「震度6強」を乗り越えた111MWのメガソーラー、北海道安平町で順調に再稼働

損傷は「軽微」も、再連系までに2週間を要す

2018/12/18 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

震度6強に見舞われた安平町

 2018年、日本列島は記録的な勢力を維持した台風や豪雨、そして地震に襲われ、太陽光発電所も被災した。北海道で9月に起きた大地震では、震源地域に国内有数の規模を持つメガソーラー(大規模太陽光発電所)があった。今回のメガソーラー探訪では、この発電所が巨大地震をいかに乗り越えたのかを、レポートする。

 9月6日に北海道で発生した最大震度7の地震は、胆振(いぶり)地方中東部が震源で「北海道胆振東部地震」と名付けられた。胆振地方は道央の中でも南側に位置し、西には室蘭市、中央に苫小牧市、そして、東には厚真町、安平町、むかわ町がある。

 震源となった厚真町、安平町、むかわ町では震度6強から7を記録し、多くの住宅が倒壊するなど、被害も甚大だった。厚真町では広範に土砂崩れが起こり、北海道電力の苫東厚真火力発電所が破損して3基の発電機のうち2基が停止し、大規模な停電の発端となった。

 安平町早来大町地区にある早来神社では4つあった石灯籠がすべて倒れ、拝殿の一部が倒壊して屋根が落ちるなど、すさまじい揺れを物語る(図1)(図2)。

図1●拝殿の一部が倒壊した安平町の早来神社
(出所:日経BP)
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図2●地震で倒れた早来神社の石灯篭
(出所:日経BP)
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100MW超のメガソーラーを直撃

 実は、この震源地の安平町には、出力約111MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」が2015年12月から稼働している(図3)。

図3●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」の全景
(出所:SBエナジー)
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 事業主体は、ソフトバンクグループで再生可能エネルギー事業を手掛けるSBエナジーと、三井物産の共同出資によるSPC(特定目的会社)。苫小牧東部地域の土地開発などを担っている苫東(北海道苫小牧市)が所有する約166万m2の土地に建設した。苫東から土地を賃借し、プロジェクトファイナンスを組成して資金調達した。

 EPC(設計・調達・建設)サービスは東芝が担い、太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。O&M(運営・保守)サービスは東芝、保安管理業務は日本テクノ(東京都新宿区)が担っている。

 「苫東安平ソーラーパーク」は、稼働済みメガソーラーの出力規模としては、岡山県瀬戸内市の「瀬戸内Kirei太陽光発電所」(パネル出力235MW)、青森県六ケ所村の「ユーラス六ケ所ソーラーパーク」(パネル出力148MW)に次ぐ国内3番目の規模となる。

 地震直後、「苫東安平ソーラーパーク」は系統の停電を感知して解列して稼働を停止した。震度6強という大きな揺れに見舞われたものの、特高変電設備やサブ変電設備に損傷はなかった。ただ、一部の基礎・架台がわずかに傾いていることが分かった(図4)。

図4●地震で傾いたアレイ
(出所:日経BP)
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杭基礎が「前のめり」に傾く

 同発電所では、杭基礎に架台を固定し、アレイ(パネルの設置単位)を設置角30度で取り付けている。アレイはパネル42枚(14段×3列)で構成し、1アレイを前後1本、横方向に9本の杭基礎で支えている。積雪に配慮して地面からのパネル最低部の設置高は1m。結果的にアレイの最高部は地面から2.5mに達する。

 地震後、一部のアレイが前側(南側)に杭基礎ごと前のめりに傾いていた。目視で確認すると、傾いたアレイは、正常なアレイとの間に隙間ができている(図5)。

図5●正常なアレイとの間に隙間ができた
(出所:日経BP)
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 現在、専門家に依頼し、傾きなどの状況、耐久性への影響を精査している段階だが、明らかな傾きが見られるのは10アレイ前後で、パネル数百枚分になる。発電所全体の規模は約1万アレイ(パネル約44万枚)に達することから、損傷した割合は、0.1%程度にとどまる。すでに同発電所は、運転を再開しているが、傾いたアレイも含めパネル間をつなぐケーブル配線には全く異常はないため、発電自体に影響はないという(図6)。

図6●ほとんどのアレイは「震度6強」にも耐えた
(出所:日経BP)
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 発電事業のアセットマネジメントを担うSBエナジーは、修繕の必要性や方針・方法など今後の対応については、専門家による調査分析の結果を見て、判断してきたいという。

 今回の地震で傾いた基礎・架台は、あちこちに分散しているのではなく、敷地全体の北側、南北に細長いエリアに集中している。東西に伸びたアレイの列のうち、このエリアにあたる数アレイが傾いていた。被災した場所は敷地を囲むフェンスを隔てて、今でも南北に小川(水路)が流れている。こうした周辺地形から、傾いたエリアには、かつて谷戸や水道(みずみち)などがあり、その影響で地耐力が弱くなっていた可能性もある。

