痛みの治療にVRが役立つ

切断や神経損傷に加えて脳由来の痛みにも有効か

2018/12/21 07:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 手足を切断したり神経を損傷したりすると、存在しない手や足である幻肢が痛む場合がある。それが幻肢痛である。脳内で猛烈な痛みを感じても、手や足が存在しないため、患部周辺をさすって痛みを和らげることすらできない――。

キッズ 代表でNPO法人 Mission ARM Japan 副理事長の猪俣一則氏
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 そんな幻肢痛に対して、VRを使った新しい治療法の開発が行われている。キッズ 代表でNPO法人 Mission ARM Japan 副理事長の猪俣一則氏は、開発中のVR療法を国際カンファレンス「Health2.0 Asia-Japan 2018」(主催:Health 2.0社、メドピア)で紹介した。

 VR療法では、赤外線カメラで撮影した健肢の動きを反転させてバーチャル空間に両腕を再現する。バーチャル空間に映し出された両腕は健肢の動きと連動しており、両手でボールをすくうなどのタスクを行う。

 両手でボールをすくう動作は、両手で顔を洗っていた感覚を思い出させる狙いがあるといい、「脳に大きな影響を与える」とシステム開発を担当するパワーブレイス リレーションデザインセンター ビジュアライゼーションデザイン室 室長の井上裕治氏は説明する。与えるタスクの難易度は、患者の上達度合いに応じて上げていく仕様である(関連記事)。

VR療法を行っている様子
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バーチャル空間の映像
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 幻肢は必ずしも元の手や足があった場所に存在するとは限らない。そこでVR療法では、患者の幻肢の位置に合わせてバーチャル空間に両腕を再現することも可能にした。

 さらに、VR療法は「即時効果が高い」と猪俣氏は話す。訓練を開始した4~5分後には効果が表れ、1~2週間持続する。さらに、最近の研究では、VR療法が脳卒中など脳の障害由来の痛みにも効果があることが分かってきたという。

 VRを活用したアプリを開発する米SuperGenius社 CTOのJulius Jockusch氏は、今後5年以内にVRを活用した治療法はもっと受け入れられるようになるだろうと見る。VRを使った治療によって、「鎮痛剤を20%以上減らせるというデータもある」(同氏)からだ。

 幻肢痛を抱える患者の中には、痛みから逃れるために自ら命を絶つことまで考える人もいるという。自身も幻肢痛に悩まされた経験を持つ猪俣氏は、エビデンスを構築し、「5年後にはあらゆる場所で多くの人に使ってもらえる治療法としたい」と期待を述べた。

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