結晶シリコン系パネルの場合、直列で十数枚といった構成となる。

 パワーコンディショナー(PCS)ごとに発電量を監視していても、接続されているパネルの数が多く、数枚に出力低下などが起きても発見しにくい。そこで、ストリング単位で発電状況を計測、監視することで、パネルの出力異常を効率的に発見しようという発想が出てきた。それがストリング監視システムである(図2)。

図2●さまざまな原因による太陽光パネルの出力低下
パネルの不具合だけでなく、周囲の構造物、草木などによる影、鳥のフンなども原因となる(出所:太陽誘電)
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 パラカは、かすみがうら市の前に稼働した、伊豆市の発電所に続いて、同じストリング監視システムを採用した。太陽誘電のシステムである。

 パラカがストリング監視システムを採用した理由は、太陽光発電設備の「不稼働」の状態を最小化するためだったという。不具合によって、一部の発電設備で発電が止まった場合にも、いち早く気づき、できるだけ早く正常な状態に復帰することで、発電ロスを最小に抑えたいと考えた。

「不具合が見えない」要望に対応

 太陽誘電がストリング監視システムを製品化したのは、2014年だった。再生可能エネルギー分野での新事業開発を模索するなか、まず検討されたのは、ストリング監視システムではなく、「マイクロコンバータ」だった。ストリングごとに電流と電圧を制御して出力を最大化するMPPT(最大電力点制御)を行うことで、影などの影響を最小限に抑えるなどの利点から、将来性が高いと見ていた。

 一方で、固定価格買取制度(FIT)によって太陽光発電所の稼働が増える中、「太陽光パネルなどの発電設備の不具合を把握できず、どの程度、発電をロスしているのかわからなくて困っている」といった相談を多く受けるようになったという。

 そこで、マイクロコンバータの前に、ストリング監視システムを製品化することに方針を転換した。同社のコア技術であるパワーエレクトロニクスと無線通信を応用することで、独自性のある製品開発を目指した。

外部の電源や通信線が不要な仕組み

 太陽誘電のストリング監視システム(図3)は、電源には太陽光発電、データの送信には無線通信を使う。外部の電源や通信線が不要で、設備購入費とともに施工コストを削減できる。

図3●電源には太陽光パネルの発電電力、データ送信は無線通信
太陽誘電のストリング監視システムの概要(出所:太陽誘電)
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 これに対して、一般的なストリング監視では、接続箱の入力端子などにセンサー端末を装着する。外部の電源と通信用のケーブルが必要となる。電力はキュービクル(昇圧変圧器)などから供給するため、売電ロスにもつながる。

 外部の電源を使わなくても済むのは、無線通信に要する電力を小さくし、計測用のセンサー端末の消費電力を最大500mWなどに抑えたことによる。これによって、太陽光パネルで発電した電力だけで駆動できる。

 導入時には、この計測用のセンサー端末(ストリングセンサユニット)のほか、無線通信の最終受信器となる親機(マネジメントユニット)を設置する。

 計測用のセンサー端末は、太陽光パネル間の接続ケーブルを結ぶコネクターを介して取り付ける(図4)。ストリング内の1カ所で、コネクター同士を結ばず、センサー端末に接続する。パネルA-パネルBとなる代わりに、パネルA-センサー端末-パネルBというように接続する。

図4●パネル間の接続ケーブルを結ぶコネクターに設置
パラカのかすみがうら市のメガソーラーにおける、計測用のセンサー端末の設置例(出所:日経BP)
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 無線通信の最終受信器となる親機は、主にPCSの筐体に設置する(図5)。計測用のセンサー端末から親機までは、マルチホップ通信と呼ばれる方式でデータを伝送する。

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図5●PCSの筐体に設置された親機
パラカのかすみがうら市のメガソーラーにおける例(出所:日経BP)

 センサー端末が無線通信の中継器となり、他のセンサー端末から受信機まで、バケツリレーのようにデータを中継することで、広い敷地内を低消費電力で無線通信できる。

 例えば、かすみがうら市のメガソーラーでは、486回路のストリングに計測用のセンサー端末を設置し、PCSの筐体に設置した2台の親機に送信している。

67カ所・合計出力約65.7MWの発電所が採用

 こうした仕組みのために、稼働中のメガソーラーに後付けしやすいことも、大きな特徴となっている。

 実際に、2017年2月末時点で受注確定分を含み、67カ所・合計出力約65.7MWという採用実績のうち、後付けでの採用の方が84%と多い(図6)。

図6●67カ所・合計出力約65.7MWの太陽光発電所で採用
2017年2月末時点で受注確定分を含む実績。後付けでの採用の方が84%と多い(出所:太陽誘電)
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 パラカのように、一つのメガソーラーで採用した後、別の案件でも導入するといったリピート率が高いという。

