本庶氏の会見、日本の製薬企業に対する懸念にも言及(page 3)

「PD1ノックアウトマウスの実験が転機に」

2018/10/02 11:00
久保田文=日経バイオテク
出典: 日経バイオテクONLINE,2018年10月2日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

――近年、ライフサイエンス分野の研究費は出口志向だと指摘されている。
 「ロケットはそれなりのデザインがあって、ある目標に向かってプロジェクトを組めるが、生命科学はそもそもどういうデザインになっているか十分解明されていない中で研究している。デザインを組むのが難しい中で、応用ばかりやると大きな問題が生じると思っている。何が正しいか、何が重要か、分からないのに、この山を攻めようと決めるのはナンセンス。できるだけ多くの研究者がたくさんの山を踏破して、何があるのか理解した上で、どの山が重要なのか、まずは探ってみるのが先決だ」

 「その意味では、応用のために大きな1つの山にかけるよりも、基礎も含めてもっと多くの山にばらまくべきだと思う。もっとも、1億円を1億人にばらまいても意味がない。せめて10人ぐらいに渡して、10つの山を追求した方が生命科学は期待が持てる。中でも若い研究者にもっとチャンスを与えるべきだ」

――研究で心がけていること、大切にしていることは。
 「2つある。1つは、自分が何か知りたいという好奇心、もう1つは、簡単に信じずに自分の頭で納得できるまで考えることだ。いつもメディアは、Nature誌やScience誌に出た研究成果をすごいすごいと書きたてるが、10年後にはそのうち9割が嘘だと分かる。残るのは1割で、実際そうなっている。書いてあることをうのみにせずに、自分の目で確信できるまで、自分の頭で納得できるまで考えることが重要だと考えている」

――酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)の発見などで知られ、生化学分野で数多くの業績を挙げた京都大学の早石修名誉教授(故人)の研究室出身だ。
 「早石先生は戦後長く、米国で研究されて、京大に帰ってきて日本の生化学の新しい基礎を作られた。全国から学びたい学生が集まったが、そこから、業績を上げた多くの研究者、弟子が育った。私にとって一番大きな影響があったのは、『サイエンスは国際レベルで語らない限り意味がない』ということを教えてもらったことだ。国際的に自分の研究がどういう位置にいるか考えていない研究は単なる自己満足に過ぎない。それが若い時の研究の一番の基礎になった」

――京都大学だけでなく、神戸医療産業都市推進機構の理事長も務めている。
 「京都大学では、抗PD1抗体が効かない患者のメカニズム解明や、新規の癌免疫療法の開発を行っている。神戸にもラボを持っているが、そこではPD1のブレーキをさらに強化して、アレルギーや自己免疫疾患の治療に使えないかという研究を進めている」

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