農山漁村再エネ法で開発が相次ぐ岩手・軽米町のメガソーラー

稼働第一号は中国系、100MW規模の案件も調整中

2016/12/06 00:00
加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所

 岩手県の最北部、軽米町の山間部に、出力約2MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「SSJ軽米・西山太陽光発電所」が立地する(図1)。2016年8月に売電を開始した。

図1●出力約2MWの「SSJ軽米・西山太陽光発電所」
発電事業者はSky Solar Japan(出所:日経BP)
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 発電事業者は、中国の再生可能エネルギー開発会社であるSky Solar Holdingsの日本法人、Sky Solar Japan(スカイソーラージャパン:東京都千代田区)となる。

 軽米町は、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(農山漁村再生可能エネルギー法)に基づいて、再エネ開発に取り組んでおり、その稼働第一号となる案件となった。

 農山漁村再エネ法では、まず市町村が協議会を設置し、農山漁村と調和するように再エネ発電を導入するための「基本計画」を作成し、発電事業者が、これに沿って再エネ発電所の開発を計画し、市町村が認可することで導入が進んでいく。

 協議会は、市町村が主催し、農林漁業関係者やその団体、発電事業者、関係住民、学識経験者などで構成する。

 こうした仕組みによって、土地に関連する許可や届け出の手続きを地元自治体にワンストップ化できるといった利点もある。

 発電事業者は、農林漁業の知見を得ながら、農林漁業の健全な発展に貢献できる。自治体にとっては、再エネと農林漁業の両方を効果的に伸ばせる利点がある。

1カ所で100MW以上の太陽光や風力の打診も

 軽米町は、面積が約246km2で、約80%を山林が占めている。標高約550m~850mの低い山に囲まれた丘陵地域で、多くの集落や田畑は標高200m~300mにある。人口は約1万人、世帯数は約3300で、農業を基幹産業とする。特に、養鶏が盛んで、農業生産額の50%以上を占める。

 軽米町では、5回の協議会を経て、「基本計画」となる「軽米町再生可能エネルギー発電の促進による農山村活性化計画」を策定した。同町における再エネ発電所の導入目標として、2020年度までに合計出力80MW以上を掲げている。

 軽米町の「基本計画」では、対象とする土地に含む、林地開発行為に関連する森林面積の上限を、軽米町の林野面積の10%(約1800ha)以下と決めた。緩やかな里山に囲まれた環境を維持できるようにしつつ、再エネ発電所の開発区域を設定した。発電事業者には、自主的な環境影響評価(アセスメント)を求めるともに、売電収入の一部を供出して創設した基金を通じ、農林業の発展に資する活動に使うことなどを求めている。

 現在、「基本計画」に記載されている具体的な再エネ発電所の開発は、6カ所ある(図2)。稼働済みなのは、スカイソーラージャパンの出力約2MWのメガソーラーと、十文字チキンカンパニー(岩手県二戸市)の出力約6.25MWの鶏糞バイオマス発電所(関連ニュース)の2カ所である。

図2●「基本計画」に盛り込んだ6カ所の再エネ発電所
新たな発電所の開発計画は、その都度、追加していく(出所:軽米町)
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 このほかの4カ所は、40MW~70MWという規模の大きなメガソーラーとなっている。スカイソーラージャパンの出力約40MWが2カ所、レノバの同約48MWと同約70MWである。

 このほか、現段階では「基本計画」に盛り込まれていないが、出力100MWを超えるメガソーラーのほか、複数の風力発電所の開発計画を打診されているという。

太陽光発電と農業が相乗効果を生む事業も模索

 軽米町の山本賢一町長(図3)によると、同町は北日本にしては比較的、太陽光発電に向く地域という。日照時間は全国平均より長い上、気温はそれほど高くならない。結晶シリコン型の太陽光パネルは、高温になると発電効率が落ちることから、夏の高温期でも発電ロスが比較的少なくて済む。

