これが「ソニーの介護」第2幕

“ソニーらしさ”や“浦和を選んだワケ”に迫る

2017/04/26 05:00
小口 正貴=スプール

 2017年5月1日、新たな“ソニーの介護”がさいたま市浦和区にオープンする。「ソナーレ浦和」だ。ソニー・ライフケアの100%子会社であるライフケアデザインが運営する介護付き有料老人ホームである。2016年4月に開所した「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」(東京都世田谷区)に続くソナーレシリーズの2棟目となる(関連記事:これが「ソニーの介護」、いよいよ初の有料老人ホーム)。

ソナーレ浦和の外観
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関係者を交えてテープカットが行われた。左から2人目が土地を提供した吉野医院 院長の吉野雅武氏
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 オープンに先立つ2017年4月11日、プレス内覧を兼ねた開所式が盛大に行われた。今回の土地を提供したのは、創業100年来となる地元の開業医「吉野医院」。ソナーレ浦和は敷地内に新装された吉野医院を併設し、介護とともに医療体制の充実を図っている。

 ライフケアデザイン代表取締役社長の出井学氏は、「『吉野先生が協力するならば、ぜひうちも協力したい』という声をもらい、開業前から9つの医療機関と提携できることになった」と語る。こうして足元を固めた上で、QOL(生活の質)を追求する事業コンセプト「Life Focus」をホーム運営の柱に据えた。

 Life Focusはソナーレシリーズの中核コンセプトで、高品質な身体的ケアと精神的ケアを両立させ、“終の棲家”として入居者に満足の行く余生を送ってもらうための考え方だ。出井氏は「手厚い人員配置や看護職の24時間常駐、栄養士による食事管理、看取りケアは当たり前のこと。そこに我々はiPadを駆使して介護の品質を見える化し、全員がヒストリカルに介護記録を共有することで品質を担保している」と話す。その結果は、1年前に開所したソナーレ祖師ヶ谷大蔵の1.05%という非常に低い入院率となって現れた。

事業説明を行ったライフケアデザイン代表取締役社長の出井学氏
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3階と4階に設けられた小型のラウンジ。リラックスしたくつろぎの空間で、インテリアに溶け込むソニー製のグラススピーカーを設置する予定もある
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なぜ「浦和」だったのか?

 地上5階建ての瀟洒なホームは、浦和駅東口から徒歩7分と好立地にある。居室数は66室で大小7種類を用意した。原則として入居時に満65歳以上で、要支援・要介護の高齢者が対象だ。居室タイプは1人入居の18平米が54室と最多で、このタイプの月額利用料(前払いなしの場合)は要介護3で38万5720円。決して安くはないが、実はここにこそ、浦和に開所した理由があるのだと出井氏は解説する。

最も多いAタイプの居室(4階)。窓から浦和駅東口の浦和PARCOが見える
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 「浦和駅前には7000万~8000万円のマンションが建設されているにもかかわらず、最適な価格帯の老人ホームがない。例えば東京都杉並区では1000万円以上の入居金を求めるアッパーミドルクラスの有料老人ホームが数多くあるが、浦和には1棟しか存在しない。

 これは“浦和は介護銀座”との事業者の思い込みによるもので、過当競争地域を勝ち抜くために低価格のホームが乱立されてきた結果だ。“鎌倉文士に浦和画家”の言葉があるように、古くから文化にあふれた文教都市だというのに高齢者住宅の観点からすると物足りないエリアだと感じていた。

 そこで我々はLife Focusのコンセプトとともに、新しいサービスをこの地で提供したいとの思いから浦和を選定した。介護業界は慢性的な人材不足で、ホームが完成しても開業できないなどの例もあるが、ソナーレシリーズではコンセプトに共鳴してもらった結果、募集定員に対して3.5倍以上の応募がある。早い段階で浦和の地に溶け込みたいと考えている」(出井氏)。

