日経デジタルヘルスが選ぶ、2019年を占う10大キーワード

2018/12/27 07:00
日経デジタルヘルス編集部

 年末の恒例企画として、今年も日経デジタルヘルス編集部では新たな1年を占う10大キーワードを選出しました。2019年を展望する10のキーワードを、五十音順で紹介していきます。

2019年を占う10大キーワード(五十音順)

1)AI診断

 2019年は、人工知能(AI)を用いて病気の状態を判断する「AI診断」が実用化に向けて動き出す(関連記事)。画像診断支援をはじめ、病理診断支援、さらに診察・鑑別診断支援の領域でそれぞれ研究開発が進んでおり、実用化に向けてAI関連のスタートアップと大手の診断機器メーカーとの協業も活発化している。

 AI診断時代の幕開けを告げるかのように、サイバネットシステムがAIを搭載した大腸内視鏡診断支援ソフトウエアの薬機法承認(クラスⅢ)を2018年12月6日に取得した。AIを搭載した診断支援機器では医療機器承認の第1号である。内視鏡による画像診断領域では、東京慈恵会医科大学とエルピクセルがAIによる大腸ポリープの自動認識・組織診断予測を開発しており、2019年度に国立がん研究センターと共同で有効性確認を進める予定(関連記事)。

 一方、診察・鑑別診断支援の領域でAIを活用する動きも出てきた。インフルエンザ診断支援機器の開発を進めるアイリスが、その一例だ(関連記事)。AIによる診断技術の開発では、こうしたスタートアップが存在感を高めている。臨床専門医、医療機器メーカーと協業しながら実用化に向けて臨床研究が加速するだろう。

2)科学的介護

 「未来投資戦略2017」に、自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現という施策が盛り込まれて以来、介護分野のエビデンス構築に向けた検討が重ねられている。

 2019年は、その実現に向けて要となる介護の科学的分析のためのデータ収集・蓄積プラットフォーム(CHASE)の構築が本格化する。2020年度には本格稼働し、厚生労働省は2021年度の介護報酬改定で評価していく意向だ。

 介護分野では既に介護保険総合データベース(介護レセプトデータベース、2018年度より全保険者の情報を収集)、通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業(VISIT)によるデータ収集・蓄積が行われている。

 2019年度中に構築されるCHASEでは、栄養マネジメントや口腔(こうくう)機能向上などについて状態・介入・得られた効果などのデータを蓄積。3つのデータベースを統合的に解析し、要介護者への最適なサービス提供につなげていく。2019年はCHASEのデータ収集に向けた具体的な動きが活発化するだろう。

3)健康増進型保険

 ここ数年、保険会社がICTをはじめとするテクノロジーを活用し、保険サービスの効率や収益性を高めるInsurTech(インシュアテック)の動きが目立っている。特に、健康リスクを減らすための行動を加入者に促す保険サービスである健康増進型保険が続々と登場し始めている。

 2018年7月には住友生命保険が「住友生命『Vitality』」を発売した(関連記事)。加入後の健康診断や日々の運動などの評価に応じて保険料が変動する仕組みをとっている。

 健康年齢少額短期保険は、実年齢の代わりに「健康年齢」という指標を使って保険料を決める保険サービス「健康年齢連動型医療保険」を提供している(関連記事)。東京海上日動あんしん生命保険が提供する「あるく保険」は、加入者にウエアラブル端末を貸与し、健康増進活動に応じて保険料をキャッシュバックするサービスである(関連記事)。

 健康寿命の延伸を見据えて保険会社が仕掛ける同様のサービスが2019年も話題を呼びそうだ。

4)スポーツ×デジタルヘルス

 2018年11月にオムロン ヘルスケアが発売した低周波治療器「HV-F601T」は、スポーツ後の筋肉の疲労や筋肉痛を緩和することを目的とした医療機器である(関連記事)。健康のために積極的に運動を行うビジネスパーソンが増えていることを受け、従来製品が肩こりの緩和などに焦点を当てていたのに対し、スポーツ後の体のケアに焦点を当てた製品開発を行ったという。

 コニカミノルタは、医療機関外で使用できるコンパクトな超音波診断装置を発売した(関連記事)。軽量かつコンパクトながら高画質な診断画像を提供できるため、スポーツドクターが合宿や遠征先、試合中に携行し、その場で超音波を使った診断を行うことが可能になるという。

 このように、類似の従来製品との差異化を図るために、親和性の高いスポーツ領域に着目したデジタルヘルスサービスが登場し始めている。2019年もこうした動きから目が離せない。

5)続・オンライン診療

 2018年4月1日に施行された2018年度診療報酬改定で、オンライン診療に対する診療報酬が新設された(関連記事)。患者の通院の負担を軽減するとともに、医師の偏在化を解消したり働き方改革を推進したりするとの期待が高まり注目を集めた。

 保険適用を歓迎する声がある一方で、予想外に厳しい算定条件に対して課題を指摘する声もあがっている(関連記事)。例えばオンライン診療料の算定対象が特定疾患療養管理料など10種類の管理料のいずれかを算定している疾患に限られ、初めて算定した月から6カ月以上経過していることが対象である点などである。

 オンライン診療を実践する臨床医による有志の研究会「オンライン診療研究会」も設立された(関連記事)。2019年は、次の2020年度の診療報酬改定に向けた意見集約の動きが活発になるだろう。現場の声を受け止めて、どのような改定になるかが注目される。

6)続・次世代医療基盤法

 「次世代医療基盤法」(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)が2018年5月11日に施行された(関連記事)。国が認定する事業者が、オプトアウト手続きによる医療情報の提供を受け匿名加工の上、研究機関や企業に提供することが可能になった。医療情報を活用した新たな治療法や新薬、革新的な医療機器開発の促進など、さまざまな可能性を秘めている。

