「火山灰、出力抑制、パネル位置の変更」、霧島のメガソーラーの4年半

10月に雑草を抜き、翌年の育成を抑制

2018/12/11 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 鹿児島県霧島市の山あいに、温泉付きの住宅地「ロイヤルシティ霧島妙見台」がある。霧島連山を望む標高約200mの丘陵地に立地し、森林の中でゆったりと暮らせる。鹿児島空港から11.9km、クルマで約18分と、交通の便も良い。

 大和ハウス工業が開発したもので、分譲済みを含めて現在、156区画を販売している。

 この住宅地の一角に、出力約1.8MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「DREAM Solar 霧島妙見台」がある(図1)。発電事業者は、同社グループで再生可能エネルギー事業を手掛ける大和エネルギー(大阪市阿倍野区)となる。

図1●温泉付きの森林の住宅地に開発
(出所:上は大和エネルギー、下は日経BP)
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 大和エネルギーが開発・運営している再エネ発電所は、11月30日時点で稼働済みが85カ所、合計の太陽光パネル出力は169.366MW、建設中が89カ所、178.567MWとなっている。

住宅地用の設備を避けながら設置

 メガソーラー用地として活用したのは、ロイヤルシティ霧島妙見台全体の約80haの敷地全体のうち、約11haを占める区域である。このうち、太陽光発電設備を設置したのは、約3haとなっている。

 当初は、森林型の住宅地として分譲する計画だった土地の一部を活用した。道路や排水溝、上下水道や温泉の整備を終えた土地で、太陽光パネルが並んだ場所の地面には、上下水道や温泉を引き込むためのマンホールが見える(図2)。

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図2●温泉や上下水道の引き込み用マンホール
下の2枚は建設時のもので、完成時には砕石に覆われた防草シートの一部が見える(出所:日経BP)

 こうした設備を避けつつ、太陽光パネルを最大限に設置した。また、部分的に起伏があるため、杭の深さを変えることで、横方向の列ごとに、パネルの高さを合わせた。

 施工時には、整備済みの道路を活用して発電設備を設置できる利点もあった。

 太陽光パネルはシャープ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。パネルや架台を支える基礎には、大和ハウスグループ独自の鋼管杭工法「D-TEC PILE」を使っている(図3)。

図3●大和ハウスグループの鋼管杭工法を採用
建設時の様子(出所:日経BP)
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 DREAM Solar 霧島妙見台は、2014年6月に売電を開始し、約4年半が経過した。

南東向きで午前の発電量が多い

 実は、このメガソーラーでは、当初の設計を変えて施工した点がある。太陽光パネルの配置だ。変更した理由は、西隣に山があり、その山による影が設計時の見通しよりも大きく伸びることだった(図4)。当初のパネル設置計画のままでは、西側の一部で、発電量が計画よりも減少することが予想された。

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図4●西隣に見える山(上)、昇圧変圧器は予定よりもPCSの近くに(下)
(出所:日経BP)
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 そこで、敷地の西端付近に設置する予定だった太陽光パネルの一部を、東端から南端にかけての空きスペースや、連系用の昇圧変圧器(キュービクル)を配置する予定だった場所に移した。昇圧変圧器は、当初の予定よりもPCSの近くに配置し、パネルを置くための南端近くのスペースを広げた。

 設置枚数を最大化するため、太陽光パネルの向きは、真南向きでなく、多くは南東向きに並べた。元々、分譲地を想定して道路と道路に挟まれた形状を生かしたものだ。

 パネルがほぼ南東向きに並んでいることで、真南向きにパネルが並んでいる太陽光発電所に比べて、午前中の発電量が多くなる特徴がある。午前より午後の日射量が多い天気の日は不利だが、日本の場合、午前に好天となる傾向の月もあり、売電開始以降の発電量は、想定よりも上振れで推移しているという。

10月に雑草を抜き、翌年の育成を抑制

 太陽光パネルの設置区域には、ほとんど雑草が生えていない(図5)。大和ハウス工業の意向で除草剤はまったく使っていないという。それなのに草が生えにくいのは、地面に砕石を敷き、さらにその下に防草シートを施工したからだ。

図5●雑草はほとんど見られない
(出所:日経BP)
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 こうした防草対策は、国内の多くの太陽光発電所でも見られる。ただし、年月が経つ間に、風で飛んできた土が砕石に積もり、そこに草の種が落ちると、徐々に草が根付いてくる。

 そこで、こうして伸びてきた雑草の高さが、太陽光パネル低部を越えそうになると、日常的に巡視・点検している電気主任技術者が抜いている。

 さらに、毎年10月には、敷地全体で雑草を抜き取っている。冬に向けて、雑草そのものは枯れていく時期に当たるが、この時期に抜き取ることが、翌年の春以降の雑草の育成を防ぐ上で、大きな効果があるためとしている。

 太陽光発電設備の設置区域以外は、防草シートや砕石などの雑草対策を施していないため、定期的に刈り取っている。

カラスが日照計のケーブルに悪戯

 山あいに立地しているため、周辺に住む動物や鳥も敷地内に入ってくることがある。

 動物では、イノシシやアライグマを見かけるという。ただし、地面を砕石で覆っている効果か、イノシシによる地面の降り起こしは見られない。アライグマは、排水溝などに潜んでいることがあるものの、発電設備を損傷させたことはないという。

 カラスも飛んでくる。フンを落としたり、石がパネルに乗っていることもあるが、カバーガラスが割れたことはないという。

 太陽光パネルの設置角は10度と低いものの、パネル上の糞は雨が降ればほぼ流れ落ちている。パネルに乗っている小石は、カラスによるものと推察しているが、今のところカバーガラスが割れるようなケースはないという。

