発電源証明を義務化

そうした意味では、2050年に再エネ100%を目指す「RE100」や、世界の平均気温の上昇を「2度未満」に抑えるため科学的な知見と整合した削減目標を求める「SBT」と、同等の再エネ導入を想定しているわけですね。

高瀬 2018年10月に出されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change=国連気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書では、産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑える目標を掲げており、それを達成するには、今後30~50年の間に温室効果ガス「ネット・ゼロ」経済に移行する必要があるとされました。

 SBTでは、これを受けて2019年4月に基準を改定し、従来の「2度以内」から、「2度より十分低い、または1.5度」を前提とした削減目標しか認定しないことを公表しました。

 こうした科学的知見に基づいた流れの中、温室効果ガスを「ゼロ」に抑えていくには、省エネに加え、再エネの大量導入が必須になってくるのは明らかなことで、CDPやSBTでも、RE100と同様、再エネ主体の事業運営を志向することになります。

国内でも、RE100を宣言したり、SBTに基づく削減目標を設定したりする動きが活発化していますが、「国内では欧米と違い再エネを調達しにくい」との声をよく聞きます。FITによる再エネの環境価値は国民全体に帰属するとされて企業が利用できない一方、非FITの再エネ電源は絶対量が少ないのが現実です。

高瀬 経済産業省は、こうした声にも答える形で、FIT電源の環境価値を入札する非化石価値取引市場を2018年度に創設しました。ただ、この仕組みでは、「再エネ」という大きな括りになっており、個別の再エネ電源を特定できません。

 一方、欧州などでは、「再エネ利用」と認定されるには、トラッキングシステムによって個別の再エネ電源と紐づけし、それを証明できることが前提です。

 トラッキングシステムを必須とする理由の1つは、再エネ電源をダブルカウントしてしまう恐れを防ぐこと。そして、需要家が個別の再エネを選んで購入することで初めて、再エネの普及を応援できる、という考え方があります。

 かつて、欧米でも、電気は発電して送電線に流した後は、他の電源からの電気と混ざってしまうとの認識から、需要家は電源を選択できませんでした。しかし、これでは需要家が主導して特定の電源を応援し、増やすことができません。そこで、トラッキングシステムによって発電電源を証明しようとの動きが出てきました。

 2009年にはEU再エネ指令で、「EU加盟国は生産者からの要求に応じて、再エネの発電源証明の発行を保証しなくてはならない」とし、発電源証明の発行を義務化しました。

CDP Worldwide-Japanの高瀬香絵シニアマネージャー
(撮影:日経BP)