屋根上太陽光が伸び悩んだ理由

そもそも建築物への太陽電池モジュールの搭載は、建材一体型のBIPV、独立したモジュールを建物に設置するBAPV(Building Attached Photovoltaics:建物据付型太陽光発電)のどちらにしても、政策的に推進されている割には、普及が進まない印象です。

崔 世界各国で再エネ導入への強力な政策が打たれ、地面に設置する「野立て型太陽光」が急速に伸びたのに比べ、建物への設置は停滞していると思います。その理由は、従来の太陽電池モジュールでは、建物に設置するという観点で見た場合、安全性や信頼性、そして、建材の一部としての施工性などに本質的な課題があるからと見ています。

 太陽電池モジュールを建物に設置する場合、部分的に影のかかるケースが多いことや、間近に日常的に人が活動していること、限られたスペースでの施工になることなど、野立て設置の太陽光とは異なった設置環境への対応が必要になります。

 従来の太陽電池モジュールの構造では、日影などで「ホットスポット」が生じて焼損を引き起こす可能性や、PID(potential-induced degradation)による出力低下、高電圧によるアーク(火花)が火災の原因になる可能性があります。

 これらの不具合リスクが高まる背景には、セルを直列接続して構成するモジュール設計と、さらにモジュールを10枚以上に直列接続したストリング回路の構成があります。そもそも数百Vや1000V、1500Vという直流高電圧が、人間の生活空間に近い場所にあることは、安全上の脅威です。アークによる火災に加え、ホットスポットやPIDのリスクを高めています。

日本でも太陽光発電設備から発火したという報告が聞かれるようになりました。現在の太陽光発電システムには、本質的に火災のリスクがあるということですか。

崔 現在の太陽電池モジュール製品のほとんどは、裏面カバーは有機材料のバックシートで、建材として必要な難燃性を持ちません。また、一定レベルの耐風圧の強度を確保していますが、パネルの上に人が乗って作業することを想定していません。人が乗った場合、クラック(微小な割れ)が生じて、長期的に不具合の原因になります。

 そもそも有機材料のバックシートを採用したモジュールは、屋根上の高温高湿環境の下では、野立て太陽光に比べて劣化が早くなる恐れも指摘されています。

 つまり、これまでの太陽電池モジュールは、BAPVとして建物に設置するにしても、不具合や火災リスクを高めます。まして、建材としての採用されるBIPVの場合、安全性や耐久性に関し、建材としての基準をクリアすることは必須になります。

 太陽光パネルの建物への設置が伸び悩んでいる背景には、建築の専門家から見ると、こうした課題の残る太陽電池モジュールへの不安感があるのだと考えています。