地域の資金を集めて稼働した徳島・美馬のメガソーラーの5年

予防保全に取り組み、パワコンの修繕も計画通りに

2017/12/05 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテック研究所

 美馬(みま)市は、徳島県の内陸部に位置し、山や川、平地の田畑が織り混ざった、昔ながらの田園風景が残る地域である。吉野川が流れ、県内最高峰の剣山(つるぎさん:標高1955m)も市内に位置する。

 吉野川から少し離れながら、平行するように走る徳島自動車道の脇に、太陽光パネル出力1.189MW、連系出力1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「美馬ソーラーバレイ」がある(図1)。

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図1●美馬ソーラーバレイ
見事な紅葉に囲まれていた。太陽光パネル出力は1.189MW、連系出力は1MW(出所:上は日経BP、下はガイアパワー)
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 藤崎電機(徳島県阿南市)グループのガイアパワー(同)が主体となって開発・運営している。2012年12月に発電を開始し、約5年が経過した。

 ガイアパワーが初めて開発したメガソーラーで、同社はこの後、多くの案件を開発していく(関連インタビュー)。現在、19カ所の発電所が稼動済みとなっている。

 美馬のメガソーラーは、土地から資金、運営まで、地域の企業や市民が多く参加するプロジェクトとなっている。

 土地は、地元の総合建設会社である、北岡組(美馬市美馬町)グループが所有する遊休地を活用した。北岡組グループは、メガソーラーの周辺で建材などの工場を運営するなど、この一帯に多くの土地を所有している。

 北岡組グループは、土地を提供するとともに、ガイアパワーとともにEPC(設計・調達・施工)サービスを担った。

 美馬のメガソーラーの南隣でも、北岡組グループの所有地に出力1.328MWの「美環(みかん)ソーラーバレイ」が開発されている(図2)。このメガソーラーでも、ガイアパワーは発電事業者に一部を出資するとともに、EPCサービスを担当した。

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図2●南隣にある「美環ソーラーバレイ」
上は美馬のメガソーラーの展望台から撮影。4列先の下った先に見えるのが美環ソーラーバレイ。下の画像では、徳島自動車道沿いの台形状の発電所が美馬ソーラーバレイ、そこから下が美環ソーラーバレイ(出所:上は日経BP、下はガイアパワー)
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出資と私募債で地域住民の資金

 「美馬ソーラーバレイ」は、メガソーラーと同名の特定目的会社(SPC)、美馬ソーラーバレイ(美馬市)が発電事業者となる。

 資本金は4550万円で、ガイアパワーが44%を出資するほか、市民団体のメンバーが設立した企業などが出資している。

 また、美馬市などの住民48人と1団体が、一口50万円の私募債を合計49口分、引き受けた。合計で約2450万円となる。私募債の年利は約4%、償還期間は8年間となっている。

 こうして、地域の市民が出資や私募債で資金を提供する「市民参加型」のメガソーラーとなった(図3)。このほか、県の制度を活用した融資も受けている。

図3●地元企業が開発した新たなコンクリート系材料を使った展望台
地域の企業や市民がさまざまな形で参画(出所:日経BP)
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 買取価格は40円/kWh(税抜き)で、建設費は約3億5000万円を要した。年間発電量は、128万9930kWhを見込み、これは一般家庭約350世帯の消費電力に相当する。

 SPCの逢坂彰代表取締役によると、市民参加型のメガソーラーの開発では、事業スキームの構築に苦労したという。地方再生の理念自体には、すぐに賛同を得られたものの、枠組みを築き上げるまでの調整には時間がかかったという。その間に、「県内初のFITに基づくメガソーラー」という称号は逃してしまったと振り返る。

 ガイアパワーでは、地域の活性化を再生可能エネルギーによって実現するという目標を掲げていた。美馬のプロジェクトはその先駆けとなった。地域で土地から資金まで賄い、市民や地域の企業、金融機関とともに、地域で多くを循環させるモデルが実現できたという。

土地の性質への対応にこだわり

 発電設備は、京セラ製の太陽光パネル、藤崎電機製の接続箱、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を採用した(図4)。

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図4●太陽光パネルは京セラ製、接続箱は藤崎電機製を採用
約5年間の稼働中、大きな不具合は発生していないという(出所:日経BP)
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 太陽光パネルの出力は242W/枚で、PCSは昇圧変圧器を一体化した機種を導入した。

 架台はオーストラリアのクリーンエナジー製を採用した(図5)。架台の支柱が杭基礎の役割も担う。この1本杭の基礎と架台の組み合わせは、この後のガイアパワーの太陽光発電所の基本となっていく。

図5●オーストラリアのクリーンエナジー製の1本杭による基礎・架台
この後のガイアパワーの太陽光発電所の基本となった(出所:日経BP)
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 ガイアパワーでは、土地の造成や基礎については、特にこだわりがあると強調する。どの発電所でも、土砂流れや鉄砲水のような雨水の急流を発生させるような開発は、できるだけ避けている。そこには、同社の藤崎耕治社長が大林組の土木の技術者として積んできた経験も生きているという。

 杭基礎の適性や土地に合わせた工法などは、案件ごとに調査や開発を続けている。

 例えば、鹿児島県で開発する発電所の場合、「シラス台地」(鹿児島・宮崎の火山噴出物を多く含む台地)と呼ばれる特徴的な地盤があり、地表を崩してしまうと地山が傷みやすくなる。

