凸版が健康診断用プリペイドカードを手掛けたワケ

経産省のグレーゾーン解消制度受け、「健康」事業に切り込む

2016/11/14 16:15
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス
 「家族や大切な人に健康でいてほしいと思う。そんな気持ちをギフトカードにした」――。

 凸版印刷は日本初となる健康診断の支払い専用プリペイドカード「からだ健診ギフトカード」の提供を2016年11月10日に開始した。プリペイドカードは三井住友カードが発行し、凸版印刷が事業を運営する。

からだ健診ギフトカード 3万円分(左)と1万円分(右) (凸版印刷のニュースリリースより)
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 健診用プリペイドカード誕生の背景には、2015年末に経済産業省が発表した健康診断受診時の「グレーゾーン解消制度」がある。この発表で、健康診断を受診した際にプリペイド式のギフトカードを決算手段に使用できることが明らかとなり、今回のプリペイドカード誕生に至った。

凸版印刷 西日本事業本部 関西生活・産業事業部長の奥山卓二氏
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 今回発表したからだ健診ギフトカードは、ドラッグストアで購入後、契約施設で実施するがん検診や各種人間ドックの支払いに利用できる。現在、関東・関西の1都2府8県の60施設と契約しており、同地域内のココカラファイン ヘルスケアおよび富士薬品が運営するドラッグストアでカードを購入することができる。運用地域は、「今後拡充していく」(2016年11月9日に開催された商品発表会に登壇した、凸版印刷 西日本事業本部 関西生活・産業事業部長の奥山卓二氏)という。
「からだ健診ギフトカード」利用イメージ(凸版印刷のニュースリリースより)
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主婦や退職者の受診率を懸念

 からだ健診ギフトカードの一番の狙いは、健診受診率を向上させること。家族からギフトカードの形で健診をプレゼントされれば、「受診してみようと思うのではないか」(奥山氏)。

 厚生労働省の2014年の調査によると、過去1年間に健診を受けていない人は男性27.8%、女性37.1%。特に主婦や自営業者、退職者の受診率が低いという。「会社に属さず、健診が義務付けられているわけではないため、受ける機会がないのではないか」と奥山氏は推察する。

 諸外国と比べても、日本の受診率の低さは際立つ。厚生労働省の2013年の調査によると、子宮頸がんや乳がんの検診受診率は、米国や英国が60~80%の受診率なのに対し、日本はどちらも50%に届かない。

日本人間ドック健診協会 理事で医療法人社団同友会 理事長の髙谷典秀氏
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 発表会に登壇した日本人間ドック健診協会 理事で医療法人社団同友会 理事長の髙谷典秀氏は、全体の受診率の低さだけでなく、何年も健診を受けていない人がいることも問題視する。「日本では、受ける人は受け、受けない人はほとんど受けないという傾向が大きくみられる」(髙谷氏)。たとえ受診率が50%でも、さまざまな人が数年おきに受けている場合と、毎回同じ人が受けている場合ではその数値の意味合いが変わることを指摘した。

 髙谷氏は、定期的に繰り返し健診を受けている人と何年もまったく受けずに初めて健診を受けた人の乳がん検診結果の比較を例に挙げた。「がんの発見率は繰り返し受診者が0.18%、初回受診者が0.36%と、定期的に受診していない分、初回受診者は高い確率でがんが発見されることがわかる」と髙谷氏は話す。

 がんを早期のうちに発見できた割合は、繰り返し受診者が83.1%、初回受診者が73.7%。「定期的に受けていない場合、進行した状態で発見される確率が上がることが確かめられた」(髙谷氏)。

 健診や人間ドックは、常に新しい知見に基づいた検査を実施している。デンスブレスト(高濃度乳腺)の女性に対しても高精度な乳がん検診ができるよう、マンモグラフィーだけでなく超音波を使った検査を取り入れているのもその1つ。「疾病の早期発見、さらには健康寿命の延伸のためにも定期的に健診を受けてほしい」と髙谷氏は呼びかけた。

一般向けヘルスケア事業の先鋒へ

凸版印刷 専務取締役 人事労政本部長および秘書室 法務本部 文化事業推進本部担当の大久保伸一氏
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 凸版印刷が今回の事業に乗り出したのは、昨年10月の健康経営宣言で掲げた、健康関連事業を通じて世の中の人の健康づくりに貢献するため(関連記事)。同社としては、今回のからだ健診ギフトカードをヘルスケア事業の大きなテーマとして推進していく考えだ。凸版印刷 専務取締役 人事労政本部長および秘書室 法務本部 文化事業推進本部担当の大久保伸一氏は、「新たな商品やサービスを通じて健康で安心できる社会づくりに貢献したい」意気込んだ。

タレントの関根麻里氏
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 発表会にはタレントで一児の母の関根麻里氏が登場。出産前は定期的に人間ドックを受診していたが、「子育てをしていると自分のことは後回しになる」(関根氏)といい、健診に行くタイミングがつかめないことを打ち明けた。一方で、子供や家族のためにも「まず自分がしっかり健康でいないといけない」と気を引き締めた。

 父でタレントの関根勤氏がテレビ番組の企画で人間ドックを受診し、病気の発見につながったことに触れ、次のように振り返った。「症状が出る前に発見できたので、すぐに対処することができた。健診の大切さを改めて感じた」(関根氏)。今回はテレビ番組の企画で発見することができたが、「からだ健診ギフトカードも健診を受けるきっかけになるので、大切な人に贈りたい」(関根氏)と話した。