メガソーラービジネス

「独自の検査に合格したパネルしか採用しません」、デンケンの太陽光発電事業

メガソーラービジネス・インタビュー

2019/02/06 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 デンケンは、大分県由布市に本社を置き、半導体の検査装置などを製造・販売するとともに、半導体や電子デバイスの試作や製造、検査なども請け負ってきた。固定価格買取制度(FIT)がはじまってからは、太陽光発電事業のほか、EPC(設計・調達・施工)やO&M(運用・保守)サービスにも参入。加えて、新電力おおいたを設立し、大分全域に再エネ電力の地産地消を目指す地域新電力の輪を広げる中心的な存在となっている(関連コラム)。デンケンの太陽光発電関連事業を率い、新電力おおいたの代表取締役も務めるデンケンの山野健治常務取締役に聞いた。

――デンケンの太陽光発電事業の経緯や概要を教えてください。

 大分県には、エレクトロニクスやカメラなどの大手メーカーの半導体デバイス工場がいくつもあります。これらの大企業による需要に支えられ、デンケンは成長してきました。

 しかし、電子機器や半導体の分野は、好不況の波が大きいという課題があります。また、アジアメーカーの台頭にも押されてきました。

 そこで、他の分野で新たな柱を育てることに取り組んできました。そうした中で、医療機器や健康関連機器、レンタル自転車の駐輪場総合管理システム、板金や機械加工などの分野で一定の成果を上げてきました。いずれも、自社で従来から持っていた技術や知見を、応用したもので、太陽光発電事業もその一つです。

 開発した太陽光発電所は、地元の大分県を中心に、27カ所・合計出力33MWあります。このうち11カ所・合計出力22MWは、自社が発電事業者として開発・運営している発電所で、残りの16カ所・合計出力11MWは、他社が発電事業者となっている発電所の開発やEPC、施工を担当しました(竹田市の約1.55MWの施工案件の関連ニュース)。

 自社で運営している太陽光発電所は、ほとんど高圧配電線に連系するものです。1カ所だけ山口県防府市で出力約12MWの特別高圧送電線に連系しているメガソーラーがあります(防府市の約12MWの関連ニュース)。一方、EPCサービスの受託案件では、低圧配電線に連系する発電所の実績もあります。

 新電力おおいたを運営していることから、デンケンが開発した太陽光発電所のうち、現在は7カ所の高圧連系の発電所が、新電力おおいたに売電しています(図1)。

図1●7カ所の太陽光発電所は新電力おおいたに売電
この図の作成時から、電力需要がさらに増加し、2カ所を追加した。山野常務は、新電力おおいたの代表取締役も務める(出所:新電力おおいた)
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――太陽光発電事業におけるデンケンの特徴は、どのような点にありますか。

 太陽光発電関連では、従来から太陽電池セル(発電素子)検査装置を手がけていました。日本や韓国の結晶シリコン型の太陽電池セル、太陽光パネルの大手メーカーの多くが、デンケンのセル検査装置を採用しています。

 このセル検査装置の事業で培ってきた知見によって、太陽電池セルやパネルの評価には自信があります。例えば、デンケンが開発している太陽光発電所では、自社独自の基準を満たした太陽光パネル以外は採用していません。

 これまで採用を検討してきた太陽光パネルメーカーに対しては、われわれの基準を満たしたパネル以外は受け取らないことを条件に、交渉してきました。品質面の確認では、例えば、通常のメーカーの出荷時の検査にわれわれが立ち会った上で、さらに、納入時にデンケンの本社工場内での受け入れ検査も行います。

 デンケンの本社工場内において、納入される太陽光パネルのI-V(電流-電圧)特性の測定や、EL(エレクトロルミネセンス)検査を実施します(図2)。ここで所定の特性を満たしていなかったり、パネルメーカーに求めた独自基準を超えたクラック(微細な割れ)を含むセルが見つかったパネルは、メーカーに返品しています。

図2●取材時も本社工場内でEL検査を実施中だった
(出所:日経BP)
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 クラックについては、セル内に生じている本数や、場所、角度、長さなどで、独自の基準を設けています。セル検査装置事業の経験から、クラックの状況により、性能や安全性などへの長期的な影響度合いを把握しているからです。

 こうした採用方針を示すと、ほとんどの太陽光パネルメーカーは対応できないと答えてきました。製品やコスト、企業としての信頼感などの条件を満たし、かつ、メーカーがわれわれの採用方針を受け入れたのは、唯一、中国のインリー・グリーンエナジーのみです。このため、自社開発した太陽光発電所で採用したパネルは、ほぼすべてインリー製となっています。

 パワーコンディショナー(PCS)については、もう少しメーカーの方針を尊重した基準としています。基本的に、富士電機製を採用していますが、EPCを担当した発電所のうち2カ所では、連系出力に近い出力600kWの機種がないことから、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用しました。

――本社工場の敷地内にも、太陽光パネル出力が約1.2MW、連系出力が1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)があります。このメガソーラーでは、コンクリート二次製品で基礎と架台を一体化した「ソーラーキーパー」(関連コラム)を採用するなど、コストは比較的高く、長期信頼性が高い手法も採用されています。

