「太陽光パネルが台風による屋根の損傷を抑えた!?」、甲府の屋根上メガソーラー(前)

大雪により約3週間、発電できない事態も

2019/05/14 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 山梨県のほぼ中央に位置する甲府市白井町。中央自動車道・甲府南インターから石和方面に抜ける国道140号(笛吹ライン)に近接している倉庫の屋根上に、4354枚の太陽光パネルを並べた出力約1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある(図1)。

図1●甲府南インター付近に立地
(出所:斉藤倉庫)
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 この倉庫を開発・運営している斉藤倉庫(東京都調布市)が設置し、「甲斐の国メガソーラーステーション」と名付けた(メガソーラー探訪:2014年9月の掲載記事)。

 斉藤倉庫にとって、固定価格買取制度(FIT)を活用した太陽光発電は、取り組みやすい新規事業だった。

 本業である倉庫業は、土地を探して倉庫を建てた後、約10年かけて建設費を回収する。

 太陽光発電も、長期間で投資資金を回収するストック型の事業モデルである点は同じで、親和性がある。しかも、FITを活用すれば、買取価格が値下げされないという倉庫業にはない魅力があった。

 倉庫会社にとって、屋根に追加するのは金具くらいで、新たな雇用の負担もほとんどない。これだけ収益性の安定した事業は他にないとしている。

 甲府にある倉庫は、発電事業に向くと考えた。山梨県は日本で最も日照時間が長い上、倉庫の近辺には、日光を妨げる高層建築物などがない。

 しっかりとした発電システムを設置すれば、事業リスクは極めて小さいだけでなく、FITによる買取期間が終わった後も、倉庫のテナント企業に安い電力として使ってもらうなど、売電事業を継続しやすいと考えた。

 同社の場合、本業の倉庫業でも、長期信頼性や損傷などのリスクに対する警戒感が他社よりも強いとしている。初期投資が多少増すとしても、できるだけ安全性や信頼性に優れる設備を導入するとともに、太陽光パネルを設置した屋根の耐荷重性も十分に余裕を持っているという。

 こうした考え方は、発電を開始した後、自然災害によるトラブルを最小限に防ぐ効果にもつながり、思わぬ利点も生んでいる。

 屋根の耐荷重性では、本来必要だった費用に比べて、約3倍を投じた。出力約1MW分の太陽光パネルを屋根上に並べようとすると、屋根の一部に必要な耐荷重性である約14kg/m2を満たせない部分があることへの対応だった。

 この場所では、屋根を補強して耐荷重性を確保した。本来、必要な耐荷重性を得るための補強は、約150万円の費用で実現できた。しかし、せっかく補強するのならば、想定外の事態にも対応できるように、より安全性を高めようと考え、その3倍以上の約500万円を投じて補強した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、テス・エンジニアリング(大阪市)に委託した。太陽光パネルは京セラ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図2)。いずれも、国内メーカーの中でも長期的な信頼性に優れた製品を選ぶという方針を貫いた。

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図2●京セラ製の太陽光パネル(上)、TMEIC製のPCS(下)
(出所:日経BP)
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 発電をはじめた2013年6月以降、それぞれの年に発電量の増減に影響するトラブルに見舞われながらも、年間を通してみると、どの年も当初の事業計画よりも約1割は多い実績で推移している。2017年は計画に比べて約13%増、2018年は同10%増となった。

 当初の事業計画では、年間で約119万kWhだった。これに対して、それぞれの年の実績は127万~130万kWh、累計では748万kWhとなっている。

断熱効果で空調費を削減

 倉庫の屋根の上に、太陽光パネルを設置することによって、発電以外の利点も生じた。例えば、太陽光パネルが、屋根の断熱性を高める効果である。

 屋根から倉庫内に、屋外の高温が伝わることを抑える効果が生じる。これによって、夏の暑い時期に、冷房の費用が減る効果がある。冬になると、逆に太陽の熱を妨げる効果が生じるが、倉庫内の室温を外に逃がさない保温効果の方が高く、暖房の効きは良くなる。

 こうした効果は、閉じきった建物ならば、より高い効果を得られる可能性がある。倉庫の場合、側壁のシャッターを開放して使うために、効果の度合いを数値化することは難しいようだ。

 それでも、効果は実感できるという。例えば、冷房の温度を28℃に設定する夏の高温時には、これまで冷房時にも設定以上の温度になっていたが、太陽光パネルの設置後は、28℃を維持できるようになった。甲府の倉庫を構成している二つの棟のうち、古い棟のテナント企業の電気料金も目に見えて下がっているという(図3)。

図3●テナント企業の電気代が目に見えて下がった
(出所:斉藤倉庫)
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屋根上太陽光の思わぬ利点を実感した2018年秋の台風

 2018年秋に甲府周辺で大きな被害をもたらした台風の通過時には、強風による屋根そのものへの被害が、屋根上の太陽光パネルの効果で、本来よりも軽減されたのではないかと実感させられたという。

 この台風により周辺地域では、建物のシャッターや屋根材が損傷したり、ゴルフ場で数百本もの木が倒れたりする被害が相次いだ。

 甲府の倉庫は、川の近くに立地し、台風時には特に風が強くなる環境にあった。そのため屋根の端部を保護する「幕板」と呼ばれる屋根材の一部が、下からめくれ上がるように剥がれる被害が生じた(図4)。

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図4●めくれ上がった幕板
現在は下のように修繕ずみ(出所:斉藤倉庫、下は日経BP)

 仮に、太陽光パネルを搭載していなければ、もっと広い範囲で損傷していたか、別の屋根材にまで被害が広がっていたかもしれないと、同社では見ている。太陽光パネルによる重しのような効果が生きたと感じている。

