常磐線沿いに並ぶJRのメガソーラー、雑草対策で試行錯誤

野球場との隣接エリアでは「場外ホームラン」で被害多発

2018/11/13 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 東日本旅客鉄道(JR東日本)・常磐線に乗っていると、友部駅(茨城県笠間市)と内原駅(水戸市)間で整然と並べられた太陽光パネルが目に入る。JR東日本が運営している「内原第一・第二太陽電池発電所」である。

 太陽光パネルの出力が合計約4.2MW、パワーコンディショナー(PCS)の出力が同3.25MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)だ(図1)。

図1●内原第一・第二太陽電池発電所
常磐線の友部駅・内原駅間にある(出所:JR東日本)
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 常磐線の上下線に挟まれ、東西に長く連なる土地のうち、未利用だった約6万9000m2の土地に太陽光発電設備を設置した。固定価格買取制度(FIT)を活用して開発し、2015年2月に売電を開始した。常磐線に乗り、車窓からパネルを目にしたことがある読者も少なくないだろう。

 JR東日本は、「内原第一・第二太陽電池発電所」と同じように、自社の鉄道路線の周囲などに所有している遊休地を使い、複数の太陽光発電所を開発・運営している。

 FITを活用して自社の遊休地に開発した太陽光発電所は 9カ所・合計出力約10MWあり、2017年度は合計約1300万kWhの発電電力を電力会社に売電した。

 内原第一・第二太陽電池発電所のほか、新城館トンネル上部太陽電池発電所(福島県須賀川市:東北新幹線の新白河駅~郡山駅間のトンネル上)、花巻愛宕太陽電池発電所(岩手県花巻市)、秋田天王太陽電池発電所(秋田県潟上市:男鹿線の追分駅~出戸浜駅間、関連ニュース)、秋田追分太陽電池発電所(同市:奥羽本線の追分駅~大久保駅間)、秋田泉太陽電池発電所(秋田県秋田市:奥羽本線の秋田駅~土崎駅間)などが稼働済みとなっている。

 鉄道関連施設の敷地内に開発し、FITによる売電ではなく、自社の鉄道用系統内で発電電力を活用しているメガソーラー(大規模太陽光発電所)もある。京葉車両センター(千葉県千葉市美浜区)内の出力約1.0MWである(関連コラム:メガソーラーの電力で京葉線が走る! JR東日本が電力網に導入)。

鉄道や農場の運営を阻害しない

 常磐線の友部駅・内原駅間のメガソーラーは、自社所有の遊休地にFITを活用して導入する初めての案件だった。

 鉄道会社は、JR東日本に限らず、線路や駅、車庫のほかに、さまざまな付帯施設を持ち、周辺に多くの土地を所有している。その中には、未活用の土地もある。

 JR東日本が、こうした遊休地の中から、FITを活用した太陽光発電所の候補地を絞り込んだ。「一定の規模の太陽光発電所を建設できるだけの広さがある」、「日射量に恵まれている」、「比較的造成の必要が少ない」などの条件を満たす場所を検討した。

 これらの条件を満たしても、線路の移設や建物の新築など、将来的に活用する可能性の残っている場所は、候補地から除外した。

 友部駅・内原駅間の土地は、こうした条件をクリアしていた。同社が線路沿いに開発した稼働済みの太陽光発電所の中で最大の出力規模で、かつ、常磐線の車窓からよく見え(図2)、乗客へのアピールにもつながる利点もあった。

図2●列車が目の前を走る
乗客へのアピールにもなっているという(出所:日経BP)
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 太陽光パネル出力は合計で約4.2MW、PCS出力は合計で3.25MWとなっている。第一発電所は、敷地面積が約4万9000m2で、パネル出力が約2.6MW、PCS出力は約1.99MWとなっている。第二発電所は、第一に比べて少し規模が小さく、敷地面積は約2万m2、パネル出力が約1.6MW、PCS出力が1.26MWとなっている。

 第一・第二発電所ともに、1カ所に太陽光パネルが並んでいるわけではなく、少しずつ離れた複数の区画にわかれてパネルが並んでいる。

 この理由は、研修施設などの鉄道関連施設、グループ会社が運営している農地、同社の水戸支社の野球部が使っているグラウンドといった施設の間に、太陽光発電所の用地となった遊休地が分散して位置していたためである(図3)。

図3●鉄道の研修施設、農場、グラウンドなどの施設の間の土地を活用した
第一発電所は三つの区画、第二発電所は二つの区画に太陽光パネルを並べた(出所:日経BP)
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 細長い土地に特有の状況もあった。二つの発電所は系統点が異なり、東京電力グループの異なる支店と、連系協議を進めることになった。細長い土地の東と西では、近隣する高圧配電線が異なるだけでなく、管轄する電力会社の支店まで異なっていた。

