これが保険会社のデジタルヘルス・ピッチイベント

メットライフ生命が「アクセラレータープログラム」始動

2016/12/19 04:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 生命保険会社が主催する、デジタルヘルスベンチャーのピッチイベント――。メットライフ生命保険は2016年12月15日、同年11月に開始した「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」で支援するベンチャー企業を選定するためのピッチセッションを、東京都内で開催した。

ピッチセッション後の記念撮影の様子
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 同プログラムは、デジタルヘルス分野のベンチャー企業と連携し、オープンイノベーションを通じて革新的な事業アイデアを創出することを目指すもの。支援先に選ばれた企業には、メットライフ生命の担当者からのアドバイスや、同プログラムを支援するベンチャーキャピタルによるメンタリングを提供。3カ月間にわたり、事業プランの具体化を支援する。メットライフ生命の事業への活用を見据えた業務提携や、アジア地域への事業展開支援なども視野に入れる。

 「保険会社が消費者に提供する価値はこれまで、狭すぎ、貧弱すぎた。がんになったり亡くなったりした際に給付金を払うことが、唯一の価値であるかのように考えてきた。だが消費者は、もっと幅広い価値を通じたサポートを保険会社に望んでいる」。メットライフ生命 執行役 専務 チーフカスタマーマーケティングオフィサーの谷貝淳氏はこう語る。

 同社が11月に始動させたアクセラレータープログラムはこうした視点に立ち、「サービスや体験という観点から、提供価値の拡大を目指すもの」(谷貝氏)。中でも同社が戦略領域と位置付けるヘルス&ウェルネス分野を中心に、革新的なサービスの創出や新しいビジネスモデルの構築に取り組む。そこでは「保険会社が持つ資産だけでは難しい。我々に欠けているのは革新性と敏しょう性、そして新しい発想。ベンチャーの若く尖った発想を持つ人達からの提案に期待したい」(同氏)。

加入者とWin-Winの関係を

挨拶に立ったメットライフ生命の谷貝氏
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 募集テーマは「ヘルスケアサービス」「保険金・給付金の支払・請求プロセス」「医療・介護へのアクセス」の3つ。例えばヘルスケアサービスでは、保険加入者が「病気にならないようにしたり、病気を効率的にチェックしたりすることを支援したい。これにより加入者は病気にならず、保険会社はお金を払わないというWin-Winの関係を築ける」(谷貝氏)。

 プログラムには、ビジネスの視点に立ったメンタリングを提供する「ベンチャーパートナー」として、インキュベイトファンド、アーキタイプベンチャーズ、グロービス・キャピタル・パートナーズ、日本医療機器開発機構(JOMDD)、Eight Roadsの5社が参加。臨床的観点からのアドバイスを提供する「メディカルパートナー」を、NPO法人 医療の質に関する研究会(質研)と河北総合病院が務める。

 2016年11月14日~12月6日に募集を実施。12月上旬に1次選考(書類選考)を行い、10社に絞り込んだ。12月15日のピッチセッションは2次選考(最終選考)の一環で、ベンチャーキャピタル各社との個別面談を経て12月中に支援先5社を決定する。2017年1~3月に支援先へのメンタリングを実施し、同年4月に最終プレゼンテーションを行う予定だ。

「保険会社が得意な文脈」を持ち込む

講演する岩崎氏
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 ピッチセッションには、1次選考の通過企業(企業名は非公開)が登壇した。いずれもデジタルヘルス分野のソリューション、例えば遠隔診療や疾患予防・治療、服薬支援、妊活支援などにかかわるサービスやアプリを提供する企業である。

 続く基調講演には、保険会社向けのアクチュアリー業務などを手掛けるミリマン・ジャパンの岩崎宏介氏(同社 ヘルスケアプラクティス・データアナリティクスディレクター)が登壇。「アクチュアリーの視点からみるデジタルヘルスプロダクトの商品開発」と題して講演した。

 この中で岩崎氏が言及したのが、デジタルヘルスによる保険ビジネスの変革の可能性だ。「保険会社はこれまで、契約時と保険金支払い時にしか被保険者との接点を持てなかった。これからは契約期間中ずっと接点を持つ方向へ向かう。その間のニーズを満たすものとして、従来からのリスクヘッジに加えて新たな柱となるのが、健康増進。不健康な人を加入させない保険ではなく、被保険者を健康にすることで利益をあげるモデルだ。こうした取り組みはコストがかかるため以前はできなかったが、デジタルヘルスの活用によって格段に低いコストで実現できるようになってきた」(岩崎氏)。

メットライフ生命の前中氏
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 イベントの最後には、メットライフ生命 執行役員 経営企画担当の前中康浩氏が挨拶に立った。プログラムに参加するベンチャー企業に対して同社は、サービスやビジネスモデルの構築に当たっての「“文脈の設定”に貢献できる」と同氏は話す。「消費者はお金に関わることは金融機関を頼るかもしれないが、“家族”や“健康”が関わる領域では保険会社との親和性が高まる。ベンチャー企業のエッジの効いたサービスに家族・健康という文脈を設定することで、サービスをスケールさせることができると考えている」(前中氏)。