「高齢化という言葉には、先行き不安といったグレーなイメージがつきまとうが、高齢化に伴う課題を解決の上、老後を楽しみにできる生涯現役社会をつくりたい」――。

 経済産業省 商務情報政策局ヘルスケア産業課 課長補佐の富原早夏氏は、2016年1月29日に弘前大学COI研究推進機構が開催した「弘前大学COI ヘルシーエイジング イノベーションサミット2016」において、このように訴えた。

講演する経済産業省の富原早夏氏
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 医療費の増大は、高齢化に伴う大きな課題の一つ。しかし、その1/3を生活習慣病関連が占めていることから、予防・健康管理を手厚くすれば、トータルの医療費は抑制できると富原氏は説明する。予防・健康管理を充実させるために、公的保険内の医療・介護サービス(地域包括ケア)を、保険外の運動、栄養、保健サービスや、農業・観光などの地域産業との連携が補完することが重要という。

保険外サービスや地域資産生かしたサービスが存在感

 保険外サービスの事例として、富原氏は、介護事業者のエムダブルエス日高(群馬県高崎市)などを挙げた。同社はデイサービス事業所に55歳以上の一般住民も利用できるフィットネスブースを併設し、高齢者の予防や、介護を担当する家族の体力づくりなどのニーズに応えている。

 首都圏で産直野菜を販売する「東京マルシェ」を展開しているベンチャーのアグリマスは、2013年に介護予防デイサービス施設の運営を開始。リハビリの専門家が開発したヨガ・プログラムによる機能訓練や、産直野菜を使った食事を提供している。

 農業・観光との連携による健康増進サービスも、全国で多くの事業が始まっている。山形県上山市は豊かな里山を利用し、「気候性地形療法」を取り入れた「クアオルトウォーキング」を開発。日本で初めて、ドイツのミュンヘン大学から、気候性地形療法のコースとして認定を受けた。開催から5年で体験者は30万人を突破したという。

 こうした予防・健康管理ビジネスに取り組む事業者などを、経産省は事業の段階別に支援している。第1段階では、関係者を集める「場」づくり、第2段階では、医療・介護に関するグレーゾーンの解消、第3段階では資金の供給が中心だ。

 ヘルスケア産業は事業者単独での参入が難しく、地域の医療・介護側と連携し、課題(需要)を受け取ることが成功の近道となるため、経産省では「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」の設置を呼び掛けている。現在、全国5ブロック、13府県、8市で設置済み。青森県も設置している。