PVロボット最前線

ゴーカート感覚の草刈機、三交不動産がメガソーラーで活用

自作のカバーで石の飛散を防止

2016/08/17 00:00
加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所

 三重交通グループホールディングスの事業会社である三交不動産(三重県津市)は、運営している太陽光発電所で、乗用型の草刈機を活用している(図1)。

図1●乗用型の草刈機
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」(三重県津市)における草刈りの様子(出所:日経BP)
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 ゴーカートのような小型4輪の草刈機で、4輪の間にあたる椅子の下に、草刈りユニットを備える。その中で刃が回転することで、雑草を刈る。

 ゴーカートを運転するように、敷地内を運転して回れば、雑草のほとんどを刈ることができる。草を刈る作業そのものの身体的な負担が減る上、作業時間が大幅に短縮される。刈る面積が広くなるほど、作業効率も高まる。

 重労働ともいえる草刈りの作業効率を大幅に高めるだけでなく、走り回る“楽しさ”を付加できる機器といえる。

 同社は、太陽光発電所内の除草を、自社社員が担っている。手間と時間のかかる草刈作業の効率は、大きな課題となる。そこで、乗用型に目を付けた(動画1)。

動画1●ゴーカートを運転するように走るだけで草を素早く刈れる
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における草刈りの様子(出所:日経BP)

 三交不動産が運営中の太陽光発電所は、20カ所(合計出力約39.6MW)ある。このうち、少なくとも10カ所で、乗用型の草刈機を使いたいとしている。

 敷地のフェンス外については、外周の範囲が広いこと、刈り取った雑草が近隣に飛び散らないように適切な処理が必要になることから、専門業者などに外注している。

 元々、敷地内についても、委託することを検討していた。しかし、草刈作業は、重労働であるうえ、太陽光パネルや送電ケーブルを損傷するリスクがあることから、太陽光発電所の草刈りを請け負わない事業者も多い。

 また、三交不動産は元々、それぞれの事業に関わる作業などを極力、外注せず、自社で対応する方針でもあった。

身体的負担は軽く、費用対効果は向上

 草刈りは、同社内で太陽光発電所の開発・運営に従事している社員が担当し、日々の業務の合間を縫って刈りに行く。

 開発などの担当者だけでなく、電気主任技術者の資格を持ち、太陽光発電所の電気保安管理業務を担っている社員も草刈りを行う。担当している発電所の点検などが重ならない日には、他の発電所の草刈り作業にも加わる。

 完成して間もなく、まだ雑草が多く生えていない太陽光発電所を除き、運営中の案件では、ほぼ年2~3回、草刈りの必要があるという。

 ほとんどの発電所では、5~6月と7~8月の年2回刈る。10月にも刈って、年3回となる発電所もある。

 中でも、農地や住宅地に隣接する場合、雑草が伸びすぎないように留意している。例えば、農地に隣接している太陽光発電所では、農作業の予定にあわせ、農家から草刈りの時期について要請を受ける場合もあるという。

 農地などと同様に、太陽光発電所においても、草刈りは身体的な負担の大きな作業である。暑い時期に、直射日光を浴び続けながら、敷地内をくまなく移動して草を刈る。発電所の規模が大きいほど、負担が重くなる。

 乗用型の草刈機は、約1年前に導入した(図2)。地元の農業協同組合を通じて、オーレック(福岡県広川町)製を購入した(関連コラム)。購入前には、試しにメガソーラー内で除草し、除草能力や作業性を確認して導入を決めた。

図2●2台でメガソーラーを一気に除草
オーレック製を購入(出所:日経BP)
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 メンテナンスなどは、購入した農協が担っている。

一度使ったら、他の方法には戻れない

 購入して自社の太陽光発電所で使ってみると、想像していた以上に草刈りを効率化できることがわかり、2015年度末近くに、もう1台を追加購入した。「一度使い始めたら、乗用型草刈機以外の方法には戻れない」と評価している。

 1台目と2台目では、車体の幅や、走行時に刈り取る幅が異なる。三交不動産のメガソーラーでは、直近に設計した案件ほど、太陽光パネルの列間が狭くなっている。最小で約1mとなっており、1台目は、この狭い幅での通行性を考慮し、車体幅990mm、刈幅880mmの機種を選んだ。

 実際に使ってみると、約1mと狭い列間でも、想像より小回りを利かせて走れることがわかった。このため、2台目はより幅の広い、車体幅1070mm、刈幅975mmの機種を購入した。刈り幅が広ければ、草刈りの効率がさらに向上する。

 オーレックによると、同社の乗用型草刈機の価格は、約44万~100万円となっている。

 草刈りの委託費として、一般的に1m2あたり100円、出力1MW規模の発電所の全面除草費として約100万円が目安になるとされる中、身体的な負担を減らすだけでなく、外注費と比べて、機器の購入費に関しては、1年で元が取れることになる。

