強風に揺すられ、スクリュー杭が抜けアレイが吹き飛ぶ

宮崎で、昨秋の台風24号による被災太陽光発電所を巡る・その2

2019/03/07 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 2018年夏から秋にかけて、国内各地で記録的な強風や豪雨を伴う台風の通過が相次いだ。住宅や社会インフラ、山林、河川などに大きな被害をもたらし、それらの地域に立地している太陽光発電所のなかには、大きく損壊した場合もあった。9月30日に日向灘を強い勢力で通過し、宮崎県内を暴風雨にさらした台風24号によって、同県内で被災した太陽光発電所の例を前回に続き紹介する。

 今回紹介するのも、宮崎市内にある低圧配電線に連系している事業用太陽光発電所である(図1)。基礎に使っていたスクリュー杭が地面から抜け、アレイごと地面から吹き飛んだり、架台の鋼材が大きくねじ曲がったり、太陽光パネルが外れて変形し、カバーガラスが割れたり、穴が空いたりといった損壊が見られる。

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図1●被災した低圧の太陽光発電所
(出所:上の3段は近隣地域の住民、下の2段は日経BP)

 この事業用低圧太陽光の場合、前回紹介した発電所とは異なり、敷地内の北東や北端付近に被害が集中していない。北端から2列目のアレイが最も激しく損壊しているが、そのほかのほぼすべてのアレイも損壊している。

 ただし、南九州ならではの強い風を伴う台風が通過する時に、時計の逆回りで巻くように吹く強風によって損壊したとみられることでは、前回紹介した発電所と共通している。同じように、北東側から南西側に向かって時計の逆回りに巻くように吹く風を、アレイが裏面からもろに受け止め、太陽光パネルを裏面から吹き上げるように強風が吹き、損壊に至ったとみられる。

 損壊したアレイや太陽光パネルは、南側に向けて吹き飛んでいる。この発電所の南隣には住宅が建っている。

 太陽光発電設備がこの住宅まで吹き飛んで、住宅を損壊させた様子は見当たらなかったものの、損壊させていたかどうかは紙一重だった可能性もある。住宅や住人、通行人などの損壊・損傷に至った可能性が十分にあることを認識する必要があるだろう。

 今回の太陽光発電所は、川に近い場所に立地している。周辺は田んぼで、この場所も元々、田んぼだった可能性もある。川の近く、田んぼという環境は、いずれも水はけが良くない地盤だったとみられる。

 こうした環境では、地耐力を十分に備えた基礎や工法を採用した上、基礎の上に固定する架台、さらにその上の太陽光パネルの設置角、アレイを構成するパネル枚数も、強風などの際に、基礎を揺さぶるような力を働かせることを最小化する設計が求められる。

 ところが、この発電所の場合、こうした地盤の上、さらにこの地域に多い強い台風に対して十分に考慮した設計には見えないという。

 アレイは、横向き4段・2列で構成されている(図2)。これに対して、杭基礎は前列と後列に2本ずつ合計4本と少なく、かつ、架台の支柱は東西方向に2本の構成で、それぞれ前列の2本、後列の2本の杭基礎の上に固定されている。杭基礎と架台の支柱は、ネジ1本のみで固定されている。

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図2●アレイと基礎、架台の様子
(出所:日経BP)

 抜けた杭基礎が元々、埋まっていた場所の地面をみると、杭基礎の東西方向に穴が広がっている様子が確認できる(図3)。これは、杭基礎にかかる東西方向への揺さぶりによる荷重によって、土の中で杭が動きやすくなったことで生じたと推察される。

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図3●杭基礎が揺さぶられたことがわかる地面の様子
(出所:日経BP)
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 硬い地盤に施工した場合や、こうした強風を十分に考慮した設計だった場合には、杭基礎が揺さぶられるような力が抑えられ、地面から抜けるような損壊は起きにくい。

 今回のような杭基礎と架台、アレイ構成を組み合わせた設計の場合、長時間にわたり東西方向に繰り返し揺さぶられ続けると、地盤によっては引き抜き強度が低下しやすいと見られる。

 損壊に至ったもう一つのポイントは、太陽光パネルの設置角である(図4)。現地の状況から、15度程度とみられる。

図4●設置角が比較的大きい
(出所:日経BP)
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 宮崎県内では、太陽光パネル当たりの発電量をより多くする設計として、当初はこうした比較的大きな設置角を採用する太陽光発電所が多かったという。

 しかし、台風にともなう強風によって損壊するリスクが大きいことがわかり、5度や10度など、より小さな設置角を採用する例が徐々に増えていった。

 設置角を小さくするほど、後方のアレイへの影が短くなることから、アレイ間隔を狭めることができ、敷地面積あたりの太陽光パネルの設置枚数を増やせる利点もある。

 今回の事業用低圧発電所では、大きな設置角によって、パネルの裏面から吹き込んだ強風による荷重が相対的に大きくなり、設備の崩壊につながった可能性もある。