 ただし、日射計のケーブルに悪戯することがあった。このケーブルは、樹脂製の被覆材で保護されている。この被覆を、カラスが突き破った。

 そこで、「スパイラルチューブ」と呼ばれるケーブル用の保護材で補修した。しかし、カラスはスパイラルチューブも損傷させた。その後、2重、3重と重ねる数を増やしたところ、3重巻きにした時点で、損傷は見られなくなったという(図6)。

図6●スパイラルチューブを3重に巻いた
(出所:日経BP)
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火山灰の影響はわずか、洗浄の効果も検証

 鹿児島には、台風の通過も多い。稼働後の約4年半の間にも、強い風を伴う台風がいくつか通過した。

 メガソーラーの周辺は山に囲まれている(図7)。台風の通過時には、これが防風林の役割を果たし、発電所内への強風の影響を抑えているという。山の影は、発電所の建設では、パネルの設置場所の変更につながったが、防災上は利点となった。

図7●3方を囲む山が防風林のように機能
(出所:日経BP)
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 台風による損壊を懸念しているのは、メガソーラー入り口にある門だという。このため、事前に門とフェンスを縛る、重しとなるブロックを追加して倒れることを防ぐといった措置を講じている。この結果、強風による損壊などは一度もないという。

 また、発電所は、九州を代表する二つの火山、桜島と新燃岳のほぼ中間に位置している。

 桜島は日常的に噴煙を上げる一方、新燃岳は、2017年秋、2018年春から夏にかけて、比較的大きな噴火が起きた。いずれの噴火でも、これまでのところ発電量を大きく減らすような量の火山灰がパネルを覆ったことはないとしている。

 桜島、新燃岳ともに、火山灰が周辺地域に降り落ちる場合、風向きによって、幅2kmほどの帯状の範囲に多く降灰する傾向があるという。霧島妙見台のメガソーラーの場合、新燃岳よりも桜島による降灰の方が、パネル上に降り積もる可能性が高いと見ている。

 少量の火山灰がパネルに降り積もった際、パネル洗浄の手間とコスト、それによる発電量の押し上げ効果を検証したことがある。

 太陽光パネルを接続した単位であるストリングの1回路分だけ、パネルを洗浄したところ、1ストリング分のパネルを洗うのに約30分間を要した。

 元々、週に一度程度、雨が降るので、雨水によって火山灰はほぼパネルから流れ落ちる。洗浄作業を発電所全体で実施する時に要する手間や費用は、洗浄による発電量の増加分よりも多くなってしまうことが予想でき、洗浄の経済的な利点はなかった。

 また、集電箱の経年変化として、筺体上部のひさし部分に、サビが目立ち始めた。そこで、サビ止め用の塗料を塗り直した(図8)。

図8●集電箱の筐体のひさし部を塗りなおした
(出所:日経BP)
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遠隔制御システムを整備、出力抑制も経験

 九州電力は、今年10月13日以降、九州本土で初めて太陽光設備に対して出力抑制(出力制御)を実施した。晴れの日の週末を中心に11月12日までに8回実施しており、事業用設備を輪番制で出力抑制の対象とし、2巡目に入ったことを明らかにしている(関連記事:九電、土日に太陽光の出力を抑制、見えてきた「出力制御率」九電の出力制御が2巡目に、旧ルールの高圧事業者の1割が不実施経産省、九電の出力抑制量の低減に向け4対策を公表)。

 大和エネルギーが九州本土で運営している10カ所の太陽光発電所も、すべてこの期間内に出力抑制を経験した。このうち2カ所は、2回目の出力抑制も巡ってきた。これまでに10カ所で合計12回の出力抑制を経験した。

 霧島妙見台のメガソーラーも、11月3日(土)に出力抑制の対象となった。

 具体的な手順は、まず出力抑制を実施する前日に、九電から翌日の9~16時の間、メガソーラーから高圧配電線への送電を止めることを指示する連絡が入った。

 大和エネルギーの太陽光発電所では、出力抑制に備えて、1年以上前となる2017年9月には、遠隔制御システムの運用を始めていた。遠隔監視・制御システムを通じて、PCSの稼働をオン・オフできる。この機能を使うことで、電気主任技術者が現地に出向いてPCSを手動で停止しなくても、出力抑制に対応できる。

 ただし、霧島妙見台のメガソーラーでは、初めての出力抑制だったため、前日の夕のうちに、確実にPCSを停止できているのかどうか、念のため現地でも確認した。

 電気主任技術者が点検作業のために現地に残っている間に九電からの連絡が入ったため、遠隔制御システムでPCSの稼働をオフにした後、電気主任技術者が現地で正しくオフになっていることを確認してから帰宅した。

●発電所の概要
発電所名DREAM Solar 霧島妙見台
所在地鹿児島県霧島市牧園町下中津川霧島妙見台
(温泉付き森林住宅地「ロイヤルシティ霧島妙見台」の隣接地)
開発面積約11ha
太陽光発電設備の敷地面積約3ha
太陽光パネル出力約1.887MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1.750MW
年間予想発電量約184万6937kWh(一般家庭約417世帯の消費電力に相当)
発電事業者大和エネルギー(大阪市阿倍野区)
土地所有者大和ハウス工業
設計・調達・施工大和エネルギー
電気設備の施工日鉄住金テックスエンジ
O&M(運用・保守)大和エネルギー
太陽光パネルシャープ製
(多結晶シリコン型、出力245W/枚品・7700枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力500kW機・3台、出力250kW機・1台)
基礎大和ランテック(大阪市中央区)
(大和ハウス工業グループの鋼管杭工法「D-TEC PILE」)
架台伸明(大阪府八尾市)
着工2014年1月10日
稼働2014年6月30日
固定価格買取制度(FIT)上の売電価格40円/kWh(税抜き)
売電先九州電力