PVロボット最前線

ロボットが「草を踏んで」抑制、太陽光の雑草対策に新手法

「けもの道」にヒント、自律走行時の転圧で一定の草丈に

2019/01/10 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 太陽光発電所のO&M(運用・保守)で、意外に厄介なのが雑草対策である。放置しておけば、事業性や安全性を損なう。パネルよりも高く伸びれば、影で発電量が減る。繁茂した状態で、アーク(火花)などから草に引火し、燃え広がる恐れもある。

 害虫の生息源となったり、種子や花粉の飛散によって、周囲の居住環境を悪化させたり、適切に管理していないという印象を近隣に与えかねない。

 雑草対策には、(1)草刈機による除草(機械除草)、(2)化学薬剤(除草剤)の散布、(3)防草シートの敷設や砕石の積層、(4)シバ、クローバーなどの被覆植物の植栽、そして、(5)チップなど植物性資材の敷設――などがあるが、いずれも万能ではなく、複数の方法を組み合わせるなど、発電所の状況に合わせて適切な手法を探っていくことなる(関連コラム

 ここにきて、新しいタイプの手法が登場した。「上から踏む」など、雑草に強い圧力をかけ続けることで、伸びを抑えようというものである。

 一般的な草は、強い外的圧力がかかった場合、細胞の一部が崩壊し、これによって枯れたり、高さ方向への成長が抑えられたりする。この性質を利用する。

 ただ、この方法も万能ではない。ある高さまで刈り取りをした後、その高さを維持する目的で使うなど、「組み合わせ型」の雑草対策の一つとなる。

 現在、この方法には、二つのタイプが提案されている。一つは、自走式のロボットが敷地内を移動しながら加圧し続ける手法。もう一つは、高圧洗浄機を使って重曹を勢いよく放射し、草をなぎ倒して損傷させる手法である。高圧洗浄機を使う手法で重曹を使うのは、草の細胞をより効果的に破壊させるためだ。

 今回は、一つ目の「自走式のロボットが敷地内を移動しながら加圧し続ける手法」を紹介する。太陽光発電関連を幅広く手がけるベンチャー企業である、フィールド開発(宇都宮市)が開発し、2019年春の販売開始を予定している(図1)。

図1●半年間、自動で走行して雑草を踏み続ける
(出所:フィールド開発)
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半年間、人手が不要で自動で走行

 フィールド開発は、太陽光発電所の開発・運営から、事前調査や開発、EPC(設計・調達・施工)やO&M(運用・保守)サービス、追尾式や固定式の基礎・架台などを手がけている。太陽光発電所の開発やEPCサービスの実績は、稼働済みで41カ所・合計出力約18MWとなっている。

 追尾式や固定式の基礎・架台は、独自の発想を基に開発・製品化した。今回の「雑草を踏みながら自動走行するロボット」も同様で、同社の山口直信代表取締役が強く意識する「発明型志向」を示す例となる。

 山口代表取締役によると、雑草を「踏んで」成長を抑える手法は、「けもの道」を見た時に思いついたという。

 自社の太陽光発電所を運営している中で、雑草対策が大きな課題であることを実感していた。既存のさまざまな手法を検討した結果、雑草は「絶やす」のではなく、「ある程度生えた状態を保ちながら、過剰な成長を抑える」という発想に至った(図2)。

図2●さまざまな雑草対策を検討した
(出所:フィールド開発)
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 除草剤などで雑草を根から絶やす手法の場合、地域住民が薬剤による影響を懸念することがあるほか、長期的には土地が痩せて風で表土が飛散しやすくなることにも注意が必要という。パネルに土埃が付着すると発電量の低下につながるほか、近隣住民の居住環境を悪化させてしまう恐れもある。

 丈の低い雑草を生やして管理する手法であれば、この弊害を防げる。ただし、この場合、ある程度の頻度での刈り取りが必要になる。草刈りは作業の手間やコストの負担が大きいだけでなく、地上に敷設されたケーブルを誤って切断、損傷させてしまうリスクがある。

 そんな時に、「けもの道」を見かけた。けもの道は、野山や藪の中で、同じ動物が、同じ場所を日常的に通ることでできた自然の道である。その場所だけ背丈の高い草がなく、地表を覆う草も薄くなっている。