 こうした場合、土を大きく動かすような本格的な造成を最小限に留めたり、木を伐採しても根を残したりすることもある。

 木を切っても、根は残しておくことで、雨が降っても従来のように土地が水を吸収し、鉄砲水のように一気に周囲に流れ出したり、土砂が流れたりすることを抑制する。このように、土地をできるだけ傷めずに開発するといった工夫を講じてきたとする。

 さらに、アスファルト系ながら二酸化炭素の排出量を抑制できる工法で、シラス台地上の敷地内を舗装した発電所もある。

 それぞれの発電所が立地する土地の性質を知ることが重要という。自社による現地調査に加え、現地の地盤を熟知する地元企業の協力を得ることなどによって、その土地に最適で、土地をできるだけ傷めない開発手法に取り組んでいるという。

「何もないことを当たり前にする」メンテナンス

 美馬のメガソーラーは、2012年12月の稼働開始から、ほぼ5年が過ぎた。その間、大きなトラブルはなく、発電の状況も良好としている(図6)。

図6●稼働後の5年間で大きなトラブルはなく、発電の状況も良好
2012年12月に稼働開始(出所:日経BP)
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 導入した京セラ製の太陽光パネルは、「経年劣化も感じることがないくらい」という。年間発電量は、当初の計画に対して上振れが続いている。

 他の機器や資材についても、問題は生じていないとする。

 ただし、同社の長浜谷直樹取締役・最高執行責任者(COO)は、「太陽光発電所は、屋外に設備を野ざらしにする性質上、自然環境などに起因する発電設備の外傷は、どんなに理想的な方法で設備を導入したとしても避けられない場合がある」と考えている。そのため、日常的に点検を欠かさず、予防保全を続けていくとしている。

 PCSは、2018年に部品の交換を含む節目の時期を迎える(図7)。メーカーが推奨する修繕計画に基づいて、今後、該当する項目の状態を確認し、交換を含む修繕を実行していくことになる。

図7●部品の交換を含む節目の時期を迎えるTMEIC製のPCS
20年間の買取期間中に大きく3回の節目がある(出所:日経BP)
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 一般的に、メーカーはより安全な運用を実現できるような計画を推奨するため、実際の状態を確認すると、交換を先延ばしできる状態の項目も出てくる。

 ガイアパワーの場合、こうして修繕を先延ばしにできる状態が確認できた項目であっても、基本的には、メーカーが推奨する計画通りに修繕していく方針としている。

 長浜谷COOによると、予防保全を重視し、「何もないことが当たり前の状態を維持するようなメンテナンス」を続けていく一環で、このような方針を採る。

 同社の発電所では、電気主任技術者も自社の有資格者でまかない、O&M(運用・保守)を一貫して自社で担う。

 第1種の電気主任技術者も2人在籍している。このうち1人は、鹿児島県鹿屋市・大崎市に建設中の出力約92MWの電気保安管理業務を担当する。

 それぞれの発電所において、電気主任技術者の資格を持つ担当者が、日常的に巡回して不具合や異常の兆候を見つけると、必要に応じて土木の担当者なども現地に向かい、いち早く対処する(図8)。

図8●パネル同士を結ぶ電線などはすっきり配置
信頼性や保守性を高めるための設計の一つ(出所:日経BP)
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 周辺地域の被災時や、台風の通過や大雨の後などは、状況が落ち着けば当日中、遅くとも翌日には現地に向かい、点検する。

 台風の後、ある発電所で、風に吹かれやすい場所に設置されていた電線を納める金属製のラックが浮き上がっている状況を発見した。その時点で発電に悪影響を及ぼしていなかったものの、予防保全の方針から、その送電先となるPCSの稼働を止めたことがある。

 万が一、ラックの中のケーブルが、風に煽られるなどして損傷し、短絡することを恐れて措置したとしている。

 PCSを停止すると、該当する電線が関係しない接続箱からの送電分まで、発電ロスとなってしまう。このロスを最小化する手法という面もあり、施工中の案件の一つでは、従来の集中型のPCSに加え、分散型PCSを採用した発電所を併設した。分散型にも特有のリスクがあるため、集中型と比べながら利点とリスクを検証していきたいとしている。

 日常的な点検のうち、太陽光パネルの点検については、効率化の余地があるとみている。同社の発電所では、法定点検に加えて、日常的に太陽光パネルの不具合の有無を、電気的に点検している。

 現在は、アイテスの太陽光パネル点検装置「ソラメンテ」を採用し、点検担当者が巡回しながら、持ち運び型の装置を使って点検している。

 この作業を効率化する目的で、ドローン(無人小型飛行体)の活用を検討している。自社の稼働済み発電所だけで19カ所あるため、機体を購入して自社で運用する方針という。点検の効率を上げるだけでなく、ドローンの点検に必要な技術を社内に蓄積しながら、事業全体の効率アップを目指している。

●発電所の概要

発電所名美馬ソーラーバレイ
所在地徳島県美馬市美馬町
面積約1万9000m2
太陽光パネル出力1.189MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1MW
年間予想発電量約128万9930kWh(一般家庭約350世帯分の消費電力に相当)
建設費約3億5000万円
発電事業者美馬ソーラーバレイ(美馬市:ガイアパワー44%、市民による出資会社など56%)
EPC(設計・調達・施工)サービスガイアパワー・北岡組共同企業体
O&M(運用・保守)ガイアパワー
太陽光パネル京セラ製(出力242W/枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力500kW機・2台)
売電開始時期2012年12月16日
売電価格(税抜き)40円/kWh