平屋の建物のような重厚な構造でも、吹き飛んだ太陽光パネル

宮崎で、昨秋の台風24号による被災太陽光発電所を巡る・その5

2019/04/19 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 2018年夏から秋にかけて、国内各地で記録的な強風や豪雨を伴う台風の通過が相次いだ。住宅や社会インフラ、山林、河川などに大きな被害をもたらし、それらの地域に立地している太陽光発電所のなかには、大きく損壊するなど被害を受けたものもあった。9月30日に日向灘を強い勢力で通過し、宮崎県内を暴風雨にさらした台風24号によって、同県内で被災した太陽光発電所の例を紹介する(その1:基礎ごとアレイが吹き飛ぶ、その2:スクリュー杭が抜けアレイが吹き飛ぶ、その3:国道沿いの太陽光パネルが吹き飛ぶ、その4:低圧太陽光・12段の大型アレイ、「凧揚げ」のように煽られ損壊)。

 今回紹介するのは、ほかにほとんど例をみないようなタイプの事業用低圧太陽光発電所である(図1)。宮崎市内に立地し、低圧配電線に連系している。

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平屋の左右に、平屋と同じような高さと大きさで建つ
(出所:近隣地域の住民)
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 農地の前に三つの建物などが並んで建っており、そのうち二つが太陽光発電所となっている。

 農業の作業場を兼ねたような平屋の住宅を挟むように、両隣にこの平屋の住宅兼作業場と同じような高さ、大きさで、太く頑強そうな鋼板で構成された構造物が二つ建っている。隣の平屋の建物から、壁と屋根材を省いたような構造で、この建物の屋根の上に太陽光パネルが並び、太陽光発電所となっている。

 住宅も含めた複数棟が隣接したまったく同じような太陽光発電所が、約50m離れた場所にもある。いずれも、農業も営む地元の地主一家による発電所のようだ。

 通常の太陽光発電所であれば、設置する場所の土の状態や、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の構成とその荷重、想定される強風や積雪に十分に耐えうる荷重への耐力などから、基礎や架台を適切に設計する。

 その中で、想定される最大の荷重や耐力、長期信頼性などを満たしつつも、できるだけコンクリートや鋼材などの使用量が少なく、コストを減らすように工夫する。

 しかし、この事業用低圧太陽光は、その逆をいく。隣の平屋の建物と同じような鋼材で、同じような広さ、高さで構成され、太陽光パネルを並べる目的だけなら、本来は必要と思われる強度などを大きく超えるように見える、贅沢な設計となっている(図2)。

重厚な鋼材が使われている
(出所:日経BP)
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 鋼材は、建物で使われているもののように重厚なだけでなく、錆び止めを目的とした溶融亜鉛めっきが施されているとみられる。

 似たような構造に、営農型の太陽光発電設備があるが、営農型でも、ここまで重厚な構造はまず見られない。

 今回の事業用低圧太陽光では、パネルの下は、人や自動車などは悠々と通り抜けられるだけの高さや幅がある。地面には、農業用をはじめとするさまざまな機器が置かれている(図3)。

下にはさまざまな機器や遊具などが置かれている
(出所:近隣地域の住民)
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 この状況から推測すると、隣の作業場には収まりきらない機器を置くため、倉庫のように使われているように見える。太陽光パネルは、発電とともに、屋根材のようになり、倉庫の簡易な雨よけになっているのかもしれない。

 太陽光パネルは、少し隙間を空けて並んでいるので、隙間から雨水は垂れてくるが、この目的であれば十分な雨よけになる。ほぼ隙間を空けずにパネルを並べているのは、パネルの低部側に、集中して雨水が流れ落ちることを防ぐ目的がある可能性もある。

 安全に十分に配慮しているように見える構造で、下を倉庫のように使うという、太陽光発電の新たな活用の姿の一つと捉えることができそうな例となっている。

 宮崎県各地に大きな被害をもたらした台風24号による強風でも、建物のようなこの構造は損壊しなかった。しかし、かなりの枚数の太陽光パネルが吹き飛んだ。

 パネルが吹き飛んだプロセスは、これまでの4回で紹介してきた例と同じように、南九州ならではの強い風を伴う台風が通過する時に、時計の逆回りで巻くように吹く強風による損壊とみられる。

 北東側から南西側に向かって時計の逆回りで巻く風を、アレイが裏面からもろに受け止め、パネルを裏面から押し上げるようになり、吹き飛んだとみられる。

 今回のように、基礎や架台を兼ねた構造は、住宅と同じような頑丈さをもつように見えながら、太陽光パネルが吹き飛んでいることで、南九州の記録的な台風時の強風の怖さが伝わってくる例と言えそうである。