 街中の芝生などでも、人の通行が多い場所で、同じような状況が見られる。

 これらは、人がそのための作業をしてできたのではなく、動物や人が日々通ることによって、結果的に生じたものだ。「草の状態、できあがるプロセスともに、太陽光発電所における雑草管理の理想的なあり方」と山口代表取締役は言う。

 太陽光発電所において、人手をかけず、けもの道のように雑草の伸びを抑えるには、どうしたら良いのか(図3)。

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図3●開発したロボットによるテスト時にできた「けもの道」
(出所:フィールド開発)
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 敷地内に、「けもの」を日常的に走らせることはできない。ならば、その代わりに、けもののように、雑草の上を踏みながら動き回るロボットを開発すれば良い。

 けものが自分で勝手に道を切り開いていくのと同じように、雑草が伸びてくる春から秋までの約半年間、ロボットを敷地内に放置し、毎日自律的に充電し、決まった範囲を移動しながら、雑草を踏んでゆく(図4)。翌日はまた、違う場所を移動しながら雑草を踏んでゆく。こうしたロボットを開発し、「グラプレス」という名称で製品化した。

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図4●半年間、自動で走行して雑草を踏み続ける
(出所:フィールド開発)
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転圧し続けるイメージで雑草を伸ばさない

 けものが頻繁に通ることで、雑草が枯れたり伸びが抑えられたりするのは、加圧による物理的ストレスのほか、化学的なストレスも加わることによる。

 化学的なストレスとは、植物が内部から発生させる物質によって、自らの細胞の一部を壊死させることを指す。エチレンなどが、この現象を生じさせることが知られている(図5)。

図5●「踏む」ことによる雑草の育成抑制効果
(出所:フィールド開発)
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 高圧洗浄機を使った噴射によって同じような効果を狙う手法の場合、重曹を噴射する。この理由は、重曹には、植物内でエチレンを活性化させる作用があるためである。

 フィールド開発のロボットの場合、重曹は使わずに、雑草の上を踏んで通ることだけで、雑草に物理的なストレスと、化学的なストレスをかける。

 この荷重のかけ方は、開発の過程で試行錯誤してきた点の一つである(図6)。

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図6●試作を重ねて最適な踏み方を検証
(出所:上の2枚はフィールド開発、下は日経BP)

 ロボットの走行速度、車体重量の検討と関連させながら、一度の走行中に、同じ場所の雑草を、どの程度の重さで、どのように、何回踏むのが適切なのか。同じ場所の雑草を踏む間隔は、どの程度の日数が適切なのかといった具合である。

 それによって、モーターの性能や配置、駆動力とのバランスや、ソフトウェアのプログラムの修正も必要になる。

 「雑草の抑制のため、過度に強く、頻繁に踏めば良いわけではない」と山口代表取締役は強調する。ストレスが強すぎると枯れてしまい、除草剤の利用と同じになってしまうという。

 加圧機構については、例えば、試作段階では、車体前後に張り出すように、加圧用の部材を取り付けたモデルも試したが、最終的には、車体前部の下、1カ所に配置した。

 車体の重量は約106kgで、走行速度は推奨で250m/hと、ゆっくりと雑草を押しながら動く。押す幅は約1m。車体幅の約70cmに、走行時に生じる水平方向の最大約30cmのズレを合わせた数値という。約100kgの荷重をかけて、転圧するような状態となる。

 推奨では、この作業を1日に1時間続け、1日あたり250mの雑草を踏んで進む。出力500kWの太陽光発電所の場合、敷地面積が約1万m2で、雑草を抑制するために走る距離は約2500mとなる。1日に250mを走って雑草を押し続ければ、10日間で1周することになり、ほぼ10日に一度は、同じ場所を走行することになる。その間に草が10cm以上伸びることは少ないという。

 ただし、ロボットの仕様としては、満充電時に1日10時間の走行が可能で、発電所の状況に合わせて、走行速度などは変えられる。

 もし、10cm以上伸びた時のために、オプションでカッターを用意している(図7)。車体の四隅にナイロン製の回転刃を取り付け、長く伸びた草はこの刃と接触した時に刈り取れる。刈り払い機で刈りながら走るイメージとなる。

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図7●車体の前に取り付けられたカッター
(出所:日経BP)

 1日あたりの作業時間や距離の設定は、適切な荷重のほかに、ロボットの動作に必要な電気の確保も関係している。ロボットの動作に必要な電気は、容量が56Ahの鉛蓄電池2個で賄っている。この蓄電池には、ロボットの上に取り付けた出力120W/枚の太陽光パネルによる発電電力を貯めている(図8)。

