パネルメーカーの“品質戦略”

「福島プライド」で世界を目指すアンフィニ

トラブルを乗り越え、楢葉町の新工場が本格稼働に

2018/01/24 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテック研究所

最大で年産300MWの新工場

 「トラブルを乗り越え、新工場が安定稼働にこぎ着けたのは、福島県で採用した社員たちの団結力の賜物」――。アンフィニ(大阪市浪速区)の小寺直人常務・福島工場工場長は、福島工場の社員たちの「頑張り」に目を見張る。小寺常務は、これを「福島プライド」と表現する。

 アンフィニは、「Japan Solar」のブランドで太陽光パネルを製造・販売などを手掛け、売上高約150億円の中堅企業。パネル製造を主体にバイオマス発電やメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業、電力小売りも展開している。

 同社が、福島県楢葉町に新たな生産拠点「福島工場」を建設し、竣工式を開催したのは、昨年7月6日だった(図1)。

図1●福島工場の建屋外観
(出所:日経BP)
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 竣工式は、福島県の泉利行副知事や楢葉町の松本幸英町長、楢葉町議会の青木基議長など約100人が参列し、盛大に開催された。アンフィニの親川智行代表は、「信頼性の高い太陽光パネルを福島から世界に発信したい。被災地で仕事の場を増やすことで、少しでも復興を支援したい」とあいさつした(図2)。

図2●竣工式の様子
(出所:日経BP)
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 新工場では、結晶シリコン型の太陽光パネルを生産する。まず、年産100MW程度を目標にしており、将来的に海外向けも含めて最大で年産300MWを見据えている。

 だが、昨年7月から始まった試験生産では、予想以上に不具合が続出し、当初、本格稼働の見通しが立たない状態だったと打ち明ける。製造設備の初期設定に伴う微調整に手間取るなど、次々とトラブルが発生し、出荷前不良率は10%、つまり歩留まりが9割に留まり、安定稼働にはほど遠い状況が続いたという。

多国籍の製造装置を組み合わせ

 同社では、栃木県大田原市の工場で年間に約80MWの太陽光パネルを生産しており、国内での自社生産で製品設計や製造ノウハウを積んできた。新工場の稼働で、生産能力は3~5倍になる見込みだ。同社のパネル事業では、海外大手メーカーにはない特徴的なパネルの開発・製造や、固定価格買取制度(FIT)の後を睨んだ自家消費市場などを想定した販売戦略を立てており、新工場もそれに対応したもの。

 海外からセル(発電素子)を調達し、福島の新工場でパネル(モジュール)に組み上げる。複数のセルを電極で直列・並列の回路を形成し、封止材とガラス、バックシートを積層してラミネートし、四辺の端をフレームでカバーする。フルオートメーションの最新鋭の製造装置を導入した(図3)。

図3●福島工場の製造ライン
(出所:日経BP)
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 太陽光パネルの製造工程は、ガラスに直接、積層する薄膜系については早くから自動化されてきたが、セルを配線しラミネートする結晶シリコン系についても、自動化装置の開発が進んでいる。いかに最新の自動化設備を導入してトータルの製造プロセスを効率化するかが、パネルの競争力を左右する面が強まっている。

 アンフィニの福島工場でも、各製造工程で定評のある最新設備を導入した。結果的に日本メーカーに加え、中国、台湾など複数メーカーの装置を組み合わせることになった。こうしたマルチベンダーの製造機械を1つのラインとして最適化することも、微調整などに手間取った要因となった。

ボトムアップで改善案

 福島工場では、従業員約80人のうち、65人を福島県内で採用したという。2016年8月から数カ月にわたって毎月、面接を繰り返して採用したという。「採用面接では通常、2~3割はキャンセルがあるものだが、福島での採用面接では一人もキャンセルがなかった。新工場への期待感とともに、実直な県民性を感じた」(小寺常務)という。

 こうして県内人材を採用したものの、なかなか工場のラインが動かなかった。トラブル続きの生産現場を前に、「せっかく福島に新工場を作ってくれたのに、うまくラインが動かないのは悔しい」という思いから、「社員たちが独自にミーティングを繰り返し、ボトムアップで改善案を提案してくれた」(小寺常務)という。

 そこで、「9月20日までに絶対にラインを動かす」と背水の陣を敷いて、一丸となって歩留まりの向上に取り組んだという。その結果、不良率は徐々に低下し、9月半ばには1%未満まで下がり、10月1日に欧州向けに多結晶シリコン型パネルを初出荷した。10月10日からは正式にシフトを組んで勤務体制を確立し、安定稼働に入った。

 「早いうちにトラブルを出し切ったことで、かえって浅い傷で済んだ。社員たちの『福島プライド』に助けられた」と、小寺常務は振り返る。

 高い信頼性の太陽光パネルを安定的に量産するには、「最新の設備」と「管理体制」、そして「社員育成」の3つがすべて揃う必要があると小寺常務は考えている(図4)。「福島工場の社員育成のレベルは、ほかの事業所に比べても最も高い」(小寺常務)。

