FreeStyleリブレ、医師が赤字じゃ普及せず?

来春の診療報酬改定での点数アップに期待集まる話題の新製品

2017/12/25 15:00
古川 湧=日経メディカル
出典: 日経メディカルOnline,2017年12月25日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 2017年1月に発売されたフラッシュグルコースモニタリングシステム(FGM)のFreeStyleリブレ。糖尿病患者がいつでも非観血的に血糖値を測定できるという新製品で、新聞にも取り上げられるなど一般人の間でも話題になっている(日経デジタルヘルスの関連記事)。今年9月に保険適用となり普及に弾みがつくと予想されたが、実際には医療機関側の持ち出しになるため、導入に躊躇するケースが多いようだ。

写真1  FGMのFreeStyleリブレ(写真提供:アボットジャパン)。本体(写真右)の下部に血糖測定用の電極を挿入して、観血的な血糖自己測定器としても使用できる。センサー(写真左)を上腕の後ろ側に装着する
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 FGMとは、腕部に装着した500円玉大のセンサーに本体をかざすと、血糖値が本体画面に表示されるという医療機器だ(写真1)。センサーを装着すると針(フィラメント)が皮下組織に挿入されたままの状態になり、フィラメントの先でグルコース濃度が測定される(図1)。間質液中のグルコース濃度が血糖値と相関することを利用し、血糖値の変動をシミュレートする。使い捨てのセンサーは、装着したまま入浴や運動も可能。14日間続けて使用できるので、14日間の血糖値の推移を途切れなく知ることができる。

図1 グルコース濃度の測定原理(出典:製品パンフレット、表1とも)
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 センサーは1分ごとにグルコース濃度を測定し、15分ごとに測定値を記録する。測定値を確認するにはセンサーに本体をかざす必要があるが、測定値はセンサー内に8時間保存されるので、就寝前と起床時に測定すれば睡眠中の血糖値を知ることができる(8時間を超えると古い記録から順にデータが消える)。南昌江内科クリニック(福岡県福岡市)の南昌江氏は「これまで睡眠中の低血糖などを拾い上げることは難しかったが、FGMによって容易になった」とメリットを挙げる。これまでも持続血糖測定器(CGM)を使用すれば夜間低血糖の発見は可能だったが、数十万円と高額なため導入にはハードルがあった。

 FGMでは、測定値のデータのやり取りに交通系ICカードなどで使われる非接触通信技術(フェリカ機能)を使用して、コストを抑えたのが特徴だ。ちなみに、海外ではAndroidスマートフォン用の公式アプリが存在し、フェリカ機能を搭載したスマートフォンにインストールすれば本体のように使用することができる。残念ながら日本語版の公式アプリは公開されておらず、公式アプリ以外のサードパーティ製アプリ(開発元・販売元ではない企業が作成したアプリ)もあるが、販売元のアボットジャパンは動作を保証していない。

 非観血的に血糖値を測定するFGM機器は、日本ではFreeStyleリブレのみだが、海外では米シグナス社のGlucoWatch G2 Biographerがアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けている。この他、英メディワイズ社はGlucoWiseという製品を開発中で、日本ではライトタッチテクノロジー社が試作機の開発を目指している。また、ある世界的な大手医療機器メーカーも公表していないがFGM機器の開発を進めている。2018年以降、日本でも複数の製品がしのぎを削ることになりそうだ。

本体とセンサーは医療機関の持ち出しに

 FGMは今年9月に保険適用となり快進撃を続けているが、導入が進むにつれ、実際に患者に保険診療で使ってみると医療機関側の持ち出しになるケースがほとんどであることが分かってきた。

 まずFGMの機器本体は特定保険医療材料に設定されておらず、保険償還価格は設定されていない。保険請求できるのは技術料のみで、2018年度の診療報酬改定で点数が設定される見込みだが、それまでの間は、準用技術料として血糖自己測定の実施を評価する診療報酬項目の「血糖自己測定器加算」が適用される。

 点数は「月20回以上測定する場合」の400点から、「月に120回以上測定する場合」の1500点までの6段階。患者が1型または2型糖尿病で、インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬を自己注射していることが条件となっている。

表1 センサーと電極セットのメーカー希望小売価格一覧
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 機器本体のメーカー希望小売価格は7089円。使い捨てのセンサーは単独では販売されておらず、観血的な自己血糖測定(SMBG)に使用する際の電極とセットでしか購入できない。センサーと電極のセットの価格は、電極の枚数とは無関係に、センサー2個で1万3800円となっている(表1)。

 前述の通り、本体やセンサー・電極には保険償還価格が設定されていない。保険で適用する場合は全て病院側の負担になるが、「月に120回以上測定する場合」の1500点を技術料として算定しても、本体料金を含めると初回は赤字になる。本体は使い捨てではないので、2回目以降はセンサーと電極のセットを購入するだけで1500点を算定できるが、それでも利益はわずか。本体をレンタルではなく譲渡するとすれば、1人の患者が6カ月継続使用して、ようやく本体代金を回収できる計算だ。

 また2型糖尿病の場合、血糖自己測定器加算で算定できるのは最大でも「月に60回以上測定する場合」の860点なので、2型糖尿病の患者にFGMを1カ月間使用すると、本体をレンタルしたとしても1人当たり数千円の赤字が生じる。

FGMを薬局で買える環境づくりを

 収益性はさておき、FGMの有用性に期待する医師は依然として少なくない。患者が好きなタイミングで血糖値を何度でも測定できるので、食後に血糖値が上がっていたら散歩をしたり、インスリンの量を調節するといったことが患者の判断でできるようになるからだ(日経メディカルOnlineの関連記事)。

 南氏のクリニックでは、重症低血糖を経験してインスリン増量に恐怖心を抱き、血糖値が高止まりしている1型糖尿病の患者がいた。FGMはインスリン注射後の低血糖を早期に発見できるため、導入してからは患者の不安が解消され、安定してHbA1cを下げることに成功したという。

 また、冒頭で紹介したように新聞などでも取り上げられたことから、患者側の関心も高まっている。糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI(名古屋市天白区)院長の戸崎貴博氏は、日本での発売前から患者が個人輸入して使用しているケースがあったという。「現在も、自費でもいいので使用してみたいとFGMを求める患者もいる」(戸崎氏)。

 患者側のニーズは高いが、収益性の面で導入に二の足を踏む医療機関が多く、結果として使用できない患者が多数存在している状況だ。来春の診療報酬改定で、少なくとも医療機関側が赤字にならないような点数が設定されるか、それが無理なら、SMBG用機器と同様に、センサーも含めて薬局などで患者が購入できるような供給体制になることを期待したい。

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