メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

パネル単位で不具合を特定、ICや通信の検出手法を応用

福岡のベンチャーが製品化、台湾や中国にも拡大

2018/04/18 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)では、出力1MWで約4000枚、同3MW以上になると1万枚以上の太陽光パネルが設置される。稼動から時間が経つほど、不具合や劣化などが一定の割合で発生する。

 不具合の起きたパネルを早期に把握し、適切に対処していくことが、安定稼働と事業性の維持にとって重要になる。効率的で、高精度な不具合の発見手法が、O&M(運用・保守)における課題の一つとなっている。

 例えば、ストリング段階での発電状況の監視も有効とされる。パワーコンディショナー(PCS)ごとの発電状況の監視に比べれば、接続されている太陽光パネルの枚数が少ないことから、不具合を生じたパネルを含むストリングを相対的に見つけやすくなる。

 しかし、この手法でも、パネルの不具合や経年劣化を把握するのは、それほど簡単でないことも分かってきた。発電量を相対的に比べる方法のため、極端に差がつくといった場合でない限り、気づきにくいためである。

 そこで、より短時間で、かつ、正確に、不具合が生じた太陽光パネルを把握できる手法の開発が求められた。

 こうした要求を満たす手法の一つとして、国内の多くのメガソーラーで採用が進んでいるのが、パルス信号を使った手法である(図1)。結晶シリコン型の太陽光パネルの検査に適用されている。

図1●不具合の生じている太陽光パネルを特定
パルス信号を応用した(出所:システム・ジェイディー)
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 太陽光発電所のO&Mに従事している発電事業者やO&M事業者、各地の電気保安協会などの担当者が口をそろえるのは、簡易な方法で、短時間にパネル単位での不具合などを把握できる利点である。

 福岡市早良区に本拠を置くベンチャー企業である、システム・ジェイディーが開発・製品化した(動画1)。

動画1●太陽光発電所における検出の例
簡単に短時間で検出できる(出所:システム・ジェイディー)

バイパスダイオードの作動まで検知

 パルス信号を応用した不具合の検出は、TDR(time domain reflectometry:時間領域反射)と呼ばれる。半導体の集積回路(IC)や通信、電力などの分野で実績がある。電力や通信では、長距離を結ぶ伝送線の故障の発見に使われている。半導体では、導通や絶縁の検査に広く採用されている。

 システム・ジェイディーは、半導体のテスト関連の開発を祖業とする。テストを容易にする半導体の設計や、テスト用プログラムの自動生成などを手がけてきた。

 太陽光パネルの不具合の検出では、接続箱内のストリングの入出力端子を通じて検出することでは、従来のストリング監視や、ストリング全体の異常を検知する技術と同じである。

 異なるのは、従来のストリング監視が発電量を計測する、ストリング全体の異常を検出する手法では、ストリング全体の電流や電圧の異常を把握するのに対して、ストリングごとにパルス信号を送信することで、不具合の起きているパネルを特定できる点にある。

 ストリングにパルス信号を送ると、反射した信号が戻ってくる。もし、断線など不具合のある太陽光パネルを含んでいる場合、その場所の抵抗値は過剰に高くなっている。こうした抵抗値が異常な場所をパルス信号が通過すると、波形の歪んだ信号が戻ってくる。

 パルス信号の発信・受信点からの距離によって、反射した信号が戻ってくるまでに要する時間が変わる(図2)。この時間差を利用して、ストリング内で不具合の起きたパネルの特定だけでなく、パネル間の接続が断たれている場所や、パネル内でバイパスダイオードが働いている状況まで把握できる。

図2●バイパスダイオードの作動まで把握
反射して戻ってきた時間から特定する(出所:システム・ジェイディー)
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 通常のパルス信号を応用した不具合の検出では、基準値との比較が必要になる。ストリング内で基準値を確保することは難しいため、同社ではプラス極とマイナス極の両方から、同じようにパルス信号を受発信することで、この課題を解消した。この技術で、特許を取得しているという。

 こうした手法のため、日射の状態に影響されず、不具合を把握できる(動画2図3)。夜間でも不具合を検出できる。夜間は発電していない時間帯のため、発電状況やPCSの稼働状況といった外的要因の影響を受けにくい。また、発電を止める必要がないため、売電ロスの心配がない。

動画2●日射がない状態でも検出できる
太陽光発電所を模擬したデモの様子(出所:日経BP)
図3●検出後の作業工程
画面には、不具合を生じているパネルの位置まで表示される(出所:システム・ジェイディー)
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 ストリングあたりの作業時間も短い。20秒程度で結果が得られる。

 これらの関連技術をシステム化し、「SOKODES(ソコデス)」と称して製品化した。携帯用の端末、または、接続箱内に定置する基板、遠隔監視システムなどで構成している。

 接続箱内に定置する基板は、毎日定期的に検査する場合に使う。毎晩、1時間に一回の間隔で検査する。太陽光パネルの不具合の検出だけが目的であれば、ここまで頻繁に検査する必要はない。盗難などを早期に把握する目的があり、万が一、メガソーラー内の電線が切断されて盗難された場合、警報を送信する。こうした保安管理にも応用できる。

