高速バス事故の悲劇、IoTと健康経営で防げ

WILLER EXPRESS、ウエアラブルで運行安全強化

2018/02/15 12:30
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 2012年4月に関越自動車道で起きたツアーバス事故、長野県軽井沢町での2016年1月のスキーバス転落事故…。悲惨なバス事故が後を絶たない中、バス運行会社にとっては安全管理の強化が待ったなしの課題だ。

 高速路線バス事業を手掛けるWILLER EXPRESS JAPANはここにきて、IoT(Internet of Things)を活用した運行支援やバス運転手の健康管理支援に本腰を入れている。その一環として乗務員用の宿泊施設「新木場BASE」を同社東京本社(東京都江東区)内に新設。2018年2月上旬、報道機関に公開した。

WILLER EXPRESS JAPAN東京本社内のバス駐車場。奥に見える建物が「新木場BASE」
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WILLER EXPRESS JAPAN 代表取締役の平山幸司氏
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 説明会にはWILLER EXPRESS JAPAN 代表取締役の平山幸司氏が登壇し、高速バス運行における安全管理への取り組みを紹介した。WILLER EXPRESSは2015年7月、東名阪自動車道で高速バス事故を起こしている。この事故そのものは居眠りや健康起因のものではなかったとするが、事故を誘発する要因を減らすために同社は「健康診断ではなく健康管理という視点から乗務員の健康増進に取り組んでいる。IoTなどの技術による運転サポートにも力を入れる」(平山氏)。

 走行中の運転手の脈波を計測し、疲れや眠気の予兆を検知して本人に知らせる――。同社はそんな機能を備えた富士通のウエアラブルセンサー「FEELythm(フィーリズム)」を2016年に導入し、バス運転手に装着させている(関連記事)。事故による車両損傷額が、導入前に比べて74%減少するなどの効果があった。

 ネットワーク型の車載ステーションを活用した、24時間体制のモニター管理も実施している。運転中車両の撮影動画を、運行管理者が遠隔でリアルタイムに確認できるシステムだ。FEELythmとも併せて運転手の眠気や車両のふらつきなどの危険を察知し、必要な場合には運転手に休憩などの指示を与える。2017年冬には白線認識などの運転支援機能を備える新型車両も試験導入しており、2018年春から本格的に活用していく。

健康起因の事故に一手

 普段からの健康管理支援に関しては、合弁会社を含め500人近くが在籍する運転手に対して、「脳ドック」「心不全診断」「眼底検査」「睡眠時無呼吸症候群スクリーニング検査」という4種類の健診を実施。対象年齢もここにきて広げている。例えば脳ドックは、従来は40歳以上の乗務員を対象にしてきたが、2017年からは20代を含めて全員を対象とした。

 同社に脳ドックを提供しているメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック院長の知久正明氏は、バス運転手は緊張や疲労、眠気に襲われて事故を起こしやすい環境にあり、タクシーやトラックの運転手と比べても事故発生リスクは高いと指摘する。運転手が走行中に脳血管疾患を発症することによる事故も増えているという。「脳動脈瘤が破裂し、くも膜下出血を起こして意識を失うと、車両を路肩に停止させることさえできなくなる。運転手の脳疾患を事前に見つけることが大切だ」(同氏)。

新木場BASE内のカフェテリア
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出発前の乗務員に対しては呼吸中のアルコール濃度検査などを行う
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 健康管理支援の一環として新設した「新木場BASE」は約80室を備える宿泊施設。地方からの夜行便の運転手などに睡眠や食事の場を提供する。

 個室や浴室、シャワールームのほか、カフェテリアを設置。会社契約アパートなどに宿泊する場合にはコンビニ弁当で済ませることも多いというバス運転手に、健康を意識した食事を提供する。メニューは日替わりで「エネルギー500kcal台、塩分3g未満、野菜量約230g」などを意識した内容。各メニューには栄養成分を表示し、健康管理への意識を醸成する。