米沢で稼働する雪に負けないメガソーラー

太陽光パネルのリサイクル事業にも挑戦

2016/09/20 00:00
金子憲治=日経BPクリーンテック研究所

 米沢市は山形県の最南端に位置し、吾妻連峰の裾野に広がる盆地に位置する。同県の中でも雪が多く、特別豪雪地帯に指定されている。年間累計積雪深は10mに達することがあるほか、市街地でも平年の最高積雪深が約1mに達する。

図1●約2MWの「ハイブリッド発電所米沢」(出所:日経BP)
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図2●設置角は45度、設置高は2.3mにした(出所:日経BP)
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 出力約2MWのメガソーラー(大規模太陽発電所)「ハイブリッド発電所米沢」は、そんな雪国の畑に囲まれた一角にある(図1)。地面から太陽光パネルの最低部までの高さは約2.3m、アレイ(パネルの設置単位)後部の最高点は約5mに達する。

 設置角を45度まで傾けてパネルに積もった雪を滑り落ちやすくしつつ、設置高を大きくとって落ちた雪が、パネル最低部に届きにくくした。

 2014年11月に竣工以来、すでに冬を2回、超えた。「最初の冬は、重機で1回、雪の山を除雪したが、2回目の冬は雪が少なく、雪山の頂を人手で崩すだけで、重機は入れずに済んだ」。同発電所の開発事業者で、稼働後、Q&M(運営・保守)を担当するエーシー(米沢市)の大友裕一社長は、「雪に強いメガソーラー」に自信を深めている(図2)。

全国平均に負けない発電量

 エーシーは、東北や北海道で再生可能エネルギー事業を展開するベンチャー企業。「ハイブリッド発電所米沢」の事業会社には、エーシーのほか、地元企業2社が出資した。真空製膜装置部品の洗浄再生を手掛けるミクロンメタル(米沢市)と、廃ガラスびん・蛍光管・乾電池のリサイクルなど手掛けるウェステック山形(山形県高畠町)だ。

 大友社長は、「雪の多い米沢でも、太陽光発電は十分に成り立つ」と言う。2015年度の年間発電量は約231万kWhで、予想の199万kWhよりも16%上振れしている。設備利用率は14%を超えており、全国の平均的な数値に比べ遜色ない水準となっている。

 「夜中にパネルに積もった雪は、翌朝、雪が止めば午前中にほとんど落ちる。雪によるロスは、思ったほどない。むしろ一面の積雪で日光が反射し発電量は増える。年間を通じて相対的に気温が低いので、夏場でもそれほど発電効率が落ちない効果もあり、1年間で見ると発電量は全国平均に負けない」(大友社長)。

 除雪作業は、かなりの大雪の年でも、想定した一冬1~2回で済んでいるものの、サイトまで重機を移動させるのに手間取ったことから、今冬までに、大型ホイールローダーをリースで調達し、サイト内に常に待機させることにしたという(図3)。

図3●一冬に1~2回、重機で雪の山を除雪する(出所:エーシー)
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スパイラル杭を深さ4mまで埋め込む

図4●建設中の様子。4mのスパイラル杭を使った(出所:日経BP)
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図5●太陽光パネルは長州産業製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を導入(出所:日経BP)
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 雪国に対応した架台設計では、北日本サッシ工業(北海道北見市)が北海道で蓄積したノウハウも生きている。基礎は、スパイラルタイプの鋼管杭を地中4mの深さまで埋め込んだ(図4)。柱と梁に加え、斜めに入れる方杖(ほうずえ)を多用し、積雪荷重を強化した。柱には厚さ3.2mm、梁と方杖には、厚さ2.3mmの溶融亜鉛めっきした鋼材を使った。

 厳しい気候条件を考慮し、太陽光パネルは長州産業製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製など、主要設備は品質と耐久性に定評のある国産メーカー製を揃えた(図5)。

 建設費用の約6億円は、地元の金融機関から融資を受けた。実績のある国産メーカーにこだわったのは、バンカビリティ(投資適格性)を高める意味もあった。稼働して2年経ち、厳しい冬を通じてほとんどトラブルがないという。「近隣でトラブルのある太陽光発電所を見るにつけ、国産メーカーにこだわってよかった」と、大友社長は打ち明ける。

耕作放棄地を農地転用して建設

 大友社長は、米沢市で空調設備関連の会社を経営しているが、東日本大震災後、再エネが注目されるなか、新事業として太陽光発電に取り組むことを決意し、エーシーを設立した。これまでに開発事業者として5カ所の太陽光発電所を手掛けた。

 「ハイブリッド発電所米沢」は、最初の案件だった(図6)。「耕作していない農地を、メガソーラーに活用できないか」――。こんな相談を受けたのは、固定価格買取制度(FIT)がスタートして間もなくだった。相談された農地は、土地区分上は「第1種農地」で、原則的に転用して太陽光発電所を建設することはできない。

図6●畑に囲まれた「ハイブリッド発電所米沢」(出所:エーシー)
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 とはいえ、10年以上、耕作されずに荒れ放題となり、雑木林のようになっていた。「未利用地を活用して発電事業を行えば、地域が活性化するはず」と考え、農地転用の道を探った。「第1種農地」の壁は高かったものの、農林水産省が主導した農山漁村再生可能エネルギー法が施行され、この枠組みを使って農地転用が可能になった。

