VRで不安障害の治療を、恐怖を感じる状況を再現

東京に続いて名古屋と横浜の医療機関にも導入予定

2019/01/30 07:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 「飛行機に乗ることを想像しただけで動悸がしてパニックになる」「鉛筆の先など先端がとがったものが視界に入ると怖くてたまらない」――。

 これは、特定の物や状況に極度に不安を感じ、発汗や動悸、めまいといった身体症状が現れる精神疾患である不安障害の一つの症状だ。パニック障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、高所恐怖症などの不安障害を抱える人は国内に500万人ほどいるとされる。

 そんな中、デジタルヘルスベンチャーの魔法アプリは、VRを使って不安障害の治療を行うソフトウエアの開発を進めている。同社が着目したのは、不安障害に対する心理療法の一つである暴露療法。あえて患者が恐怖を抱いている物や状況に直面させることで、過剰反応を緩和する治療法だ。

 実は、暴露療法を臨床現場で行うことは容易ではなかった。なぜなら、飛行機に対して恐怖を感じている場合は飛行機に乗らなくてはならず高額な費用がかかるなど環境を整えるのが難しい場合があるからだ。

魔法アプリ 代表取締役の福井健人氏
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 そこで魔法アプリは、VRを活用して患者が恐怖を抱く状況を再現しようと考え、暴露治療補助ソフトウエア「Virtual Reality Exposure System」の開発に着手した。これまでに雷恐怖症用のソフトウエアを開発している。VR空間上に雷を再現することで「動画や画像を使うよりも治療効果があるのではないか」と魔法アプリ 代表取締役の福井健人氏は期待する。

 このほか、バスや電車を再現したコンテンツも開発しているという。Virtual Reality Exposure Systemは既に赤坂クリニック(東京都港区)で使われており、2019年3月からは名古屋と横浜の医療機関にも導入される予定だ。

 さらに、VRを使った暴露療法を行っている際に患者が感じている不安を数値化するシステムの開発も進めている。センサーを使って発汗量や心拍数、体温、呼吸リズムを測定し、不安を見える化しようと考えている。

 実は、“VR暴露療法”は海外を中心に研究開発が行われていたが、国内企業による開発がほとんど行われていなかった。そのため国内でVR暴露療法を受けられる医療機関はわずか1施設しか存在しなかった。Virtual Reality Exposure Systemの開発を進めることで、「国内の多くの医療機関にVR暴露療法を広めたい」と福井氏は意気込む。

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