日本の医療機器開発に提言、東京慈恵医大の大木氏

「起業家やファンド、売却先を充実させてベンチャーを育てよ」

2018/10/30 09:00
河合 基伸=日経 xTECH

 医療機器開発の経験が豊富な東京慈恵会医科大学の大木隆生氏(外科学講座 統括責任者・教授)は、「第2回NEXT医療機器開発シンポジウム」(主催:国立がん研究センター東病院、協賛:日本医療研究開発機構)で「日本の医療機器開発への提言」と題して講演した。「米国に比べて日本は起業家や投資家が少なく、医療機器開発のベンチャーが育ちにくい環境にある」との課題を示しながら、「まだ歴史が浅い分野で十分に挽回できる。将来は医療機器大国になる可能性がある」とエールを送った。

シンポジウムで講演する東京慈恵会医科大学の大木隆生氏
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 大木氏は米国でステントグラフトや脳梗塞予防デバイス、ワイヤレス大動脈瘤圧センサーなどの医療機器を次々と開発してきた。米国では医師のアイデアを具現化する起業家が豊富で、そこに医療系のファンドが資金を提供し、一定の成果を挙げると大手医療機器メーカーが買収する流れができているという。治験や承認の仕組みも整っている。

 米国の学会に多くの起業家が訪れ、医師に「何かアイデアがないか」と話しかけてくるエピソードを紹介したり、米国での医療機器開発に際して「崖から飛び降りなくてもアイデアを具現化できた」と話したりするなど、日本との違いを強調した。

それに対して日本は

 それに対して日本は、アイデアが豊富な医師が多く、最近では治験や承認の環境が整ってきたものの、起業家と医療系ファンド、売却先が少ない課題を挙げた。大木氏は「売却先がなければ起業家は出てこない」として、このままでは日本発の医療機器ベンチャーは育たないと指摘した。

第2回NEXT医療機器開発シンポジウムの様子
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 実際に日本の医療機器の金額ベースの世界シェアが診断系装置では25%、治療系装置ではわずか3%に留まるデータを紹介。「ものづくり大国の日本として寂しい状況だ。米国でも痛感した」と懸念を示した。

 大木氏は日本で医療機器ベンチャーを育てるために、「起業家や医療系ファンド、売却先をどう充実させるかに成否がかかっている」と課題解決を促した。講演後に話を聞くと、今回のシンポジウムの開催や日本企業が医療機器の開発に積極的になっている状況を示しながら、「機運は高まっている。10~20年後には日本が医療機器大国になっている可能性はある」と期待を示した。実際に大木氏は現在、日本の大手企業と医療機器の開発に取り組んでいるという。