 太陽光発電設備の設置工事は、鉄道の運行や研修、農場の運営などに支障のないように進める必要がある。これも、鉄道関連特有の難しさと言える。

 着工した2014年4月から、売電を開始した2015年2月まで、約10カ月を要した。太陽光パネル出力が合計約4.2MWという規模で、造成はほぼ不要という条件を考えると、一般的な発電所に比べて施工期間は長い。

 同社が線路沿いの遊休地で開発・運営している他の太陽光発電所でも、似たような工期となっており、友部駅・内原駅間のメガソーラーの工期が特別に長いわけではないという。

 線路に挟まれた土地での施工には、例えば、資材の搬入時に、踏切や専用通路を通るなど、一般的な太陽光発電所に比べると、時間を要する要因が多い。

 発電設備の設置に関しても、列車が線路を通過する前後の一定の時間は、通行や作業などが禁じられている。

 こうした鉄道に特有な条件を満たし、必要な安全措置を講じた上で施工する必要がある。施工は、こうした鉄道関連施設の施工条件を良く知る企業に委託した。

 グループ会社の農地の運営も妨げてはいけない。トラクターなどの農機の通行や、農作業に支障のない設備配置、施工の作業を工夫した。稼働後も、農地から一定範囲の場所には、除草剤を使わないことになった。

2種類のパネルとPCS

 設計は、自社で設計する場合のほか、外部に委託する場合もある。発電設備については、開発する発電所ごとに、国内の大手メーカー数社の製品を比較して、その発電所の条件に合った候補を絞り、性能や信頼性、価格などから総合的に判断して選んでいるという。

 友部駅・内原駅間のメガソーラーの場合は、第一発電所と第二発電所で異なる発電設備を使い分けている(図4)。

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図4●異なるメーカーの発電設備を導入
左はシャープ製の太陽光パネル、右はソーラーフロンティア製のパネルとTMEIC製のPCS(出所:日経BP)

 第一発電所は、太陽光パネルがシャープ製、PCSは富士電機製、第二発電所は、パネルはソーラーフロンティア(東京都港区)製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 太陽光パネルの設置角は、いずれも10度を基本とする。ただし、第一発電所のシャープ製パネルは、一部を20度に傾けている。

 売電を開始してから、約3年半が経過した。これまでの発電状況は、当初の予想発電量よりも10~20%上振れし、おおむね順調に推移している。第一と第二の太陽光パネルの違いによる発電量の差は、ほぼ感じていないという。また、現在のところ、大規模な修繕なども行っていない。

野球の大飛球で太陽光パネルが割れる

 O&M(運用・保守)については、社内で独自の保安規程を定めている。この保安規程に従って管理しつつ、電気保安管理業務については、電気保安法人に委託している。

 発電設備の遠隔監視システムとして、オムロンの「ソラモニ」を導入している。第3世代(3G)携帯電話の通信を利用したシステムで、発電設備が故障したり、系統側の異常などの障害が発生した時には、その障害の詳細情報を記したメールが送信される。

 発電量の予想と実績を比較して監視する機能もあり、予想に比べて実績が一定以上に下回った場合にもメールが送信され、いち早く把握できる。

 遠隔監視のシステムや手法は、JR東日本の他の太陽光発電所と共通化してはいない。それぞれの発電所の管理や運営は、立地する場所を管轄している支社に委ねられているためという。ただし、ここにきて発電所数が増えてきたことから、それぞれの支社の太陽光発電所の管理担当者を集め、知見を共有する取り組みを始めた。

 友部駅・内原駅間のメガソーラーにおいて、多く起きている発電設備のトラブルは、太陽光パネルの割れである。第一発電所の特定の区画で多く起きている(図5)。

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図5●打球が当たって割れたと見られる太陽光パネル(上)
下には野球の硬球が落ちていた(左下)。ライト側のフェンスの外に位置している(右下)(出所:日経BP)

 その場所は、水戸支社の野球部が使っているグラウンドの隣にある。野球のフィールドでライトの方向にあたる。ライト側のフェンスを越えて、硬球がこの区画内に落下した際、ボールがパネルに当たって割れる。

 センターの方向でも、フェンスを越えれば同じ区画のパネルに打球が落ちる可能性がある。しかし、距離がライト側より離れているためか、実際にはそれほど割れていない。ライト側のフェンスを越える長距離ヒッターがいるようで、打球がフェンスを越えてこの区画内まで達した場合、野球部から連絡が入るという。

