メガソーラービジネス

「防草シートは、施工前と後が重要」。緑地雑草科学研究所に聞く(第6回・後半)

メガソーラービジネス・インタビュー

2017/09/07 05:00
佐治健介氏、伊藤操子氏、伊藤幹二氏
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緑地雑草科学研究所(福井県鯖江市)で理事を務める伊藤幹二氏(マイクロフォレスト リサーチ代表)と伊藤操子氏(京都大学名誉教授)に、メガソーラー(大規模太陽光発電所)における雑草対策について聞く連載コラムの第6回。これまでに各論として、除草剤と被覆植物を取り上げた。今回は、佐治健介氏(緑地雑草科学研究所・事務局長、白崎コーポレーション)を加え、2回に分けて防草シートを含めた「マルチ(土壌被覆資材)」を取り上げる。前半は、主にマルチ技術の全体像について解説した(関連記事)。後半では、マルチの1つである「防草シート」を中心に、その種類や機能などを解説してもらった。

素材によって3タイプ

佐治健介氏
(緑地雑草科学研究所・事務局長、白崎コーポレーション)

――いわゆる「防草シート」として販売されているものも、種類によって素材や機能に差があるのでしょうか。

佐治 雑草の繁茂・伸長を抑制するシート状の資材全般を「防草シート」と呼びますが、明確な定義はなく、さまざまな種類があります。

 現在、製品化されている防草シートの主要な材質は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、そしてポリ乳酸(PLA)です。加工性のよいPEや、軽量で強度のあるPPがよく使われますが、耐候性ではPETが優れています。ポリ乳酸は生分解性があり、農業や植栽などの用途で使われます。

――防草シートを施工したサイトを見学すると、イネ科雑草の刀状葉のとがった先端がシートの下から突き出ていることがあります。

佐治 とがった葉の「突き抜け」は、シートの構造によって多寡があります。シート構造には、縦糸と横糸を編んだ「織布」と、網目のない「不織布」があり、さらに不織布には、繊維密度の高いタイプと、低いタイプがあります。ホームセンターなどでよく売っている比較的、安い製品は、織布タイプのものが多くなっています。

 一般的に織布は、隙間ができやすく、草に対する貫通抵抗力が弱くなります。ただ、不織布でも、繊維密度の低いタイプは、葉の突き抜けに弱い傾向があります。

素材によっては「突き抜け」も

――「織布」は、価格が安いだけで利点はないのですか。

 「織布」は、織り目がずれたり、ほつれたりしやすい短所がありますが、透水性や通気性があることや、斜め方向によく伸びるので地面に馴染みやすいなどの長所もあります(図1)。実際に地面の上に施工する場合、客土との密着性が重要になるので、織布の柔軟性や施工性の髙さが評価されることも多いです。

図1●織布タイプの素材例
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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 これに対し、「高密度の不織布」は、草の突き抜けには強いものの、透水性や通気性が低く、裂けやすく、厚く柔軟性に劣るので地面との密着性が低い欠点があります(図2)。

図2●高密度の不織布タイプの素材例
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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 一方、「低密度の不織布」は、突き抜けに弱い課題がありますが、柔軟性があって裂けにくく、透水性や通気性に優れる利点があります(図3)。

図3●低密度の不織布タイプの素材例
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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 シート構造の違いによる特性を補うため、表面をコーティングして透水性をなくしたり、異なる構造の不織布を2層構造にした製品も開発されています(図4)。

図4●3タイプの防草シートの特徴
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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非農耕地では厚めで緑が多い

――タイプによって、どんな使われ方になりますか。

佐治 一般的に道路や河川、鉄道線路の法面など非農耕地では、厚めで捲れにくく、効果の長く続くものが使われ、景観上、緑や茶色が好まれます(図5図6)。また、あぜ道や農道、田畑の周辺など、農業に関連して個人で利用する場合、織布タイプで軽くて扱いやすく、歩行に適したものが選ばれます。色は黒が多くなります(図7図8)。

図5●道路わきに設置した防草シート
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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図6●法面に設置した防草シート
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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図7●農道わきに設置した防草シート
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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図8●電気柵下に設置した防草シート
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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 一方、緑化のために植栽シートとして使われる場合、透水性があり、柔らかいものになります。施工後に徐々に分解する生分解性のある製品を使うこともあります。

 また、2層構造など厚いものは、相対的に防草機能も高くなるため、単品で使われることが多くなります。一方、単層で薄いものは、上を採石で覆うなど、他のマルチ資材と組み合わせることが一般的です。

伊藤(幹) シートの上に採石や有機資材を敷くなど、組み合わせて使う場合、これまでの経験では、施工性が良く柔軟性の高い織布が多くなっています。網目があり、被せた資材が滑りにくいという安心感もあります。

シート施工では前処理が重要

――防草シートに空いた小さな穴から、雑草が出てきてしまうケースも見かけます。

佐治 実は、防草シートの利用では、素材とともに施工方法がたいへん重要です。シートはピンで留めますが、その穴から草が出てきてしまうことが多く、最近ではほとんどの施工事業者は、ピン穴にワッシャーを被せて止めたり、ピンの上からテープを張ったりして、穴を塞いでいます。

