時価総額トップ10がこぞって参入、米国デジタルヘルス動向

Kicker Venturesの清峰氏が「デジタルヘルスベンチャー祭り2018」で紹介

2018/03/14 10:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 関連投資が活発な米国のデジタルヘルス業界では今、何が起きているのか――。日経デジタルヘルスが2018年2月5日に開催した『日経デジタルヘルス年鑑2018』発行記念イベント「デジタルヘルスベンチャー祭り2018」では、米国を拠点に活躍するベンチャーキャピタリスト、Kicker Ventures, CEOの清峰正志氏が登壇。「デジタルヘルス最新トレンドinアメリカ」と題し、米国のデジタルヘルス業界の動向について話した。

Kicker Venturesの清峰正志氏(写真:加藤康、以下同)
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ベンチャーとスーパーボウルの類似点とは…

 清峰氏は長く米国を活動拠点とし、2004年からは同国のベンチャー投資に携わってきた。冒頭、今日(米国時間2月4日)は米国にとって大切な日、すなわち国民的イベントであるスーパーボウルの日だと説明。アメリカンフットボールのスター選手であるトム・ブレイディ氏が、プロ入りの際、199番目に指名された選手であることや、そのコーチもプロ選手にはなれなかった人物であることに触れ、ベンチャー企業にも似た点があると話した。つまり「統計的には成功確率が低いが、ハードワークと少しの運で成功する可能性がある」(清峰氏)。

 スーパーボウルは米国社会の事情を知るのにふさわしいイベントだ。例えばテレビコマーシャルなどの広告費用が非常に高額になるため、スポンサーになれる企業は限られる。2016年には米Fitbit社が広告を出し、ヘルスケアベンチャー投資にかかわってきた清峰氏にとっては感慨深かったという。

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 米国のデジタルヘルス業界にとって「2017年は地殻変動が起きた激動の年だった」と清峰氏は振り返る。デジタルヘルスベンチャーへの投資額は過去最高となり、5~6年前の4倍以上に達した。この分野の投資家の数も増えているという。一方、「もう少し成功事例がほしい」(清峰氏)とも話した。

 特に重要な動きとして挙げたのが、FDA(米国食品医薬品局)が2017年7月に「Digital Health Innovation Action Plan」を始動させたことだ。その一環として、デジタルヘルスソフトウエアの承認を迅速化するPre-Certパイロットプログラムを立ち上げた。「デジタルヘルスベンチャーは従来、一般消費者とFDAのどちらにより目を向けるか、どっちつかずだった。FDAが方向性を示したことでベンチャーとVC(ベンチャーキャピタル)の目線が合うようになり、無駄を減らせる」と清峰氏は説明する。

IT企業とベンチャーが先導者

 今回、Pre-Certパイロットプログラムへの参加が認められたのは9社。Apple社、Verily社(Google社の親会社であるAlphabet社傘下)、Fitbit社、Pear Therapeutics社などIT企業が多く含まれ、「IT企業とベンチャーがデジタルヘルス業界の先導者」(清峰氏)であることが読み取れる。

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 例えばApple社は、HealthKitなどのプラットフォーム提供や臨床研究に乗り出しており、時価総額と利用者数で世界一のヘルスケア企業だと清峰氏は話す。Verily社は医療機関と組みさまざまなプロジェクトを立ち上げており、Fitbit社も医療分野の開拓に力を入れている。Pear Therapeutics社は治療用アプリを提供する企業だ。時価総額で見ると、Apple社のほかにもMicrosoft社やAmazon.com社、Facebook社などのトップ10企業がこぞってヘルスケア・医療分野に参入している。

 このほか、製薬企業によるデジタルヘルスベンチャーへの投資、保険会社や病院システムプロバイダーをめぐる買収案件なども増えてきたという。デジタルヘルス周りで「これまで存在しなかったような業界の形が生まれている。医療とテクノロジーとビジネスが渾然一体となり、もはやデジタルヘルスはヘルスケアそのものになりつつある」(清峰氏)。

 米国のデジタルヘルス業界ではこうした地殻変動により、すべてのプレーヤーが横一線といえる状況。必要とされるソリューションもめまぐるしく変化しており、どのプレーヤーも“スーパーボウル”を目指せるとした。