 基板には温度センサーも設置しているため、なんらかの不具合による接続箱内の過熱も、すぐに把握できる。

 それ以外の場合には、携帯用の端末を使って、太陽光発電所の訪問時に接続箱を巡回し、ストリングごとに手動で検査する。

 また、当初は断線などの検知に特化した携帯型の端末を販売していたが、その後、地絡も検知できる端末を開発し、供給している(動画3)。

動画3●地絡の検知を模したデモ
(出所:日経BP)

 太陽光発電所で多く検出している不具合の一つは、太陽光パネル内のはんだ関連の不具合だという。水分の含有量が過度に多かったり、低品質のはんだを使っているパネルにおいて、発電を開始してから数年後、はんだが浮き始め、最後には断線してしまうこともある。

 また、太陽電池セル(発電素子)の表面の太い電極(バスバー)の切断、バイパスダイオードの焼損や断線、太陽光パネル間のコネクタの外れや断線などを検知することも多い。

 これらの不具合は、稼働後に気温の変化が繰り返されることによって、はんだや他の材料が熱膨張と収縮を繰り返し、一定の時間を過ぎると生じることが多いという。

大手EPCがO&Mサービスに採用

 システム・ジェイディーでは、これらの技術を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発プロジェクトを活用しながら開発してきた。2009年に開発に着手した。

 2008年夏のリーマンショックによる半導体不況により、ICのテスト関連事業では、半導体メーカー向けの開発やライセンス供与の停止などが相次いだ。そこで、それまで培ってきた技術を生かし、新市場の開拓に取り組み始めた。

 2012年に製品化した当時の太陽光発電市場は、FITが施行した直後で、開発ラッシュが続いていた。発電所の施工分野に多くの関心が集まり、保守への注目度は総じて低かった。「太陽光発電は、メンテナンスなしで運用できる」と誤解している事業者も多かった。

 一方で、発電や通信などインフラを本業とする企業を中心に、効率的で精度が高く、かつ、素早く不具合を検査できる手法を求める動きもあった。

 システム・ジェイディーのパルス信号を応用した検査システムは、そうした企業を中心に、採用が進んでいった。

 同社の伊達博社長によると、発売当初に採用したのは、電力会社のグループ企業や各地の電気保安協会が多かった。そこから徐々に認知度が高まり、EPC(設計・調達・施工)サービス企業やO&M企業に広まっていったという。

 太陽光発電所のEPCやO&Mを多く手がけているNECネッツエスアイもその1社で、システム・ジェイディーと提携し、SOKODESを応用したパネル単位でのトラブル検出を、遠隔監視サービスに組み込んだ(関連コラム)。

 NECネッツエスアイでは、接続箱内に基板を設置して定期的に自動で検査する手法を推奨している(図4)。毎晩、パネル1枚ごとに検査し続ける利点として、パネル単位での抵抗に関する履歴が蓄積され、経年変化を把握できることを挙げる。

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図4●接続箱内に基板を設置して毎晩、自動で点検
NECネッツエスアイが施工した太陽光発電所(出所:日経BP)
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 抵抗値の上がり方から、太陽光パネル内ではんだが浮いて切れる直前になっているといった状況を予兆できるという。これにより、例えば、「1年後に断線する可能性が高いパネルの枚数」などを予測し、早めに修繕計画を立てられるとしている。

台湾では火災問題で需要が拡大

 これまで販売してきた携帯型の端末の台数は、約500台という。現在、国内では約20社の商社や施工会社と代理店契約を結んでいる。

 NECネッツエスアイが採用しているような、接続箱内に基板を設置するタイプは、福岡県の太陽光発電事業者が多く採用していることから、九州を中心に普及し、合計出力約20MWの太陽光発電所で活用されている。

 ここにきて、台湾でも採用が広がっている。携帯型の累計約500台の販売実績のうち、30台弱が台湾向けという。

 台湾では、パネルの断線や地絡による漏電などが原因で、パネルが発した火花(アーク)が枯れ草などに燃え移った結果、火災に至った例があった。パネルの不具合への関心が高まっていたことで、比較的スムーズに採用が広がった。

 台湾では、パネル同士を結ぶ電線を架台に固定する手法が日本と異なり、断線などが起きやすいという。日本では、樹脂材料を使った資材で、電線を架台に固定することが多い。一方、台湾では、金属のボルトで固定していることが多いようだ。この金属ボルトで電線の樹脂被覆が損傷し、不具合につながっているとしている。

 2018年3月には、台湾で販売代理店を務めているWitty社、Get Green Energy社との間で、太陽光発電所の検査、保守、リサイクルに関して提携した。今後、台湾を足がかりに、中国にも進出する構想を持つ。

 今後の課題の一つに、新たな設計思想を採用した太陽光パネルへの対応がある。中国の大手パネルメーカーを中心に、高出力化や高信頼化を目的に、パネル内を分割して並列に接続するタイプが製品化されている。

 システム・ジェイディーのパルス信号を応用した検査システムは、並列に接続した回路で不具合を検出することが難しい。信号が分散してしまい、検出しにくくなる。化合物半導体などの薄膜型パネルへの対応も、同じ理由で難しい。

 また、PCSの直流入力電圧をさらに高電圧化し、1500V化された場合の対応も課題となる。現在は、1000Vまで対応している。

 1500Vに対応するためには、これまでとは構成部品を変える必要がある。より高い電圧に対応する部品は、寸法が大きくなることが多い。コストのほか、携帯性や接続箱内を占有する体積も問題となる。