図4●高信頼性パネルの生産には3つの要素が不可欠という
(出所:アンフィニ)
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 親川代表は、福島工場の竣工式で、「新工場では、サッカー場やバスケットボール場など、社員のレクリエーション施設も充実させており、太陽光パネルとともに、福島の地で世界に羽ばたく人材育成も目指したい」と抱負を語った。すでにこうした目標は着々と達成されているようだ。

雪国向けのパネルを開発

 ここ数年、世界の太陽光パネル製造は、年産5GW程度の生産規模を持つ、中国や韓国のメーカーが主導権を持ち、日本市場も海外勢のシェアが高まっている。日本のパネルメーカー大手はコスト競争力を維持するため、国内生産を縮小する傾向を強めている。

 そうしたなかで、アンフィニが国内工場を新設したのは、「海外のギガプレーヤーと競合せず、100~300MW程度の市場でも、持続的に着実に収益を出せる市場に的を絞っていく」(親川代表)という独自のニッチ戦略が背景にある。

 こうしたニッチ戦略が成功すれば、海外市場にも輸出したり、海外の中規模工場で現地生産することも視野に入れている。こうした世界への展開をイメージして新工場の生産現場の壁には世界各国の地名をデザインに取り入れている。

 同社は、既存の大田原市の工場で業界先駆けて25年保証の長期信頼性を実現したパネルを生産してきた。福島工場は、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell:裏面不動態型セル)にも対応でき、加えて、細長いセルを直列・並列に構成するタイプの新製品「SOLAR NINJA」、そして、融雪機能のある雪国向けパネルの生産も計画している(図5)(図6)。トータルで5~6タイプの製品を作り分けられ、今後の受注状況に応じて生産していくという。

図5●細長いセルを直列・並列に構成する「SOLAR NINJA」
(出所:日経BP)
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図6●融雪機能のある雪国向けのパネルを開発
(出所:日経BP)
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 また、国内住宅市場向けに関しては、「国内大手メーカーと競争してもブランド力で不利になるため、FIT後を睨み、太陽光と蓄電池をセットにした自家消費型システムの展開を目指している」(小寺常務)という。蓄電池に関しても、外部からセル(充放電素子)を調達して、国内で製品化することも視野に設計・開発に取り組んでいる。

1.5MWのメガソーラーを自家消費

 実は、太陽光と蓄電池を組み合わせた自家消費モデルに関しては、福島工場自体を実証の場として、その経済性や運用ノウハウなどを蓄積していく方針だ。

 新工場の敷地面積は約1万坪(3万1237m2)、工場建屋は鉄骨2階建てで、延床面積は約5000坪(1万4799m2)。加えて、屋根上に出力約1.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)を設置し、容量約1.2MWh(出力1MW)の蓄電池システムを併設した(図7)。太陽光と蓄電池を含めた新工場全体の総投資額額は85億円で3分の2を補助金制度で賄った。

図7●新工場の屋根上には1.5MWのメガソーラーを設置して自家消費
(出所:日経BP)
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 太陽光パネル(5688枚)はアンフィニ製、蓄電池システムは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)がインテグレートした。太陽光パネル用と蓄電池システム用のパワーコンディショナー(PCS)はTMEIC製の500kW機を設置した。蓄電池は、韓国のサムスンSDI製とLG化学製のLiイオン蓄電池を採用した。

 太陽光発電と蓄電池システムはそれぞれ専用のPCSで6.6kVの交流に変換し、工場内の構内系統と連系して全量を自家消費する。サムスンSDI製とLG化学製の蓄電池は、別々のPCSで制御する構成にした。複数の蓄電池用PCSの統合制御では、TMEIC製「TMBCS(TMEIC蓄電池コントロールシステム)」を採用した(図8)。

図8●TMEICによる蓄電池システムを導入
(出所:日経BP)
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「ピークカット」と「アイランド」運用

 「TMBCS」は、太陽光と蓄電池を統合的に制御する。蓄電池とメガソーラーのPCSを連係制御し、サイト全体の連系点の発電量をリアルタイムに監視しながら、蓄電池を充放電制御できる。

 福島工場では、最大需要時にピークカットして電気代を削減するほか、系統電力の停電時には自立運転して「アイランド運用」を行うことも想定している。「アイランド運用」とは、電力会社の系統が停電して復旧の目途が立たない場合、電力系統から切り離して工場内の特定負荷に蓄電池から自立給電する。

 日常的には、基本的に消費電力を受電電力で賄う。メガソーラーが発電している場合、逆潮しないように出力抑制を行いながら工場設備に給電する。契約電力量のオーバーが予測される場合は蓄電池から放電してピークカット制御を行う(図9)。

図9●平常時のピークカット運用
(出所:アンフィニ、作成:TMEIC)
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 「アイランド運用」時は、1つの蓄電池用PCSが自立運転を行い、周波数と電圧を制御する。自立運転中の蓄電池充電状態を考慮して出力抑制しながらメガソーラーを出力する。他方の蓄電池は、構内系統と連系して放電したり、メガソーラーの出力を充電することも可能(図10)。

図10●電力系統が停電した時の「アイランド運用」
(出所:アンフィニ、作成:TMEIC)
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 アンフィニは、こうした太陽光と蓄電池を連係して運用したケースの効率性や経済性を検証しつつ、今後、顧客への提案に生かしていく方針だ。