トラッキング機関は1地域に1つ

日本でもFITの買取単価が低下し、今後は、信用力のある企業との再エネの長期購入契約(コーポレートPPA)を締結する動きが顕在化してくる見込みです。その際、国際的に認められるトラッキングシステムが重要になるわけですね。

高瀬 再エネのトラッキングシステムは、需要家が主導して再エネ主体の電源構成に移行していくうえで、必須の社会インフラになります。EU再エネ指令では、「加盟国または指定された管理組織は、原産地証明の発行、移転、償却が電子的かつ正確に、信頼性高く、詐称なく保証できるような枠組みを整備する必要がある」とし、1つの地域に1つの管理機関がシステム運用することを求めています。

 「1つの地域に1つの管理機関」を前提にしているのは、1地域に複数のトラッキングシステムが併存した場合、ダブルカウントの恐れがあるためです。

 世界的にもこうした考え方が主流で、中南米や中国、インド、アフリカ諸国では、民間組織が構築したトラッキングシステム「I-REC」を政府が公認するような形で、1つのシステムに集約しています。

日本では、経産省による非化石価値証書の運用が始まったほか、新電力が独自のトラッキングシステムを売りにしたり、ブロックチェーン技術を持つベンチャーのデジタルグリッド社に多くの再エネ関連企業が出資し、プラットフォーム化していく動きもあります。

高瀬 日本は過渡期ということもあり、複数のトラッキングシステムが競う形になりつつありますが、ダブルカウントを防止するなど、国際的に認知されるには、複数システムが併存することは好ましくありません。経産省の主導した非化石価値証書のトラッキングシステムに、今後「非FIT再エネ」も含めて集約していく方向が自然ですが、官主導のシステムは非効率で高コストになりがちなこともあり、その点が気がかりです。

 多くの民間企業が参加しつつ、知恵を出し合って改善を進めて効率化し、デファクトスタンダードになったトラッキングシステムを政府が追認する流れが理想にも感じます。

 いずれにせよ、電源のトラッキングシステムは、脱炭素社会におけるインフラの1つに過ぎません。エネルギー企業が差別化を競うのは、再エネ自体の中身であって、地域環境や社会と共存したり、地域活性化に貢献したりするなど、需要家から評価される再エネを開発し、調達することで、結果的に好ましい電源が拡大していくという姿が理想です。

CDP Worldwide-Japanの高瀬香絵シニアマネージャー
(撮影:日経BP)