図3●軽米町の山本賢一町長
(出所:日経BP)
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 町の予算は限られる。しかも、地方自治体への交付金は年々、減少する傾向にある。

 この状況の中、売電収入の一部を農山村の発展につながる施策に活用することで、これまで町の予算を充てていた同様の取り組みを、売電収入の一部で賄えるようになり、その分で浮いた予算を、他の用途に使えるようになる。しかも、再エネの売電収入は、長期間、安定的・継続的に期待できるものである。

 これによって、例えば、人口減少の歯止めや雇用創出といった施策に、財源を振り向けられる。同町では、すでに「保育園の保育料を第1子は約半額、第2子以降は無料」、「高校までの医療費を無料」、「学校給食費を高校まで3分の1を補助」といった施策を導入している。今後、さらに子育て支援を手厚くできる可能性が出てくる。

 太陽光発電の場合、用地となる土地の所有によって、地権者だけが特に経済的な利点を得られるのではという指摘も少なくなかったようだ。山本町長は、「現時点で基本計画に盛り込まれている太陽光発電所の候補地は、町内の全世帯の約3300世帯のうち、約330世帯が対象となる。全人口の1万人のうち、家族を含めて約1000人が関連することになり、少なくない町民が恩恵を受ける」と強調している。

 さらに、町の固定資産税収入が増えること、地域の土木・建築関連の雇用、地元資材の利用、維持管理の雇用など、多くの町民に経済的な利点が行きわたると期待している。

 鶏糞バイオマス発電(図4)では、ブロイラーの生産から、副産物といえる鶏糞による発電まで、地域で養鶏業を中心とした経済が循環し、バイオマス発電所による雇用も生み出すなど、理想的な姿の一つとしている。

図4●鶏糞バイオマス発電所の発電機
十文字チキンカンパニーの出力約6.25MW(出所:日経BP)
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 太陽光発電と農業が連携した事業モデルも構想している。施設を使った農業で、太陽光発電電力を使うといったことを想定している。

 町の要請で調整池を整備

 スカイソーラージャパンの出力約2MWの「SSJ軽米・西山太陽光発電所」は、こうして開発された最初の稼働案件となる。軽米町によく見られる丘陵地にある(図5)。

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図5●丘陵地に立地する
傾斜をそのまま生かし、パネルを並べた。積雪対策や豪雨時の排水対策も盛り込んだ(出所:日経BP)

 元は放牧地だった土地など、敷地面積約4万1387m2のほとんどは斜面となっている。傾斜をそのまま生かし、8640枚の太陽光パネルを並べた。

 木を伐採した場所もある。伐採した面積は、1万4100m2となった。

 軽米町からの要請により、整備した設備もある。容積が約150m3の調整池で、想定を超える量の雨が降った際、メガソーラーから敷地外に一気に大量の雨水が流出するのを防ぐためである。

 この調整池のほか、側溝や土嚢などを使い、排水対策を補完している。

 傾斜面がほとんどのため、基礎はコンクリートではなく、金属製の杭基礎を採用した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、日本コムシスが担当した。太陽光パネルはスカイソーラー製の出力260W/枚、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の出力665kW機を採用した。

 積雪量はそれほど多くないというものの、雪は積もる。PCSの基礎を比較的高く築いているのは、積雪対策としている。

●発電所の概要
発電所名SSJ軽米・西山太陽光発電所
所在地岩手県軽米町大字小軽米
敷地面積4万1387.74m2
伐採面積1万4100m2
造成面積1万2931m2
発電事業者Sky Solar Japan(東京都千代田区)
太陽光パネル出力2.24MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1.995MW
年間発電量約200万kWh(一般家庭約700世帯分の消費電力に相当)
総事業費約5億円
EPC(設計・調達・施工)サービス日本コムシス
太陽光パネル中国Sky Solar Holdings製(出力260W/枚、8640枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力665kW機、3台)
工期2016年3月~7月