メガソーラーの番人、先進的O&Mの現場

影による発電量の低下を最小化、パネル単位の制御・監視システムの効果

米Tigo Energyのマキシマイザー付きパネルを採用

2018/02/14 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 大阪府河南町の山あいに、連系出力50kW未満となる事業用の低圧太陽光発電所が2カ所、並んでいる(図1)。周囲には、連系出力2MW未満となる高圧連系のメガソーラー(大規模太陽光発電所)も4カ所ある。

図1●低圧と高圧あわせて6カ所の太陽光発電所
2カ所は他社が所有(出所;上は日経BP、下はエイワット)
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 これらの6カ所の太陽光発電所は、エイワット(大阪府堺市)が開発した。高圧案件のうち2カ所は、竣工後に他社に売却している。

 同社は、栄和鉄工所として1972年に設立され、1990年代から太陽光発電や風力・水力発電などの再生可能エネルギー発電を手がけてきた。太陽光では開発から施工、運営まで担い、開発や施工の実績として高圧案件が29カ所・合計出力173MW、低圧案件は500カ所・合計出力41.5MWとなっている。

 蓄電池の併設や小水力発電にも積極的に取り組んでいる。

 河南町で並ぶ低圧案件の2サイトでは、太陽光パネル1枚ごとに遠隔監視や最適制御できるシステムを1サイトだけに採用した。もう1サイトでは採用せず、ほかの設備はまったく同じため、「パネルごと監視・制御システム」の効果を比較できる。

 河南町の2カ所の低圧サイトは、いずれも太陽光パネル容量は67.2kW、連系出力・パワーコンディショナー(PCS)の定格出力は49.5kWとなっている(図2)。

図2●同じ出力の低圧連系の発電所が並ぶ
太陽光パネルはJAソーラー製、PCSはSMAソーラーテクノロジー製(出所:日経BP)
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 いずれも固定価格買取制度(FIT)の設備認定による買取価格は32円/kWh(税抜き)で、売電開始日は2015年6月12日、現在はNTTスマイルエナジーの遠隔監視サービス「エコめがね」の提携先の新電力に売電している。

 太陽光パネルは、中国JAソーラー製(280W/枚)を採用し、それぞれ240枚ずつ設置している。PCSは、ドイツSMAソーラーテクノロジー製を採用し、出力9.9kW機を5台ずつ設置した。

 「パネルごと監視・制御システム」は、米Tigo Energy製の「マキシマイザー」と呼ばれるユニットを導入することで実現した。JAソーラーが同ユニットを組み込んだパネルをスマートモジュールとして製品化しており、それを導入した。

 エイワットが、低圧2カ所のうち片方のみで、マキシマイザー付きの太陽光パネルを採用したのは、この発電所の南側に、3本の電柱が立っているために、パネルに影がかかり、発電量を下げてしまうことが予想されたからだった(図3)。

図3●南側に電柱が立っている
太陽光パネルに影を落とす(出所:エイワット)
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 もう1カ所は、この土地に隣接するものの、電柱の影はかからない。

 マキシマイザーは、太陽光パネル裏面のジャンクションボックスの付いている位置にあり、従来のジャンクションボックスとマキシマイザーの機能が統合されている(図4)。後付けできるタイプも製品化されている。

図4●黒い端末がマキシマイザー
Tigo Energy製のマキシマイザー付きのJAソーラー製の太陽光パネルを採用した(出所:日経BP)
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 マキシマイザーの機能は、いくつかある。取り付けられた太陽光パネルが直列で接続されたストリング単位で出力を最大化すること、太陽光パネルごとの発電中の電流と電圧の数値を送信することなどだ。

 実質的に、ストリング単位の最大電力点追従(MPPT)制御を実現しながら、パネル単位で遠隔監視できる。

 さらに、太陽光パネルに不具合が生じた場合、そのパネルをストリングの回路から切り離し、同じ直列回路につながる他のパネルからの出力を低下させない機能も備える。

 この機能は、発電所全体の出力ロスを最小化するだけでなく、不具合の生じているパネルを回路から遮断することで、安全性を高める効果もある。

 マキシマイザーが取得した太陽光パネル1枚ごとの電流、電圧のデータは、まず無線でゲートウェイ(データ収集装置)に送信される(図5)。河南町の発電所では、ゲートウェイは3カ所に設けた。これもパネルの裏に設置されている。

