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IT活用で医師・患者・病院のすべてに利益

米国ルイジアナ州の医療機関Ochsner Health Systemの取り組みを聞く

2018/09/03 10:30
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 スマートフォンやウエアラブル端末を駆使し、医療者同士のコミュニケーションや電子カルテへのアクセス、患者状態のモニタリングや退院後の支援を行う――。米国ルイジアナ州の医療機関Ochsner Health System(以下、Ochsner)は2年ほど前から、傘下の20の病院や90を超える診療所でそうした取り組みを進めてきた。

Ochsner Health SystemのMilani氏
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 この結果、ケアの質の向上や医療者の働き方改革を実現し、病院経営にもプラスの効果が出始めた。医療提供の効率が高まったことで、診療可能な患者数が従来比で約25%増加。Ochsnerは収益の約2.5%をデジタル関連に投資しているが、こうした効率改善により、全体の利益率はデジタル活用で高まったという。

 OchsnerのChief Clinical Transformation Officerを務め、自らも医師であるRichard V. Milani氏にこうした取り組みについて聞いた。

医療ミスの80%がコミュニケーションエラー?

 グループで年間100万人規模の患者を診るというOchsnerがデジタル活用に舵を切ったのは、医療者の情報共有やコミュニケーションのあり方に課題を感じていたことが大きい。「医療機関では一般に、医師の時間の25%近くがコミュニケーションに割かれ、患者のケアに充てられる時間は50%に満たない。医療ミスの約80%が、コミュニケーションがタイムリーに行われていないことによるとの統計もある」とMilani氏は話す。同氏によれば、米国の500床規模の病院では、医療者のコミュニケーションの非効率さによって年間400万米ドルもの損失が発生しているという。

 こうした背景から、Ochsnerでは医療者がどこにいても、手軽に情報を共有できたり、電子カルテや検査結果、患者のバイタルサインなどにアクセスできたりする環境づくりに力を入れた。これらすべてに、iPhoneやiPad、Apple Watchといった米Apple社の端末や、各種のモバイルアプリを活用する。

 まずは、医療者同士の日常的なコミュニケーションを、スマートフォンを主体とするものに変えた。「PHSを使っていた時代は音声通話だけのやり取りだったが、スマートフォンでは情報をテキストでやり取りでき、看護師が撮影した(患部の)写真なども簡単に添付できる。これによって、コミュニケーションの効率が格段に高まった」(Milani氏)と説明する。

 電子カルテなどの医療情報にどこででもアクセスできるように導入したのが、電子カルテ大手の米Epic Systems社が提供するモバイルアプリ「Epic Haiku」と「Epic Canto」だ。Epic Haikuはスマートフォン向けのEHR(Electronic Health Record)アプリで、医師がどこにいても電子カルテの情報をiPhoneで閲覧できる。Epic CantoはiPad向けのアプリで、電子カルテや検査画像、バイタルサインなどを確認したり、情報を書き込んだりすることができる。

 OchsnerはEpic Systems社やApple社と協力し、患者の検査結果や診断結果をApple Watchに通知する仕組みも構築した。この方法であれば、医師が急いで知りたいと思う患者の検査や診断の結果を、手術中などでも手元のApple Watchで確認できる。

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