 シートとシートの間は、10cm程度の重ね合せ部分を設けますが、クズなどツル性植物は、10cmでも侵入してしまうので、接着剤やテープで隙間をなくす方が確かです。

 そもそも施工前における地表面の処理が、施工後の防草効果の持続性に大きく影響します。大きな石を取り除いて、平らにしておくことが前提です。石は「シート破れ」の原因になります。また、すでに雑草が繁茂している場合、除草剤で土壌処理しておく方がよいでしょう。

 周辺に竹林のある場合、竹の地下茎が侵入しないように、竹の生えている隣地との境界面に防草シートを縦に施工しておくケースもあります(図9)。

図9●竹の侵入を防ぐための防草シートの施工
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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伊藤(操) 防草シートの下は、温度と湿度が高く、植物にとって絶好の生育環境になっています。あとは日光さえあれば、急激に成長します。一度、穴が開いて日が入り、そこから上に伸び始めると、周囲に競合する植物がまったくないので、あっという間に巨大化します。大きくなってしまうと根が張っているので、簡単に引き抜けません(図10図11)。

図10●ピン穴から生えてきた雑草
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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図11●ピン穴から伸びた雑草は巨大化しやすい
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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年2回の点検で適切に補修

――防草シートは一般的に10年程度で張り替える必要があると言われますが、耐久性はどのように決まるのですか。

佐治健介氏
(緑地雑草科学研究所・事務局長、白崎コーポレーション)

佐治 防草シートの製品自体は、メーカーの設定した期間以上の耐用年数をもっていますが、実際に設置した現場が、その期間、防草機能を維持できるかは、現場の手入れ次第になります。

 例えば、現場では時間の経過につれて、シート上に土埃が堆積しますし、太陽光の紫外線により強度が劣化します。車両の乗り上げやタバコのポイ捨てなど、外的な要因で破れてしまうこともあります。シートの適切な維持がたいへん重要です。

 具体的には、年に2回以上の点検を推奨しています。特に雪解けの後や台風シーズンの後は、除雪車による破損や強風による「めくれ」の有無を確認しておく必要があります。

 点検の結果、シート上に堆積物がある場合は、ほうきなどで払っておきます。破れやめくれなどが軽微な時は、部分的な補修で対応します。

 例えば、ピン穴から雑草が生えていたら、草を抜いてピンシールを貼りなおします。重ね部分から雑草が生えた場合も、雑草を抜き取った上で、必要なら重ね部分を接着剤や粘着テープで処理します。

 部分的な補修では対応し切れない場合、例えば、広範囲にわたって破損している場合やシートの強度が著しく低下している時には、シートを廃棄して更新します。シートを廃棄する場合には、産業廃棄物として基本的には埋め立て処分されます。

――マルチ資材の単価は、防草シートの場合、数百円/m2程度といわれますが、更新や廃棄費用を考慮すると、負担はさらに増えるということですね。

伊藤幹二氏
(マイクロフォレスト リサーチ代表)

伊藤(幹) マルチ資材のコストは、単に防草効果だけが目的なのか、周辺環境への配慮を含めた評判リスクなど、見えない便益を含めるのかなどで費用対効果は異なってきます。1m2当たりの単価では、砂利や砕石は3000~4000円/m2が相場のため、防草シートよりかなり高いですが、更新の心配は減ります。木材チップや残渣系の有機資材は、かなり安く手に入る可能性がありますが、定期的に補充する必要があります。

 いずれにせよ、あらかじめその目的をはっきりさせ、適切なマルチ資材やほかの除草手段などを組み合わせて設計しておくことが、生涯コストでは結局、安くつくと思います。

「ジオテキスタイル」から派生

――防草シートでは、米デュポン社の「ザバーン」が知られていますが、機能的にすぐれているのでしょうか。

伊藤操子氏
(京都大学名誉教授)

伊藤(操) 実は、かつて「ザバーン」は、「ジオテキスタイル(geotextile)」の第1号と言われました。「ジオテキスタイル」とは土木工事で法面や壁面の強度を保つために使われるシート資材です。道路などの建設でも、まずザバーンを地下に施工して、砕石を載せ、その上を舗装することで、地盤を安定化させる、という使われ方をしています。

 もともと地下で砕石と組み合わせて使う想定のため、透水性が高く、ポリプロピレン製で必ずしも紫外線に強いわけではありません。それを特に日本では、「防草シート」として、販売されるようになっています。本来、「防草」以外にも複数の機能があります。

 こうしたジオテキスタイルの一部のシートが、公園や家庭などでマルチ資材として手軽に使われ始め、単体での使用が一般化してしまった面があります。開発された経緯を振り返っても、砕石などと組み合わせて使うことに適しているのです(図12)。

図12●防草シートと砕石を組み合わせたケース
(出所:佐治健介氏=白崎コーポレーション)
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伊藤(幹) 繰り返しになりますが、最初(第6回・前半)で強調したようにマルチ技術は、「雑草抑制」のほか、「保水効果」と「地表高温化の抑制効果」を持っています。ただ、有機資材だけ、防草シートだけでは、この3つを同時に発揮させるには限界があります。

 せっかくマルチ技術を使うならば、複数の資材を組み合わせ、環境改善効果や地域の特産に関連した有機資材を活用し、地域に貢献できるメガソーラーになってほしいと考えています。