駐車台数を確保し、事業性を維持

 三重交通のバス営業所のうち、一定以上の広さの駐車場を備えているのは、10カ所だった。この中でも、より事業性の高そうな3カ所に、太陽光パネル付きの屋根を新設することを決めた。

 3カ所合計で、約6.5億円を投資する。売電価格は36円/kWh(税抜き)で、最終的な事業計画では、全額を金融機関からの借り入れで賄った場合でも、売電開始から14年目で完済できるめどが立った。

 この決定に際して、「バスの車両を大切にする姿勢が強い会社のため、屋根を新設することそのものには理解を得やすかった。しかし、国内では前例のない取り組みだけに、設計や事業計画の策定は慎重に進め、承認されるまで期間を要した」という。

 一般乗用車向けのカーポート以上に安全性、堅牢性が求められる。どのような規模や強度の構造が適切なのか。運用上、駐車できる台数は減らさないように配置したい。そして、そうした構造を、いかにコストを抑えながら実現するのかなど、二律背反となる検討要素が多かった。

 例えば、バスの出し入れの際、接触などのリスクを減らす面から、柱の間隔を広くとり、数を少なくしたい。一方で、柱の本数を減らすほど、1本の柱に求められる強度や耐久性が増し、結局はコストに跳ね返ってくる。こうしたバランスが難しい。

 国内に前例がないため、外国の事例を参考にしようとした。海外には、太陽光パネル付きの屋根を導入した大型バスの駐車場がある。

 ところが、海外のバス用駐車場は、収容台数に比べて面積が十分に広いことから、同社が直面した配置面などの制約はほぼなく、ゆったりとした構造で設計されており、参考にならなかったという。

 最終的に、一般的な大型バスの駐車スペースとなる、横幅が約3.5m、奥行きが10m以上という区画に対して、太さが約20cmの柱を約7mの間隔で配置し、屋根を支える構造とした(図3)。横2台分の駐車スペースごとに、柱が立つことになる。

図3●出入庫時の安全性とコスト面から、柱の本数をできるだけ減らしたい
太さが約20cmの柱を約7mの間隔で配置(出所:日経BP)
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 奥行き方向では、駐車スペースごとの出入り口からできるだけ離した位置に配置することで、出し入れの際に接触するリスクを減らした。奥行き方向に見ると、大型バスの駐車スペースの出入り口付近に柱はなく、屋根はひさしのように突き出している。

 駐車できる大型バスの台数は、1カ所あたり44台(22台・2列)、2カ所合計で88台となった(図4)。屋根の設置前は同じ区域で1カ所当たり46台(23台・2列)、2カ所合計で92台だったので、収容台数の減少は4台に抑えられた。

図4●1カ所あたり44台のバスが駐車
収容台数の減少をいかに抑えるかも課題だった(出所:日経BP)
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 また、屋根の内側に照明も付けた。防犯機能を高めるためという。バスの営業所は、定期券の販売所や、路線バスの停留所を兼ねている場合があることを考慮した。