「医療にはビッグデータよりクオリティデータが必要」(page 2)

経産省の江崎氏、AI活用の可能性と課題を語る

2018/02/05 08:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

マルチファクターに目を向けよ

 日本では対策を打つべき疾患が一昔前とは大きく変化しており、それを見据えた医療政策やシステムが求められると江崎氏は話す。具体的には、感染症のようなシングルファクター(単一因子)の疾患よりも、生活習慣病や認知症などマルチファクター(多因子)の疾患への対策が重要になってきた。マルチファクターであるがゆえに、万人に対する効果が見込める標準治療は通用しにくく、患者の個別状態に応じた医療や「患者の状態を変えることで治療効果を変える」(江崎氏)といった考え方が大切になる。特に、医療費抑制の観点からは、1次予防よりも「2次予防に近いところが重要。その対策によって医療費は劇的に減らせる」(同氏)。

 江崎氏が指摘するようなマルチファクターの疾患の扱いは、AIが得意とするところでもある。その活用に向けては、まずはクオリティデータを集積することが肝心だ。

 江崎氏は、健康・医療分野のクオリティデータを日本で集積する試みとして、経産省が支援するプロジェクト「チーム七福神」の取り組みを紹介した。毎日の糖尿病管理を「七福神アプリ」で支援し、健診の未受診や治療脱落、コントロール不良をなくすことを目指す(関連記事3)。

 このプロジェクトでは既に、8つのコンソーシアムを通じ、総従業員164万人から約1000人分のデータを集積。血糖コントロール改善などの効果が得られており、今後は対象となる総従業員数を300万人に拡大して、約2000人分のデータを集めることを計画している(関連記事4)。

 このプロジェクトでは、生活習慣改善などによって、血糖値だけでなく多くの項目が「芋づる式に改善する」(江崎氏)ことが明らかになってきた。「どれだけデータを集めても、それが社会実証につながらなければ活用はできない。今回のプロジェクトでは先に(社会実証という)電車をつくる」と江崎氏は意気込みを語っている。

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