「震度5」では異常なし

 「苫東安平ソーラーパーク」では、工期短縮や20年後の撤去費用なども含め、トータルで費用対効果の高いことなどから杭基礎を採用した。ただ、安平町サイトの地盤は、相対的に軟らかく、地中に杭を差し込むだけでは、十分な強度を確保できない場所もあることが、事前調査で明らかになっていた。

 そこで、あらかじめ深さ約1mの穴を掘削し、その穴の中空にテンプレート(治具)を使って杭の脚部を固定しておき、地盤との隙間にセメントと土を混ぜた「セメントミルク」を注入した(図7)(図8)。こうすることで地耐力の不足を補い、十分な強度を確保した。

図7●深さ約1mの穴を掘削して杭基礎を固定した
(出所:日経BP)
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図8●セメントミルクで固めて地耐力を補強
(出所:日経BP)
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 安平町では、北海道胆振東部地震の発生前から、ここ数年地震が多く、「苫東安平ソーラーパーク」でも稼働以来、最大で震度5の大きな揺れを3回ほど経験したという。ただ、これまで震度5の揺れでも基礎・架台に全く影響は見られなかったという。

 北海道胆振東部地震では、安平町は公式には震度6強だが、局所的には震度7となった可能性もある。「気象庁震度階級関連解説表」では、震度6強では、「耐震性の高い住宅でも壁や柱がかなり破損するものがある」とされ、震度7では、「耐震性の高い住宅・建物でも、傾いたり、大きく破壊されるものがある」としている。

地震直後、資格者は札幌で待機

 揺れの大きさと、メガソーラーの規模から考えると、「苫東安平ソーラーパーク」の設備が受けた直接的な損傷は、軽微だったとも言える。むしろ、事業的に影響が大きかったのは、地震により大規模停電、いわゆるブラックアウトが発生したことで、系統連系する再生可能エネルギー電源もすべて解列して、売電事業がストップしたことだった。

 9月6日に大地震が発生すると、「苫東安平ソーラーパーク」も電力系統側の停電を感知して解列し、自動的に稼働を停止した。

 その後、停電は道全域に広がり、7日に経済産業省は、完全に復旧するまでには1週間程度の時間を要するとの見込みを公表した。札幌など道央では道路の信号機も止まり、携帯電話もつながらないなど、社会活動が停滞する状況が続いた。

 「苫東安平ソーラーパーク」の保安管理業務は、日本テクノの札幌営業所が担っており、系統連系に関わる作業や管理責任を持つ電気主任技術者も札幌市内に常駐していた。地震後、同社は、SBエナジーのほかO&M(運営・保守)を担う東芝と連絡を取りつつ、混乱が収束するまで電気主任技術者は札幌で待機することになった。

 8日以降、停電の復旧が進んできたことから、電気主任技術者など日本テクノの技術者は、10日に安平町のサイトに入り、O&M担当者と協力し、13日までに166haもの敷地と外周をくまなく巡回し、受変電設備、基礎架台とアレイ、パワーコンディショナー(PCS)筐体、外周柵などの状況を目視で確認した。この時の点検によって、一部のアレイが傾いているほか、損傷は見られないことが分かった(図9)。

図9●連系変電設備やサブステーションの損傷は見られなかった
(出所:日経BP)
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 そして、14日にSBエナジーと、今後の方針について協議し、安全確保に万全を期すため、「系統連系して再稼働する前に、すべてのPCS筐体の扉を開けて内部の状態を確認し、158台のPCS本体を直接、目視確認する」との方針を決めた。

79カ所のPCS筐体を開扉確認

 PCSは1つの筐体に500kW機・2台を収納しており、79カ所のサブ変電所に分散して設置されている。これらをすべて開扉して、内部を確認するには、10人程度で手分けしても数日かかると予想された。余震が続くなか、どのタイミングで開扉チェックを開始するかが次の課題になった。確認後に大きな余震が起きた場合、再確認が必要になってしまうことから、再連系日が決まってから、開扉作業を始めることにした。

 そこで、点検員の手配など事前準備もあるため、14日の午後2時ごろに北海電力に連絡し、連系が可能となる日の目処を確認したところ、「未定」との回答だった。

 北海道電力は、9月6日の地震発生・停電の後、9月8日までに道内のほぼ全域への送電を再開していた。しかし、再エネ電源の連系に関しては、「出力変動に対する調整力が不可欠なため、調整力の確保状況と並行して段階的に接続していく」との方針を示していた。

 系統との再連系が可能となった再エネ設備は、9月7日午前7時に蓄電池を併設した風力発電と低圧連系太陽光、9月9日午前3時に蓄電池付き太陽光、9月11日午前9時に蓄電池のない高圧太陽光という順番だった(図10)。「苫東安平ソーラーパーク」のような蓄電池のない、特別高圧に連系する設備は14日午後2時の時点でも、連系再開日が通知されなかった。