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図5●ゲートウェイ(上)と中央監視装置(下)
ゲートウェイまでは無線で、そこから先は有線のLANで送信(出所:日経BP)
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 ここからは有線のLANで、中央監視制御装置(メインボックス)にデータを送信する。中央制御監視装置は1カ所で、架台に固定されていた。同装置からは、インターネット経由でデータを送信し、パソコンや携帯端末で確認できる。

 ゲートウェイからの有線のLANは、電源ケーブルを使う。このケーブルは、電線と通信線を兼ねている。電源は集電箱から確保しているので、太陽光発電の電力を使える。

影がかかっても発電量の差は限定的

 河南町の低圧発電所では、発電開始から約2年半が過ぎ、マキシマイザーの効果が表れているという。

 まず、電柱による影の影響は、分刻みで把握できる。遠隔監視画面を見れば、影が伸びたり、影の位置が移動したりすることで、時々刻々と出力が増減するパネルを確認できる(図6)。

図6●パネルごとの出力の増減状況をひと目で把握できる
パネル単位の発電状況を表示する遠隔監視画面(出所:エイワット)
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 当然だが、影のかからない時間帯ほど発電量は増え、隣の発電所の水準に近づく。

 両低圧サイトの発電量は、想定よりも差が付いていないという。年間発電量が8000kWh前後の発電所において、約3000kWh程度の差に留まっている。マキシマイザーによるパネルごとの出力増加の効果が大きいと分析している。

 月によっては、予想発電量に対して、マキシマイザー付きの発電所の方が大きく上ぶれしていることもある(図7)。

図7●2018年1月の発電状況
月によっては、予想発電量に対して、マキシマイザー付きの発電所の方が大きく上ぶれすることも(出所:エイワット)
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 また、雲の影がアレイ(太陽光パネルを課題に設置する単位)の一部にかかる場合には、マキシマイザーなしの発電所では、ストリング全体で発電量が下がってしまう。影で出力の低いパネルに合わせてMPPT制御するために、影のないパネルまで、同じ電圧で出力するように制御されるためである。

 マキシマイザー付きの発電所は、影などによって発電量が下がっているパネルがあっても、各パネルが出力を最大化できるため、雲による発電量の減少幅が、相対的に少なくて済む。

不具合パネルをすぐに把握できる利点も

 O&M(運用・保守)の面でも、利点がある。パネルごとに電流と電圧のデータが送信されることから、この数値から不具合が生じたパネルを把握できる(図8)。

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図8●太陽光パネルごとの出力だけでなく、電流や電圧の状況もひと目で把握できる
発電中のパネル単位の電圧(上)、電流(下)の状況(出所:エイワット)
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 マキシマイザーなしの発電所の場合、I-V(電流-電圧)特性の測定によって、不具合のあるストリングを発見した後、不具合パネルを絞り込んでいく手法で把握する。この手順を踏まずに把握できるため、O&Mに要する労力を減らせる。

 河南町の発電所では、まだ稼働後2年半で、現在のところ、パネルの不具合は生じていないという。ただし、事前に不具合の兆候も把握しやすいことから、今後実際に不具合が起きる前に、交換用パネルなどを用意できる可能性にも期待している。

 エイワットでは、こうした効果を受けて、その後、開発した発電所のうち、影などの影響が大きい案件では、マキシマイザー付きの太陽光パネルを採用している。例えば、2017年に稼働した出力457.92kWの案件である。

 エイワットでは、マキシマイザー付きの太陽光パネルを導入した場合の初期投資の増加分を非公開としているものの、Tigo Energyは2015年初の時点で、導入費を1kWあたり約2万円と公開しており(当時の関連コラム)、参考になるだろう。

 影による出力低下の影響を緩和することで、初期投資の増加分を上回るだけの発電量の上乗せが見込め、事業性を向上できるとしている。