 同法は、太陽光発電事業の運営を通じて農林漁業の健全な発展に貢献することを求めている。「ハイブリッド発電所米沢」では、売電収益の一部を農業組合法人など地域の団体に拠出することで、こうした法の狙いを実現している。

スチールコンテナを応用した基礎・架台

 エーシーは、「ハイブリッド発電所米沢」の共同出資者となった、ウェステック山形、ミクロンメタルとの太陽光関連事業を発展させている。山形県高畠町と北海道石狩市では、ウェステック山形の出資する太陽光発電所を開発した。

図7●高畠町に建設した出力500kWの発電所(出所:エーシー)
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図8●「基礎一体型架台」を採用。前に立つのはエーシーの大友裕一社長(出所:日経BP)
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図9●リサイクル事業で製造した廃ガラスペレットなどをコンテナに入れた(出所:日経BP)
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 高畠町の案件は、出力500kWで2015年9月に完成した(図7)。ハイブリッド発電所米沢と同様、太陽光パネルは長州産業製、PCSはTMEIC製を採用した。架台も同じ北日本サッシ工業だが、置き基礎にスチールコンテナを使った「基礎一体型架台」を採用した(図8)。

 農業用スチールコンテナを応用したもので、本州での設置は初めてという。コンテナの中に砂利などを入れ、その重みで固定する。土を掘り返す必要がなく、コンクリート基礎に比べて工期が短縮できるという。高畠町の発電所では、事業主のウェステック山形がリサイクル事業で製造した廃ガラスペレットなどをコンテナに入れた(図9)。

 エーシーでは、自社発電所の「ハイブリッド発電所米沢」にパネルを増設し、過積載の比率を上げることで、発電量の増加を目指している。加えて、他社の既存の太陽光発電所に対しも、連系出力を上回るパネル容量の増設を提案していく予定だ。こうした増設には、基礎一体型架台が向いていると見ている。

低コストのガラス分離技術を見出す

 また、ミクロンメタルとは、太陽光パネルのマテリアルリサイクル(材料の再利用)で連携している。2017年3月から共同で、パネルのリサイクル事業を展開する。

 大友社長は、「使用済みの太陽光パネルは、いずれ日本全国から大量に排出されることになる。その際、広域に運搬するのではなく、各地域で地元企業が最初の分解処理を担っていくことが、効率的なリサイクルシステムの構築に必須」と、考えている。

図10●研磨剤を噴射するブラスト装置でカバーガラスを分離(出所:日経BP)
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図11●EVA(封止材)を傷付けずにガラスを剥離できる(出所:日経BP)
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 そのためには、「地域の企業でも、無理なく投資できる低コストのパネル分解装置が求められる」(大友社長)。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は昨年9月、太陽光パネルのリサイクル技術の実証を民間企業に委託した。同実証事業では、加熱したカッターで、ガラスとEVA(封止材)を分離する方式を採用した。こうした方式だと、装置が大掛かりになり、初期投資が上がってしまう課題があった。

 そこで、エーシーは、ミクロンメタルに依頼し、研磨剤を使った低コストのガラス分離技術を開発し、実用化にめどを付けた(図10)。この技術を活用し、来年4月から、使用済みパネルのリサイクル事業に乗り出すことにした。

 仕組みは、まず使用済みパネルを有料で引き取り、アルミニウム製フレームと電極・端子ボックスを外した後、カバーガラスとEVA(封止材)を分離する(図11)。分解した各部材は、それぞれの素材の専門リサイクル事業者に有価物として販売する。

1枚当たり8分でカバーガラスを分離

 現在、東北地方では太陽光パネル1枚の処理料金は5000~6000円とも言われるが、「低コストのガラス分離技術を独自に開発したことで、半額近くの大幅に安い処理料金で、リサイクル処理を請け負えるめどがたった」(エーシーの大友裕一社長)という。

 カバーガラスを分離する手順は、研磨剤を噴射するブラスト装置の中に使用済みパネルを格納し、カバーガラス表面に研磨剤を高圧で吹き付ける、というシンプルなものだ。1枚当たり8分ほどで、EVAとガラスを完全に分離できるという。

 多様な研磨剤を活用できるのが特徴で、選択した研磨剤によっては、分離したガラスと研磨剤を分離せずに、一緒にセメント材料に利用できる。EVAはセル(発電素子)を挟んでおり、電極に銀を多く含んでいるため、精錬技術を持つリサイク事業者などに有価で販売できるという。

 今回、ミクロンメタルの開発した手法だと、「月2000枚程度の処理量の場合で、初期投資は約1000万円で済み、数千万円もの装置への投資が必要な従来の手法に比べ、大幅に低コストを実現した。この程度の投資規模であれば、地方の企業でも担っていける」(大友社長)。今後、どんな形で各地域にパネルリサイクルを展開していくか、検討している(関連記事)。

●設備の概要
発電所名ハイブリッド発電所米沢
住所山形県米沢市大字李山字南原パイロット六2657-1
発電事業者合資会社・ハイブリッド発電所米沢(出資者・エーシー、ミクロンメタル、ウェステック山形)
設置面積3.8ha
出力1.89MW(連系出力)、約2MW(太陽光パネル容量)
年間予想発電量199万2000kWh
EPC(設計・調達・施工)サービスエヌデック
Q&M(運用・保守)エーシー
太陽光パネル長州産業製(単結晶シリコン型・265W/枚・7744枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(630kW機・3台)
架台北日本サッシ工業製
杭基礎三誠製
着工時期2014年5月
竣工時期2014年11月
買取価格36円/kWh(税別)