Aタイプにある洗面所。高さを自動で調整できるため、車椅子生活になっても不便はないという
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室内トイレのドアは斜めに設置。45度にすることで、2人介助になったときでも両方から介助ができる仕組み
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肉じゃがを流動食にすると…

 QOLに関してのこだわりで特筆すべき点は、スリープマネジメント(睡眠の質の担保)の導入と、ケアフードへの取り組みだ。スリープマネジメントに関しては「人生にこだわるのだから、寝ている時間にもこだわる。体の時間を地球の流れに合わせ、サーカディアンリズム(体内時計)を意識した生活を提供したい」(出井氏)との観点から注力する。

 各居室の介護ベッドはドイツ製で、体圧測定に基づいてマットレスの固さを1人ひとりに合わせてカスタマイズ。褥瘡(床ずれ)ができず、しっかりと睡眠してもらえる体制を整えた。

スリープマネジメントに注力。マットレスの中身は体にあわせて固さを変えている
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 ケアフードは咀嚼・嚥下が困難な入居者に対する流動食を意味する。例えば肉じゃがを流動食にする場合、単純にすりつぶしてミックスすると「咀嚼した後の味」(出井氏)がするのだという。「ケアフードは1品ずつミキサーにかけるため、ニンジンはよりニンジンらしく、じゃがいもはよりじゃがいもらしい味になる。ピューレ、ジュレ状にして肉じゃがのセットアップができる。これもLife Focusに通じる1つの提案だ」(出井氏)。

「ソニーらしさ」は家電と生保から

 “ソニーらしさ”に関しては、「他社がやっているからやるわけではない。ゼロベースでいろんなことを発想して、ソニーグループのオリジナリティーを出していく」(出井氏)との姿勢が根幹にある。居室内は居住者の状況に応じて可変性を意識した設計となっており、その点には「ハードメーカーの流れをひいている。やはりハードウエアにはしっかりとこだわっていきたい」(出井氏)とアピールする。

 また館内にはコミュニケーションロボットとして修理済みのAibo(アイボ)が常駐し、大浴場では4K対応の大画面テレビ「ブラビア」で季節の映像などを楽しむことができる。そこかしこにソニーらしさが見え隠れする。

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4Kの大画面テレビ「ブラビア」を鑑賞しながら入浴できる大浴場
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 一方、家電のソニーではなく、ソニー生命から受け継いだソニーらしさとして特徴的なのがライフマネージャーの存在だ。ケアマネジャーとは別に入居者の“自分らしい生活”を支えるサポーターであり、先述した睡眠ケアをはじめとする生活提案などを行う。

 入居者の歩んできた歴史をヒアリングし、小綺麗な1枚のシートにまとめた「ライフパネル」は、まさにその象徴である。有料のオプションサービスではあるが、「ケアワーカーが入れ替わっても、ライフパネルがあればどんな人生を歩んできたかがひと目でわかる」(出井氏)ことから、今後は一定化したサービスメニューとして組み込むことも考えている。

ソナーレならではの「ライフパネル」。個人史をきれいにまとめた
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今後の展開は…

 ホーム内には入居者用の理美容室も備え、1階のグランドダイニングには立派なグランドピアノを設置。ソナーレ祖師ヶ谷大蔵同様、地域に開かれた場所として共用部を活用してもらうことを予定している。「閉じこもると社会性を失ってしまい、メンタルの衰えにつながる。最初から地域につながることを目的にしたわけではないが、Life Focusを突き詰めたら場を有効活用したほうがいいとの考えに至った」(出井氏)。

ホーム内には理美容室もある
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ダイニングに置かれたグランドピアノ
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 今後の新設に関しては、「いたずらに量を求めずに質を担保していく。当面は年に1、2棟のペースだろう」と答えた出井氏。高齢者住宅の世界でもソニーらしさが花開くのか、これからの動きにも目が離せない。

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記事初出時、2ページ目で1カ所「出井氏」の表記が間違っていました。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。