2台でより効率的に

 乗用型の草刈機を使ったメガソーラー(大規模太陽光発電所)の除草は、多くの場合、3~4人で作業し、約1日で終える。

 基本的に、晴天時に作業する。雨天となれば、別の日に延期する。暑い時期に重なるため、最高気温になる前の、午前の早い時間から始める。

 2台の軽トラックに、乗用型草刈機を1台ずつ乗せて、メガソーラーまで運ぶ(図3)。その場合、2人が草刈機に乗り、残りの1~2人が、乗用型では刈れない場所の雑草を刈っていくといった具合で作業する。

図3●軽トラックで運べる
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における様子(出所:日経BP)
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 乗用型で刈り取れないのは、主にフェンスの際や、法面などの斜面、段差を含む場所などである。

 また、送電ケーブルを、金属製のラックや樹脂製の保護管に収めて地上に敷設している場合、乗用型草刈機の走行を制約するが、三交不動産の発電所では、当初から敷地内の送電ケーブルは地中に埋設している。これも、乗用型を使う上で、好都合となった。

 さらに、パネルを置いている場所は、基本的に地表を土としていることも、乗用型の使用に適していた。一部の発電所を除いて、防草シートなどは使っていない。パワーコンディショナー(PCS)や連系設備に向かう通路は、採石で舗装しており、雑草は生えにくい。

パネルの下は刈らない

 出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」(三重県津市河芸町杜の街)の敷地内を、乗用型草刈機を使って除草する様子を取材した(動画2)。

動画2●アレイ間は約1.5m
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における草刈りの様子(出所:日経BP)

 2台の乗用型草刈機を使い、1日で除草を終えた。

 メガソーラーの敷地面積は約3.8haで、1万5552枚の太陽光パネル(ソーラーフロンティア製)が並んでいる。2013年11月に運転を開始しており、最初の年は除草するほど草が伸びなかったものの、2014年初夏以降、2シーズンにわたり、除草を続けている。

 乗用型で刈っているのは、パネルの列間や、フェンスとの間の空き地に伸びている雑草である。

 パネルの下の雑草は、刈らない。発電事業者によっては、パネル下の雑草も刈るが、三交不動産の場合、太陽光が遮られているためにそれほど伸びないこともあり、刈る必要を感じていないとしている。

 パネルの下から草が伸び、パネル間の隙間や、最前列の前に回り込んでパネル上に顔をのぞかせた場合、パネルの下側から鎌などで刈っている。

9アレイ分を約3分間で刈る

 アレイ間は、往復するときれいに刈り取れる。あまり高く伸びていない場所や、時間を十分にかけられない場合には、往復せずに片道だけ走り、後ろの列の前だけを刈る。それでも、パネル上にかかる影を防ぐ効果は十分にあるという。

 アレイ間の往復では、9アレイ分を約3分20秒間で刈り終えていた。南側にある、10アレイ分ほどの広めの空き地は、約6分20秒間で刈り終えた(動画3)。乗用型を使いこなしていく中で作業に慣れ、草刈りの正確性が増すとともに、所要時間が短くなっているという。

動画3●アレイ間を往復
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における草刈りの様子(出所:日経BP)

 乗用型の利用では、構造物にギリギリまで近づいて走れば、刈り残しが減る。基礎やフェンスの際に、どこまで近づけるかがポイントとなる(図4)。

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図4●基礎やフェンスにどこまで近づけるか
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における草刈りの様子(出所:日経BP)

 敷地の北西は、林に面している。林や農地に面している場所は、養分の高い土や種子が飛来しやすく、雑草が生えやすいとされる。この林に面した場所も、同じ敷地内の他の場所に比べて、背の高い雑草が隙間なく繁茂していた。こうした雑草も、力強く刈り取っていた(動画4)。

動画4●背の高い雑草も刈り取れる
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における草刈りの様子(出所:日経BP)

飛散防止カバーを自作

 太陽光発電所内において、乗用型草刈機を使うにあたり、工夫したことがある(図5)。

図5●車体の後部に自作の「飛散防止用カバー」
回転刃が巻き込んだ石などの飛散を防ぐ(出所:日経BP)
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 まず、回転刃の高さを、最大の高さに上げることである。採用した機種では、最大70mmまで上げられる。

 さらに、車体の後方に、飛散防止カバーを取り付けた。このカバーは自作した。

 地面に落ちている石などの巻き込みを少なくした上、万が一、巻き込んでしまった場合でも、草刈りユニット内から外に飛び出さないようにするための工夫となる。

 回転刃の高さを上げることで、地面に落ちている石などが巻き込まれないようにした。そして、飛散防止のための構造が付いていない車体後方に、自作したカバーを追加して万全を期している。

 いずれも、農地の除草などには見られない課題で、太陽光発電所に特徴的な対応といえる。

 乗用型草刈り機を運転する作業者は、必要に応じて、ヒザ当て、ゴーグル、日除け、手袋などを装着する(図6)。

図6●必要に応じてヒザ当て、ゴーグル、日除けなどを装着
出力約2.5MWの「津メガソーラー杜の街」における草刈りの様子(出所:日経BP)
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 ヒザ当ては、太陽光パネル低部との接触による負傷を避けるために装着する。ゴーグルは、刈った草などの種や花粉が目に入らないように付ける。作業者によっては、マスクも付ける。

 燃料のガソリンは、草刈り中に補給が必要になることはないという。