2012年7月に固定価格買取制度(FIT)がスタートして以来、太陽光発電は大方の予想を超えるスピードで導入が進んだ。一方、それに伴いさまざまな課題も表面化し、法改正やルール変更を繰り返してきた。FITによる太陽光発電の普及に対する評価や課題などについて、三菱総合研究所 環境・エネルギー事業本部の井上裕史・低炭素ソリューショングループリーダーと同本部スマートコミュニティグループの寺澤千尋研究員に聞いた。

予想以上に事業者が殺到

日本の再エネ導入量は、電気小売事業者に一定割合の再エネ供給を義務付けるRPS(再エネポートフォリオ基準=Renewable Portfolio Standard)方式から、FIT制度に変わって以降、短期間で加速的に導入が進みました。これまでのFIT制度に対する評価をお聞かせください。

三菱総合研究所 環境・エネルギー事業本部の井上裕史・低炭素ソリューショングループリーダー
(撮影:山本祐之)

井上 FITが再エネ発電の爆発的な普及を促したことは大きな功績です。

 国内の再エネ推進策を振り返ると、FIT導入以前、RPSの議論が始まった2001年当時、RPSとFITを比較しながら導入を検討していた経緯がありましたが、最終的に日本では、当時まずRPSを選択しました。

 RPSか、FITかは、政策論としてよく議論になりますが、実際に影響が大きいのは、RPSならば義務量(義務割合)、FITなら買取価格の水準です。もし当時、RPSではなく、FITを導入していても、買取価格は低く設定されていた可能性が高く、それほど導入は進まず、政策として十分な効果やインパクトを実現できなかったかもしれません。

FITは、「走りながら改善してく制度」とも言われますが、それにしても日本のFITは、頻繁に改正やルール変更が繰り返され、複雑化しています。

井上 日本でRPSを導入した後、欧州などでFITが広まり、世界的にはFITによって再エネ発電の導入を加速させる流れが強まりました。日本でもFITを検討する中で、海外の制度をそれなりに調べて、どのような課題があるのかについても、ある程度、把握していたはずです。それでも、制度の設計には難しいところがあり、多少、準備不足のまま走らざるを得なかったのだと思います。

 例えば、当初の40円/kWhという事業用太陽光発電の買取価格は、大方の想定よりも高い設定でしたが、それでも設備認定にこれほど多くの事業者が殺到することは、想定できませんでした。

FIT制度は、RPSに比べ政策担当者が、導入量をコントロールしにくいという課題がありますが、まさにその特徴が顕著に表れたということですね。

井上 政策当局は、買取価格の水準によって、設備認定の合計容量や件数がどのように変化するのか、事前に調査し、予想していたと思いますが、この予想をはるかに超えた状況となりました。それまで発電事業には、まったく関心を示してこなかった人たちが、こぞって設備認定を取得したことに驚いたのが正直なところです。