 JR東日本では、このパネルの割れを含み、故障などが生じた際は、早期の復旧に努めているとしている。

雑草で苦労、新手法「インターレジェンス」も検証

 運営で苦労しているのは、雑草だという。当初は元の土のまま、売電を始めた。しかし、隣に農地があることからも、草の生育に向く場所で、太陽光パネルを設置した区画が、あっという間に雑草に覆われた。

 雑草対策として、最初に講じたのは、人手による草刈りだった。しかし、これは手間と時間、コストがかかり過ぎるだけでなく、作業者の体力的な負担が大きい。

 そこで、除草剤と防草シートの活用に変えた(図6)。除草剤と防草シートを併用するのは、農場の運営に影響がないように、農地から一定の範囲内では、除草剤を使うことを控えているためである。

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図6●除草剤と防草シートの境界付近
上の画像の左が除草剤を使っている場所、右が防草シートを使っている場所。ツル性雑草の伸び具合からも除草剤の効果がわかる(出所:日経BP)
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 鉄道の研修施設やグラウンドに近い区画では、除草剤を使っている。除草剤の散布に際しても、作業の前に、農地の運営者の理解を得た上、降雨や強風時には作業しないといった約束に基づいて実施している。

 農地に近い場所では、防草シートを使っている。それでも完全に雑草を防ぎ切れないため、必要に応じて除草している。

 さらに、「インターレジェンス(IL)」と呼ばれる、新たな手法を試験的に導入しはじめた(図7)。この手法は、重曹を高圧で除草に吹き付けることによって、雑草の細胞が急速に壊死する効果を利用する。安全性が高く、一定以上の効果を期待できる雑草対策として注目しているという。

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図7●インターレジェンス法を試し始めた場所
雑草の強さを物語る。今後、時期や回数を変えながら、重曹を高圧で吹き付ける作業を重ねていく(出所:日経BP)
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 この雑草対策は、数年前に、JR東日本の電気関連の部署から、各支社の電気関連の部署へと情報を共有していた手法だった。

 友部駅・内原駅間のメガソーラーの管理作業を担っている水戸支社の電気関連の部署が敷地内で検証を始めた段階で、まずは場所ごとに重曹を高圧で吹き付ける回数や頻度、時期などを変えながら、効果を見ていきたいとしている。

「エコステ」で太陽光を自家消費

 JR東日本では、遊休地を活用した単独での発電事業のほか、外部の土地を活用し、合弁で展開している再生可能エネルギー発電事業もある。

 グループ会社のJR東日本エネルギー開発(東京都港区)と福島県富岡町などの出資で富岡町に建設・稼働した30MWのメガソーラー(関連ニュース)、同じくJR東日本エネルギー開発とレノバなどによる最大1GWの秋田県由利本荘市沖における洋上風力発電の計画(同ニュース)、住友林業や住友大阪セメントとによる青森県八戸市における12.4MWのバイオマス発電所(同ニュース)などがある。

 また、再エネや省エネ技術を特定の駅に集中的に導入しており、こうした駅を「エコステ」と呼んでいる。「エコステ」には、省エネ・創エネ・エコ実感・環境調和という四つの切り口があり、駅の環境に応じて最適なテーマを重視して導入している。

 そのうち、太陽光発電設備を導入した駅は、福島駅(関連ニュース)、武蔵溝ノ口駅(同ニュース)、小淵沢駅(同ニュース)、男鹿駅(同ニュース)など8駅あり、発電電力は駅構内で自家消費している。年間の合計出力は約60万kWhとなっている。

 また、駅ビルなどから排出される食品廃棄物を活用したガス発電にも、JFEグループとの合弁で取り組んでいる(関連ニュース)。

●発電所の概要
発電所名内原第一太陽電池発電所、内原第二太陽電池発電所
所在地常磐線の友部駅~内原駅間(茨城県笠間市・水戸市)
(第一:笠間市・水戸市、第二:笠間市)
敷地面積合計約6万9000m2
(第一:約4万9000m2、第二:約2万m2)
太陽光パネル出力合計4.2MW
(第一:約2.6MW、第二:約1.6MW)
パワーコンディショナー(PCS)出力合計3.25MW
(第一:約1.99MW、第二:1.26MW)
年間予想発電量合計約437万kWh
(一般家庭約1200世帯分の消費電力に相当)
発電事業者東日本旅客鉄道
設計東日本旅客鉄道
調達・施工非公開
運用・保守東日本旅客鉄道
太陽光パネル第一:シャープ製、第二:ソーラーフロンティア製
(第一:出力245W/枚・1万704枚、第二:165W/枚・9824枚)
PCS第一:富士電機製、第二:東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(第一:出力1000kW機・1台、990kW機・1台、第二:出力630kW機・2台)
着工2014年4月
稼働開始2015年2月
固定価格買取制度(FIT)上の売電価格非公開
売電先非公開