 本社工場の敷地内の太陽光発電所は、デンケンが初めて手がけた案件で、より信頼性や安全性を優先して開発しました。その一つが、ソーラーキーパーの採用でした(図3)。

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図3●本社工場の敷地内にある出力約1.2MWのメガソーラー
基礎と架台を一体化したコンクリート二次製品「ソーラーキーパー」を採用(下)(出所:日経BP)
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 この後、開発した太陽光発電所では、基礎と架台については、よりコストを下げつつ、長期信頼性や安全性を満たす手法を取り入れています。一方で、設置する地盤や地面の状況によって、同じようにソーラーキーパーを採用した発電所もあります。

――本社工場のメガソーラーには、発電所の入り口から敷地内の一部の範囲に、通路のように人工芝が敷かれています。こうした発電所は珍しいと思います。

 本社への訪問者が多く出入りする場所にあり、デンケンの太陽光発電所のショールーム的な役割も担っているため、雨の後などぬかるみやすい日でも訪問者が歩きやすくするために敷きました。

 この人工芝は、新電力おおいたと密接に連携しているJリーグ(日本プロサッカーリーグ)に加盟している大分トリニータの練習場で使い古されたものです(図4)。

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図4●本社工場敷地内のメガソーラーに敷かれた人工芝
(出所:日経BP)
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 地域に密着という事業の特徴から、地域新電力とプロスポーツチームは親和性が高く、お互いを補完できる関係を築きやすいため、Jリーグのチームと新電力が連携する例が増えてきています(エナリスと湘南ベルマーレによる湘南電力(神奈川県平塚市)の関連ニュース、スマートテックと水戸ホーリーホックによる水戸電力(茨城県水戸市)の関連ニュース)。新電力おおいたの場合は、チームの運営会社の大分フットボールクラブが新電力に出資するとともに、新電力がチームとスポンサー契約を結んでいます。

 子供のころからサッカーを楽しんでいたこともあり、「大分トリニータ」発足以降は、チーム運営のボランティアにも加わるなど、私生活でも熱が入っていました。こうした経緯もあり、ボロボロに使い込まれて新品に交換された後の古い人工芝を、太陽光発電所内を歩きやすくする用途に使わせてもらっています。

――九州本土では、2018年10月中旬以降、出力抑制(出力制御)が実施されました。発電所における状況や影響を教えてください。

 現在、運営している太陽光発電所は、ほとんどが九州本土にあります。出力抑制は、そのすべての発電所で、2018年に2回ずつ経験しました。

 今年も年明けの1月3日に、熊本県阿蘇市にある発電所が3回目の出力抑制の対象となりました。いずれも、午前9時から午後4時の間、送電を止めるという抑制です。

 九州電力は、出力抑制の2日前に、ホームページ上で抑制の可能性を予告します。そして、その翌日となる、抑制の前日の午後に、出力抑制の対象となる太陽光発電所に通知します。

 デンケンの太陽光発電所はすべて、出力抑制に備えて、PCSの遠隔監視システムにソフトウェアを追加することで、PCSを遠隔制御できるように準備していました。

 このため、電気主任技術者などが現地に向かうといった手間を要せずに、遠隔制御でPCSを停止、再稼働できています。

 このほか、年明けの今年1月3日には、大分県竹田市にあるO&Mを受託している発電所も、出力抑制の対象となりました。

 竹田市のこの発電所だけは、人手でPCSを制御しています。この理由は、立地上、通信状況が悪く、遠隔制御が確実に機能するかどうか不確実なために、遠隔制御の機能を使わないようにしています。

 三が日に実施される出力制御だったことから、通知された1月2日の午後には、担当者が親戚周りなどでお酒を飲んでいて、発電所に向かうことが難しい可能性がありました。

 しかし、この担当者は、出力抑制の可能性を考慮し、三が日にもかかわらず、飲酒を伴いそうな予定を入れないでいたとのことです。翌朝、発電所に向かい、出力抑制が求められている午前9時前から現場で待機し、直前まで発電を続けられるようなタイミングで、手動でPCSの稼働を止めたとのことでした。

――出力抑制が発電事業に与える影響は、どの程度見込まれますか。

 現状については、出力抑制の規模や回数は、想定していた範囲内に収まっています。ただし、今後、九電管内にさらに新規の太陽光発電所が稼働してくると、状況は変わってくるかもしれません。

 デンケンの太陽光発電所の実績については、事業計画の元となっている、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射量データベースを使った予測に比べて、軒並み2~3%の上振れで推移しています。NEDOのデータ収集時に比べ、大気の状態がきれいになってきていることもプラスに働いていると感じています。

 このために、年内にそれぞれ2回ずつ出力抑制を受けても、事業計画を下回ってはいません。今後も、春と秋の土曜・日曜・祝日に出力抑制が実施されても、輪番で発電所ごとに月1回のペースなどと想定できますので、当面、大きな問題は生じないでしょう。

 とはいえ、将来、九電管内に稼働する太陽光発電所が大幅に増えてきた段階になると、この範囲に収まらず、平日にも出力抑制が実施されるかもしれません。そうなると日常的に出力が抑制されることになり、事業計画を下回る恐れがあると危惧しています。