医師や訪問看護師が患者宅に入ると、ID/パスワードを入力することなく自動的に多職種連携ネットワークに接続。利用者の閲覧資格に応じた患者情報などが自動的に表示される――。こうした技術を、別府市医師会と富士通研究所、富士通が開発。別府市内での実証を実施した。

患者宅に入ると、当該患者の情報画面(SNS機能)が起動する。それ以外の場所でアクセスした場合は、患者選択画面の表示となる。
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 在宅医療現場で使用する多職種情報共有ネットワークを利用するには、セキュリティーを担保するために利用者IDや患者ID、パスワードなどの入力操作が求められる。また、誰が、いつ、どこで、どの範囲の情報にアクセスできるかなど、取り決められた情報管理のルールに従い確実に運用する必要がある。患者宅での多職種情報共有ネットワークへのログイン操作が煩雑であるがために、現場での利用率の低下につながることも多い。

 こうした課題を解決する手段として開発したのが、今回の技術である。具体的には、利用者が端末に近づくと自動的に情報にアクセスできる。しかも、利用者の役割に応じて、アクセスできる情報が自動制御される。訪問診療・看護時には当該患者の情報を自動的に表示し、退去時には自動でアプリケーションを終了し、ログアウトする。

 今回、この技術を富士通の地域医療ネットワーク「HumanBridge EHRソリューション/在宅ケア」に適用、別府市医師会が運営する「ゆけむり医療ネット」で実証実験を実施した。富士通は、2017年中に同技術を活用した訪問診療システムの製品化を目指す考えだ。

核は「コンテキスト・スイッチ技術」

富士通研究所の森田氏

 今回の技術の核となるのは、富士通研究所 IoTシステム研究所が開発した「コンテキスト・スイッチ技術」と呼ぶモバイルアプリ制御技術。特定の場所、人の役割、時間、スケジュールなどの条件に応じて、必要なアプリケーションやサービス、データをモバイルデバイスなどにプッシュ配信する技術である。「単にメッセージをプッシュするだけでなく、モバイルアプリを組み込んだり、起動したりできる。その際にセキュリティーポリシーとセットにして、動き回る人の行動に応じてIT側が合わせるヒューマンセントリックな仕組みで、利便性と安全性を両立できる」(富士通研究所 IoTシステム研究所所長の森田俊彦氏)。

 この技術を、HumanBridge EHRソリューション/在宅ケアへ適用することによって、利用者の役割、利用場所に応じて、患者の医療情報の表示や非表示、共有範囲、利用するアプリケーションを自動的に変更できるようにした。

モバイルアプリケーション制御技術を在宅医療・介護連携システムに適用
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 実装した機能の特徴は、(1)ポリシー管理機能、(2)ポリシー制御機能の2点。(1)は、医師・訪問看護師・薬剤師などが、いつ、どこで、どのような範囲の医療情報へアクセスできるか定義したポリシーを、管理者があらかじめ一括して設定・管理できる機能。(2)は、利用者が持つ資格識別ビーコンや患者宅に設置したビーコンの情報と、(1)で設定したポリシーに基づいてアプリケーションや提示する情報を自動的に切り替える機能である。