図10●北海道電力は太陽光・風力を段階的に再連系した
(出所:経済産業省)
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 そうしたなか、14日午後3時半に北海道電力から、「いまから、連系可能」との連絡が入った。そこで、急遽、PCS筐体の開扉確認の準備に入った。約10人の点検員を手配し、翌15日から開扉確認に取り掛かった。その結果、最終的にすべての筐体を開扉し、158台のPCSを目視で正常なことを確認し、連系を再開したのは、20日になってしまった(図11)。

図11●すべてのPCS筐体を開扉して内部を確認した
(出所:日経BP)
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 結果的に9月6日の解列後、14日もの間、売電できない状態が続いたことになる。

安平町で啓発プログラム

 SBエナジーは、地震の発生する1週間前の8月29~30日、安平町立早来小学校で、「エネルギー」に関する授業を行った。「未来×エネルギープロジェクト」と呼ぶ啓発プログラムで、同小学校での開催は今回で5回目、安平町では10回目となる。

 6年生24人を対象に1日2時限を2日間というカリキュラムで実施した。「エネルギー」を主体的かつ創造的に考えるためのきっかけ作りを目指しつつ、ソフトバンクグループらしいICT教育の一面も持たせていることが特徴だ。

 授業では、「エネルギー」に理解を深める動画コンテンツを教室で上映するほか、タブレット型パソコン「iPad(アイパッド)」を一人1台持って、野外で撮影した画像などを使って「未来のエネルギー」について自分の考えをまとめる。そして、グループごとに議論し、まとめた内容について、iPadを使って作品に仕上げ、発表する。

 今回のプログラムではまず、安平町役場の職員が安平町の歴史を紹介した。早来地区の開拓者や、80年以上前から酪農が盛んだった遠浅地区に作られた文化財「木製サイロ」が復元されたことなど、クイズ形式で解説した。

 次に先生が、身の周りにある「エネルギー」について解説した。小学生たちは「エネルギーは、動き、熱、音、光、匂いに隠れているらしい」というヒントをもらい、iPadを手に「エネルギー探し」に校舎内を探索した(図12)(図13)。

図12●先生が身近な「エネルギー」について解説
(出所:SBエナジー)
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図13●校舎内にある「エネルギー」を探索
(出所:SBエナジー)
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 iPadに「エネルギー」を集めてきた6年生は、グループごとに資料を作成し、発表した。「体育館で遊ぶ時の振動を集めてエネルギーを作り、夏は照明、冬は暖房に使いたい」「フラフープを回すエネルギーで時計を動かしたい」「友達や先生の笑顔のエネルギーで電灯を点けたい」など、ユニークなアイデアがたくさん出てきた(図14)。

図14●タブレット端末を使って発表資料を作成
(出所:SBエナジー)
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 SBエナジーでは、メガソーラーを設置した地域の自治体と連携し2012年からこうした啓発プログラムを開催している。これまでに7都道府県で44回、実施している。小学校4~6年生を対象とし、参加した小学生は延べ2125人に達する(図15)。

図15●「未来×エネルギープロジェクト」実施事例
(出所:SBエナジー)
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地域に安全・安心を提供

 2018年は、メガソーラーと地域社会とのあり方が問われた年でもあった。景観や豪雨時の表面流水などの問題から、反対運動が増えているほか、実際に豪雨や台風によって地盤が崩壊し、周辺住民などに不安感を引き起こすケースもあった。そうした流れの中で、地域社会に積極的に入り、信頼感を深めるSBエナジーのような取り組みはより重要になっている。

 一方で、北海道の大地震では、「苫東安平ソーラーパーク」をはじめ、震源に近い地域に多くの太陽光発電所が稼働していたものの、大きな揺れの割に損傷は極めて小さく、「メガソーラーは地震に強い」ことを改めて示した。

 とはいえ、売電事業を前提に送配電線に接続するメガソーラーは、系統網が停電すると自立して発電できない。災害意識の高い関東や東北では、こうした状況を想定して、自立運転機能のあるPCSを併設しておき、災害時に切り替えて運転し、非常用電源として地域に開放する仕組みを備えているサイトもある。

 今後、北海道でもこうした災害時に対応した再エネの自立システムの重要性が再認識されそうだ。加えて、道内では今後、系統への負荷を減らすため、蓄電池を併設したメガソーラーや風力発電の稼働が増えてくる。こうした蓄電システムを災害時にも活用できないか、積極的に地域の安全・安心に貢献する姿勢も求められそうだ。

●設備の概要
発電所名「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」
住所北海道勇払郡安平町遠浅
発電事業者苫東安平ソーラーパーク(SBエナジー、三井物産の共同出資)
土地所有者苫東
設置面積約166ha
出力太陽光パネル出力111MW、連系出力79MW
年間予想発電量1億801万4000kWh
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝
アセットマネジメントSBエナジー
O&M(運営・保守)サービス東芝
保安管理業務日本テクノ
太陽光パネル東芝製(単結晶シリコン型・250W品、44万4024枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(500kW機・158台)
着工日2013年10月
売電開始日予定2015年12月