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図8●車体の上に太陽光パネル、内部に鉛蓄電池を備える
(出所:日経BP)

 太陽光パネル、鉛蓄電池ともにパナソニック製を採用した。

 雨天時には、走行せずに充電に専念する(図9)。本体が備える雨滴センサーで検知する。農業用の水センサーをスポンジで包み、雨水が染み込みやすくし、雨降りを検知しやすくした。

図9●雨天時は走行せず、充電に専念
(出所:フィールド開発)
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 連続して4日間以上、日射がない日が続くようなことがなければ、問題なく稼働を続けられるという。

人や構造物に衝突しない工夫

 草刈機ではないので、雑草が生い茂っている場所では、実力を発揮しにくい。あらかじめ雑草を短く刈った場所で、その高さを維持したまま管理したい用途に向く。

 地表を砕石で覆ったタイプの太陽光発電所でも有効という。車体重量の約100kgで転圧しながら走っている状況を、場所ごとに定期的に繰り返すため、徐々に雑草の高さが揃ってくる上、表土を締め固める効果もあるという。

 一定の傾斜地にも対応でき、仕様では15度まで可能としている。

 走行する経路は、地表にワイヤーを敷設して設定する(図10)。車体に備える2個の金属センサーを使い、ワイヤー上を外れないように走行する。ワイヤーの左右に1個ずつ金属センサーが位置するように制御し、走行させている。

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図10●走行経路は地表にワイヤーを張って設定
(出所:フィールド開発)
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 もし、なんらかの拍子にワイヤー上から外れて走行した場合には、そのまま真っ直ぐ走り、その先で再びワイヤー上を通りかかった時に正常な走行に戻る。

 ワイヤー上から外れて走行している時に、架台やパワーコンディショナー(PCS)、フェンスなど、固定された構造物に近づいた時には、超音波センサーで検知する。構造物の一定範囲内に近づいたことを検知すると、走行を止める。その後、一定時間はその場で待ち、構造物が移動しないものであることを確認すると、バックして方向を少し変えて再び前進し、構造物を避ける(動画)。

草踏みロボット:フィールド開発による太陽光発電所の除草向けロボット

人間に近づいた時の動作(提供:フィールド開発)

 例えば、近づいた障害が構造物でなく、点検中の作業者など、人間だった場合には、ほとんどの場合、人がロボットから離れるといった行動を取るだろう。この場合、走行を止めた後、人が離れたことを超音波センサーが検知し、方向を変えずに再び前進する。

 こうした走行時の経路や障害物に対応するためのセンシングでも、試行錯誤の末に、現在の仕組みに行き着いた(図11)。それまでに、接触センサーや方位センサー、GPS、ステレオカメラなど、さまざまなセンサーや画像処理の手法を試したという。例えば、センサー方式によっては、発電中の太陽光パネル内に生じる磁界の渦によって、正確な検知が難しいなど、太陽光発電に特有の障壁で断念した技術もあった。

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図11●センシングもさまざまな手法を検討
(出所:上の2枚はフィールド開発、下は日経BP)

 タイヤは、耕耘機用の直径30cm・幅10cmと悪路にも強いタイプを採用し、二輪で駆動する(図12)。

図12●農耕機用のタイヤを採用
(出所:日経BP)
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 雨水が地面に貯まってぬかるんでいるような状況には、留意が必要という。地上13cmの高さの場所に、水に弱い制御盤を固定しているためである。雨の日に走行しない設定としている理由の一つに、この点がある。

 ただし、実際には、2018年夏から秋にかけての強い風雨を伴う台風が相次いで通過した際にも、通常通りにテストを続け、自社の太陽光発電所内に放置したが、異常などは生じることなく、想定通りの稼働を続けていたという。

 ロボットは、春から秋にかけて雑草が伸びやすい約半年間、基本的には人手をかけず、発電所内に放置したままで良いという。秋以降、再び雑草が伸び始めるまでの期間は、車体を顧客から預かり、メンテナンスする方針である。

 2019年3月の発売を予定しており、販売代理店の活用のほか、リースでの展開も検討している。販売価格は当初、約70万円を想定していたが、テスト中に判明した修正などを反映し、約80万円となる見通しという。オプションで車体の四隅にカッターを装着する場合は、合計で約100万円となる。