徳川家「三つ葉葵」の原型

 福井県鯖江市(さばえし)は、眼鏡フレームの国内生産量で約8割のシェアを持つ「眼鏡の街」として知られる。だが、特産品はそれだけではない。手織りの「石田縞(いしだじま)」から発展した織物、そして、歴史のある「越前漆器」など、伝統的な工芸品の産地でもある。

 住宅や産業向け太陽光発電システムの施工を手掛けるジャパンインペックス(鯖江市)は、太陽光パネル下の敷地を活用してフタバアオイ(双葉葵)を栽培し、石田縞の技術を使った「葵染め」繊維製品の開発に取り組んでいる。

 フタバアオイは、森林の暗い林床に生える多年草で、ハート形の葉が特徴。京都三大祭りの1つである「葵祭」の飾り物に使われ、同祭を執り行う上賀茂神社の神紋になっているほか、徳川家の「葵の御紋(三つ葉葵)」の原型になったことでも知られる(図1)

図1●栽培しているフタバアオイの葉
(出所:ジャパンインペックス)
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 鯖江市吉江町は、江戸期、越前松平家が治めた吉江藩の領地で、家紋はやはり「三つ葉葵」だった。フタバアオイは、かつて上賀茂神社の境内にも自生するなど、多くの里山で見られたが、温暖化やシカ害などの影響で、激減している。いまでは葵祭に使うフタバアオイの葉さえ十分に確保できなくなっているという。

 吉江町では、地域とのゆかりにちなみ、住民による「吉江あおい会」が発足し、10年ほど前からフタバアオイの栽培に取り組んでいる。いまでは年間2万株もの生産に成功し、毎年、5月の葵祭の前に、上賀茂神社に奉納している。