雑草を放置するとこうなる! 高まる火災リスク、延焼すれば損害賠償も

発電量のロスよりも、近隣に与えるリスクを自覚すべき

2019/05/08 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 前回まで5回にわたって、2018年9月30日に日向灘を強い勢力で通過し、宮崎県内を暴風雨にさらした台風24号による、同県内で被災した太陽光発電所を紹介してきた(第1回:北東からの強風で、基礎ごとアレイが吹き飛ぶ、第2回:スクリュー杭が抜けアレイが吹き飛ぶ、第3回:国道沿いの太陽光パネルが吹き飛ぶ、第4回: 12段の大型アレイ、「凧揚げ」のように煽られ損壊、第5回:平屋の建物のような重厚な構造でも、吹き飛んだ太陽光パネル)。

 この訪問時に、敷地内で雑草が繁茂している状況を放置している発電所を見かけることもあった(図1)。

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図1●雑草が繁茂している宮崎市内の低圧太陽光発電所
(出所:日経BP)

 宮崎県に限らず、全国各地の太陽光発電所で、同じように雑草対策が不十分な状況を見かけることが少なくない。こうした状況は、発電量の低下という、発電事業者の損害だけに留まらない悪影響を引き起こす可能性がある。

 発電設備に何らかの不具合を生じさせた上、枯れて燃えやすくなっている雑草の近くでアーク(火花)などが発生し、雑草が燃え、火災を招くという、安全上のリスクもある(図2)。

図2●枯れ草は延焼しやすく、よりリスクが高い
(出所:近隣地域の住民)
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 住宅や企業の事業所、公共の施設などに隣接する太陽光発電所の敷地内において、伸び放題となっている雑草に引火して延焼すると、敷地外まで燃え移って、隣の住宅や施設に燃え移る恐れもある。雑草が繁茂している中で引火してしまうと、山火事のような燃え方をすることがあるからである。

 もし、こうした近隣への延焼を引き起こせば、火元となった太陽光発電所の管理体制の不備が疑われる。その時に損害賠償の責任を問われるのも、発電所のオーナーである発電事業者となる。

 このように、雑草が伸び放題になっている太陽光発電所は、しっかりと管理されていないことを、ひと目でわからせてしまう効果もある。近隣地域の住民や関係者は、雑草が伸び放題の様子を見て、周辺への延焼による二次被害などへの自覚すら不十分な発電事業者であるという印象を受ける。

 発電自体の事業性リスクよりも、安全性や近隣地域への損害リスクや評判リスクの方が、より深刻なものとなる。太陽光発電所に対する社会的な信用の低下にもつながる。経済産業省が、適切なO&M(運用・保守)を繰り返し求めているのも、こうした安全性や社会性のリスクが無視できない状況になりつつあることが背景にある。

 今回、紹介するのは、宮崎市田野町に立地する、低圧配電線に連系している太陽光発電所である。発電設備や電柱、連系設備の様子から、出力約50kWの二つの低圧発電所が隣接している構成とみられる。

 敷地の内外は、雑草が伸び放題の状態となっている。雑草で表面がほぼ覆われている太陽光パネルもある(図3)。

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図3●雑草が伸び放題
(出所:日経BP)
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 雑草の繁茂による悪影響として、まず指摘されるのは、太陽光パネルへの日射の妨げとなり、発電量が減ってしまうことである。フェンスにもツル性の植物が隙間のないほど絡みついて、ツルの壁のようになっているので、これも壁となっている可能性もある。

 アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の裏面は、さらに濃密に雑草が繁茂して覆われている。架台に固定されている、小型のパワーコンディショナー(PCS)と思われる筐体にも雑草が絡みついていて、電線がよく見えない(図4)。

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図4●PCSにツル性植物が侵入している可能性も
(出所:上は近隣地域の住民、下は日経BP)
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 小型のPCSについては、ツル性の植物が絡みついているだけではなく、電線の接続部付近から、ツルが筺体内に入り込んでいるようにも見える。

 ツル性の植物が伸びてPCSの筺体内に侵入したことで、稼動停止に至った例もある(関連コラム:吸排気口からツル性植物「クズ」が侵入、パワコン内で繁殖し、稼動停止)。吸排気が適切にできなくなり、PCSの安全機能が働いて稼働が止まる。

 この低圧の太陽光発電所は、国道から田んぼ1枚を挟んだ場所にある(図5)。西側には田畑、東側には別の低圧太陽光発電所が隣接している。こうした場所で雑草の繁茂を放置し、その雑草にひとたび引火すると、発電所の敷地内だけでなく、隣接する田畑や発電所、国道にまで被害を及ぼす火災を誘発する恐れがある。

図5●田んぼを挟んで国道が走っている
(出所:日経BP)
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 雑草と太陽光パネルが同時に燃えているような状態の場合、日中には水をかけて消火できない。日が当たって発電している太陽光パネルに放水すると、水を通して感電する恐れがあるためだ。

 ドイツでは、これによって消防士が死亡した例もあるという。

 2017年2月に、事務用品の通信販売を手がけるアスクルの埼玉県三芳町にある大規模な物流倉庫で火災が発生した際には、こうした感電事故を防ぐため、はしごによる放水隊に対して、屋上の太陽光パネルへの放水は、水を棒状にして噴射する「棒状注水」を禁止した(関連コラム:埼玉県三芳町のアスクル倉庫火災、太陽光は翌日までに遮断)。棒状に注水すると感電の恐れが高まるため、霧状に散水するようにした。

 消防隊員が感電の危険に晒されない手法を採れない場合には、燃えている場所に近づけないなど、太陽光発電設備自体が消火活動の妨げになる恐れもある。

 こうした火災事故や財産を失うといった不幸な事故が起きる前に、除草も含めた適切なメンテナンスの重要性を認識し、怠りなく実行して欲しいと近隣の関係者は強調している。