 この台風では、もう一つ、屋根材が損傷した。山型の斜面を構成している折板の1カ所に「割れ」が生じて広がり、中の断熱材が露出したのである(図5)。

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図5●折板の間から露出した断熱材
現在は下のように修繕ずみ(出所:斉藤倉庫、下は日経BP)
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 この損傷による倉庫内への被害は、まったくなかった。断熱材が露出しても、倉庫内などに水が漏ることはなかった。これは、もともと屋根材を、二重の折板屋根で構成していたことによる。

 屋根の耐久性などだけを考えれば、一重で十分だった。しかし、夏の暑さが厳しい地域であることから、倉庫内の環境を考慮して、二重の折板屋根とした。これも、初期投資が多少増しても、最終的に事業性が高まると考える同社の方針が生きた例の一つとなった。

台風で割れたパネルの交換、経産省はいまだ認めず

 この台風の通過後、屋根上の太陽光パネルのうち、1枚のカバーガラスが割れていることを発見した(図6)。甲府の屋根上メガソーラーで、これまで割れたパネルはこの1枚のみとなっている。

図6●カバーガラスが割れた太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 割れた原因は不明だが、台風の強風で何らかの異物が倉庫外から飛んできて、太陽光パネルに当たって、カバーガラスが割れたのではないかと推測している。

 ただし、この太陽光パネルの周辺には、落下物は見つからず、強風で飛んできて当たり、そのまま強に乗って屋根の外に飛散したのではないかと見ている。

 問題は、半年以上経った現在でも、この太陽光パネルを交換できていないことである。

 同社では、火災などの安全上のリスクにつながることから、すぐにでも交換したいと考えていた。しかし、導入した出力242W/枚の太陽光パネルは、京セラは製造しておらず、在庫も残っていない。そこで、割れたパネルの交換品として、出力が1W多い243W/枚の太陽光パネルを予定している。

 この変更には、1枚の交換であっても、経済産業省に変更を申請し、同省が認める必要がある。この変更をすぐに申請したものの、未だに経産省が認めていない状況にある。同省の事務手続きが滞っているためと見られる。

 こうした状況にも、斉藤倉庫では、「売電ロスを最小化しようと、経産省から変更が認められる前に、交換してしまう発電事業者もいるだろう。しかし、われわれは、愚直すぎるかもしれないが、ルールは遵守し、認められてから交換することにしている。できるだけ信頼性が高く、良い設備を導入することも、法を遵守することも同じで、そうした姿勢を貫き続けることが、長期的な成功を導くと信じている」としている。

 割れた太陽光パネルは、カバーガラスが割れているだけでなく、セル(発電素子)の損傷による焦げが見られる(図7)。ガラスが割れたことで、副次的に生じたと見られる。

図7●電極やバックシートの一部が焦げている
(出所:日経BP)
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 屋根上の太陽光パネルの不具合や損傷によって、何らかの拍子にアーク(火花)などが生じ、屋根材に延焼するといった事故は、全国的に懸念されている。住宅に関しては、消費者庁から報告書が発表され、経産省にも適切な対応を求めている(関連コラム:「住宅太陽光の火災事故はパネルの不良にも起因」、同コラム:不良パネルは、こうして発火・延焼した!)。

 こうした中、台風の強風による損傷パネルの交換に関する変更申請を長期間、認めないまま放置しておくという状況も、安全確保の視点から改善が求められそうだ。

2014年の大雪でも無事、発電は約3週間停止

 大雪に見舞われたこともある。この時には、必要以上のコストをかけて耐荷重性を増していたことが功を奏した(図8)。

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図8●2014年2月の大雪後の様子
(出所:斉藤倉庫)
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 稼働してから約半年後の2014年2月に、2週間連続で関東甲信地方に降った記録的な大雪による。

 甲府市内の積雪は、平均で1m40cmに達した。倉庫の屋根には、一度目の雪が溶けきる前に、二度目の雪が積もった。

 積雪後はまず、テナント企業が、倉庫を通常通りに使えるように復旧させることに注力した。ここで生きたのが、屋根の耐荷重性を、余裕を持たせて補強していたことだった。

 太陽光パネルを載せるために必要な耐荷重は、約14kg/m2だった。この数値は、ちょうど、水を屋根の上に高さ1.4cm分のせた時の重さに相当するが、実際の雪による荷重は、さらに重くなる。

 もし、必要最小限の補強にとどめていたら、補強した場所が損傷していたかもしれないという。結果的に、屋根の折板の一部が曲がったものの、躯体そのものに問題は生じなかった。

 二度目の積雪の約3週間後、ようやく太陽光パネルの表面が見えるまでに除雪できた。それまで、除雪を控えていたのは、屋根の面積が約1万m2と広く、その上に積もった雪を降ろすための場所を確保できないからである。

 こうした結果、この月のうち満足に発電できたのは、一度目の積雪までの約1週間足らずに留まった。

●発電所の概要
発電所名甲斐の国メガソーラーステーション
所在地山梨県甲府市白井町1410番地
(斉藤倉庫の甲府倉庫)
発電事業者斉藤倉庫(東京都調布市)
太陽光パネル出力1.053668MW
パワーコンディショナー(PCS)出力0.99MW
年間予想発電量 約119万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービステス・エンジニアリング(大阪市)
O&M(運用・保守)テス・エンジニアリング
太陽光パネル京セラ製
(多結晶シリコン型、242W/枚、4354枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力500kW機・1台、出力490kW機・1台)
売電開始日2013年6月27日
固定価格買取制度(FIT)の買取価格40円/kWh(税抜き)
売電先エネット、東京電力グループ