 2014年の製品化以降、地道に受注を伸ばしているものの、後付けでの採用を狙う場合、「投資家やプロジェクトファイナンスによる融資を受けている案件などでは、当初の事業計画には予定していなかった追加出費になることへの抵抗感が大きい」という。

 導入費は、標準的な条件の場合、設置費込みで1MWあたり約300万円となっている。

直流1500Vシステムでは端末を2個に

 太陽光発電設備の進化に伴い、設置時に工夫を要する場合も出てきた。例えば、直流回路を1500Vで構成するメガソーラーである。

 太陽誘電のストリング監視システムは、短距離の無線通信を採用しているため、20mの範囲に複数個のセンサー端末を配置することを推奨している。

 従来の日本のメガソーラーに多い、4段×5枚といったアレイ(架台への太陽光パネルの設置単位)構成ならば、20m内に複数のストリングに取り付けたセンサー端末が配置されることになり、配置の工夫はほぼ不要だった。

 ところが、直流回路が1500Vまで高電圧化すると、ストリングを構成する太陽光パネルの枚数が多くなる。場合によっては、20m以内に複数のセンサー端末が配置されないことが出てくるという。

 例えば、4段で構成するアレイの中で、上2段と下2段でストリングを分ける場合である。

 下段のパネルには、影がかかる時間帯があっても、敷地内に置くパネルの枚数を増やし、年間での発電量をより増やそうと考える発電所で、こうしたストリング構成が採用されている(図7)。

図7●上段と下段でストリングを分けたメガソーラーの例
影がかからない上段と、影で発電量が減る下段(出所:日経BP)
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 下2段の影がかかるパネル同士、上2段の影がかからないパネル同士といった具合に分け、ストリングを構成することで、どのストリングも最大電力点で出力することを狙う。

 直流回路を1500Vで構成する場合、ストリングを構成するパネル枚数は40枚などとなる。アレイの中では、2段・20枚といった配置となり、一つのストリングを構成しているパネルの総距離が20mを超える。

 このため、複数のセンサー端末が20m以内に配置されない場合が出てきてしまう。

 こうした直流1500Vを採用するメガソーラーからの引き合いでは、一つのストリングに2個のセンサー端末を取り付けることを推奨している。これによって、確実に20m以内に複数のセンサー端末が配置されるようにし、無線通信の信頼性がより高まるという。

 実際には、太陽光発電所内は、見通しが良く、無線通信の距離は20mよりも長く、100m以上飛ぶこともあるという。

他の無線と干渉しにくい2.4GHz帯

 また、太陽光発電所と無線通信の関連では、PCSが悪影響を及ぼす場合のあることが知られている。太陽誘電のシステムでも、こうした悪影響は生じるのだろうか。

 同社によると、Wi-Fiなどでも使われている2.4GHz帯を使っており、PCSによる影響などは生じにくいという。悪影響が報告されている一般の無線通信などは、これよりもかなり低い周波数帯で、数十~100MHzでの例が多いという。

 2.4GHz帯を選んだのは、Wi-Fiなど広い用途で使われている帯域のため、無線通信モジュールを低コスト化しやすいことがある。

 さらに、万が一、発電所外で使われている他の無線通信と干渉する恐れが出てきた場合でも、16チャネルを使い分けられるため、ほかのチャネルを選択することで、周辺地域の無線通信への影響を防ぎやすいとしている。

低温地域、薄膜タイプなどに制約

 センサー端末の動作温度は、-20~+65℃となっている。北海道などには、-30℃に達する地域もあり、こうした地域の採用では工夫が必要になるだろう。

 また、化合物型半導体型や薄膜シリコン型を含む、薄膜半導体による太陽光パネルには、現在のところ対応できない。端末の対応電圧(60V)に対して、こうしたパネルは出力電圧が高いためである。

 こうしたパネルを採用するメガソーラーでは、ストリング数も多くなることから、設置するセンサー端末の数も増え、もし端末の電圧が対応できたとしても、コスト負担も大きくなる可能性があるという。