住むだけで“都市ストレスから解放される”家

光と音、匂いで森を再現

2019/01/18 12:00
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 都市ストレスから解放される――。そんな住宅「xevoGranWood 都市暮らし森が家コンセプトモデル」を大和ハウス工業が2019年1月17日に発表した。同年1月19日から品川シーサイド展示場で展示および販売を開始する。

予防医学研究者の石川善樹氏(左)と大和ハウス工業 上席執行役員の林直樹氏(右)
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 今回発表したのは、50~75歳世代をターゲットにした3階建ての木造モデルハウス。開発には予防医学研究者の石川善樹氏が携わり、人生100年時代を見据えて、都市部に住むことで感じる心身のストレスを軽減することに主眼を置いた。

 実は、「50歳代以上の世代で都市部に3階建ての住宅を購入する人が増えている」と大和ハウス工業 上席執行役員の林直樹氏は言う。都市部は地価が高いため、敷地面積を小さくして3階建ての家を建てる傾向があるようだ。

 この世代は、「仕事や健康、人間関係などにさまざまな変化が起こる」と石川氏は指摘する。25~50歳の人が家族を扶養するために働くのに対し、50~75歳の人は自分自身の健康のために働き方を変えるなどの転換期を迎えるというのだ。

 今回着目した都市ストレスとは、人工物に囲まれた都市に住むことで心身が感じるストレスのことである。これを軽減するために、家の中に森を再現しようと考えた。

 森を再現することにしたのは、事前の実証実験から、森の中にいることで都市ストレスを軽減できることが明らかになったからだ。都市部と森のそれぞれを再現した部屋を用意し、各部屋で10分間過ごした時の脳波を測定したところ、森の部屋で過ごした人の方が「ストレス度が14%低いことが分かった」と石川氏は言う。

 さらに、各部屋に入った前後で認知テストを実施したところ、都市部の部屋に入った人は入室前後で結果に変化は見られなかったが、森の部屋に入った人は正答率が13%上昇した。これを受けて、森の類似環境を家の中に整えることで都市ストレスを軽減しようと考えたのだ。

モデルハウスの1階。黒を基調とした落ち着いた空間にすることで、オンとオフを切り替えてもらうことを狙っている(提供:大和ハウス工業)
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自然界のゆらぎを再現

 体が都市ストレスを感じる理由の一つが、「常に一定の刺激を受けること」と石川氏は話す。例えば、1日に浴びる光を考えると、都市部は照明を使って常に一定の明るさが保たれているのに対し、自然界では時間とともに太陽光の強さが変化する。過去の研究から、人は1日中同じ光の中で暮らすと体調を崩すことも分かっている。つまり、一定の刺激が与えられる空間よりもゆらぎが生じる空間の方が人は心地良く過ごせるというわけだ。

3階の寝室部分(提供:大和ハウス工業)
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 そこで、モデルハウスでは音や匂いのゆらぎを取り入れた。ディフューザーで森の香りを漂わせ、川のせせらぎや鳥のさえずりの音を流すことで森の音を再現している。屋内外問わず、植栽をふんだんに取り入れ、森の中にいるような緑視率10%の空間も実現した。

 さらに、モデルハウスには住民の心を落ち着かせるために暖炉を設置した。実は、人の目は、静止している物を見る際に固視微動と呼ばれる眼球運動を行う。これは、網膜上に同じ映像が映り続けることがないようにするためだという。暖炉の火のように動いている物を見ている時はこの眼球運動をしなくて済むため、静止している物よりも「動いている物を見ている方が人はリラックスできる」と石川氏は説く。焚火の火を眺めていると心が落ち着くように、家の中に暖炉を設置することでリラックスを促す狙いだ。

2階に設置された暖炉。”森の隠れ家”をコンセプトに、五感のゆらぎを体感してもらう空間に(提供:大和ハウス工業)
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 都市部に住むことで、心が感じるストレスにも着目した。都市部は近隣住民との関係が希薄で孤独を感じやすい。石川氏によると、孤独を感じることは喫煙や飲酒の習慣よりも健康を阻害するという。そこで、1階の開口部を広くし、地域の人が入りやすくつながりが持てるようにした。