 国が認定する「認定匿名加工医療情報作成事業者」(認定事業者)にだけ、医療機関は匿名加工しない医療情報を第三者提供できる。研究機関や企業のデータ利活用ニーズに合わせて、認定事業者による匿名加工情報が提供される(関連記事)。

 認定事業者は、高い情報セキュリティーを確保し、十分な匿名加工技術を持つといった一定の基準を満たしていることが条件とされる。認定事業者は2018年秋ごろに決まるとの見通しもあったが、2018年11月時点でまだ認定されていない。2019年には認定事業者が決まり、医療情報のビッグデータ活用に向けた動きが進むとみられる。

7)治療アプリ

 2019年は、通院と通院の間の治療空白にいる患者をスマートフォンアプリで支援し、治療効果を高める「治療アプリ」の実用化に向けた動きが活発になりそうだ。

 デジタルヘルスベンチャーのキュア・アップは、2018年4月にNASH(非アルコール性脂肪肝炎)専用の治療アプリ「NASH App」の臨床試験を、同年6月に「高血圧治療アプリ」の臨床研究を開始した(関連記事12)。ニコチン依存症治療用アプリ「CureApp 禁煙」の治験は既に2017年から実施している(関連記事)。

 治療アプリの考え方を従業員のメンタルヘルスに応用するサービスも登場した。キュア・アップは、心理ケア向けゲーム「SPARX」を手掛けるHIKARI Labと手を組み、法人向けメンタルカウンセリングプログラムの提供も行っている(関連記事)。アプリを使って認知行動療法に基づいた心理ケアを提供するプログラムである。

 手軽に使えるアプリを活用することで医療サービスの質向上が期待される。

8)排せつIoT

 日本では介護施設にいる高齢者の7%に失禁の課題があり、2~3時間ごとに介護者がトイレに連れていく必要があるという(関連記事)。こうした課題を解決しようと、企業が新たなサービスの開発に乗りだしている。

 トリプル・ダブリュー・ジャパンは、超音波センサーで膀胱(ぼうこう)の変化を捉え、いつトイレに連れて行けばいいかをアプリに通知する「DFree」を手掛けている(関連記事)。介護施設などの法人向けサービス「DFree 排泄予測サービス」のほか、個人向けサービス「DFree Personal」がある。2018年9月には米国参入を果たした。

 リリアム大塚は2018年12月に排尿タイミング予測支援デバイス「リリアムスポット」を発売した(関連記事)。恥骨の真上に当てると、超音波が照射され、膀胱内に蓄積する尿量を測定することができる。尿のたまり具合が4段階の目盛り表示で確認できるため、メモリに応じてトイレに誘導するなど排せつケアを行うことが可能である。

 このほかにも病院や介護施設における介護用おむつでトップレベルのシェアを持つ大王製紙は、在宅医療・介護向けに紙おむつの利用支援アプリ「アテント排泄ケア支援アプリ」(通称:アテントアプリ)の提供を2018年10月に開始した(関連記事)。適切な商品を紹介したり、紙おむつの的確な利用法を解説したりする機能などを備えている。

9)医療従事者の働き方改革

 人手不足がますます深刻になっており、2019年は医療従事者の働き方改革の取り組みが活発になりそうだ。特に地方では人口減が急速に進んでおり、職員の確保が難しくなっている。ICTによる業務効率化は、患者へのサービス向上と職員の働きやすさの両立のために避けて通れない。2018年度末には厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の最終取りまとめ・提言がなされる見込みで、改革に向けて本格的に動き出す。

 愛媛県四国中央市の石川記念会HITO病院では、スマートフォン(スマホ)を使った音声認識による電子カルテの入力システムを導入して、入力時間を約70%削減する成果をあげた(関連記事)。サービス終了が近づくPHS(簡易型携帯電話)に代わって、スマホを職員に支給する病院が増えており、高機能のスマホを通じてICTの導入がさらに進みそうだ。

 このほかに倉敷中央病院(岡山県倉敷市)は、GEヘルスケア・ジャパンが提唱する機械に通信機能を持たせた製品(IoT)や人工知能(AI)を駆使した「ブリリアントホスピタル」構想の実現に乗り出した(関連記事)。まずは医療機器の稼働状況を分析し、医療スタッフや機器の稼働の効率化を目指す。スタッフの付帯義務を減らすなどの働き方改革や、モニタリングを行うことによる個別ケアの実現なども計画している。

10)ブロックチェーンの医療応用

 仮想通貨の決済網・暗号通貨の中核技術として注目されたブロックチェーン。2018年3月にラスベガスで開催された「HIMSS 2018」では、80演題以上のブロックチェーン関連の発表が行われるなど、ブロックチェーンを医療分野に応用しようという試みが始まった。国内でもITヘルスケア学会が「医療ブロックチェーン研究会」を立ち上げ、医療での活用法を具体的に探る取り組みが重ねられている(関連記事)。

 2018年はそうした活動をはじめ、ブロックチェーンを応用したソリューションやサービスが登場してきた。デジタルガレージとウェルビーがロックチェーンやAIなどを活用したPHRサービス(関連記事)、ブロックチェーン技術と医師資格証(HPKIカード)を使用した医師の講座受講情報の管理や保有資格を開示するサービス(関連記事)などである。

 また、国内各地で実証実験が展開されたほか、ブロックチェーン技術を用いたプラットフォームを利用した日本医師会の「かかりつけ医 糖尿病データベース研究事業(J-DOME)」が実運用を開始するなど、その応用が加速している(関連記事)。2019年はさらに応用研究が進み、数多くの具体的なサービスも登場してくるだろう。