宮古島、「常時」出力制御、エコキュート「昼運転」で再エネ比率90%へ

メガソーラーは架台の「腐食」対策が急務に

2019/05/07 06:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ、

太陽光は「接続可能量」に到達へ

 沖縄県の宮古島は、東京から約2000km、那覇からでも約300kmの距離にあり、沖縄本島と台湾のほぼ中間に位置する。面積は約204.5km2で大阪市より少し小さいが、人口は5万5000人余り。そのほとんどが市街地である平良地区に住んでいる。

 隆起したサンゴ礁からなる平坦な島で、大きな川はなく、地下ダムを建設して雨を貯水してくみ上げ、サトウキビ栽培などが営まれている(図1)。亜熱帯性気候で年間を通じて温暖な半面、台風や干ばつの影響を受けやすいなど、厳しい自然環境でもある。

宮古島ではサトウキビが主要作物になっている
同島では地下水を地中に堰き止める「地下ダム」を建設し、丘の上の貯水タンクに組み上げておき、サトウキビなどに散水している(出所:日経BP)
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 電力需要のピークは夏季の約60MWで、昼間軽負荷期の最少需要は冬季の約22MW。島内の発電施設は、定格出力60.5MWのディーゼルエンジン発電と15MWのガスタービン発電、そして、約30MWもの再生可能エネルギー発電設備となっている。

 再エネの内訳は、風力発電4.8MW、沖縄電力直営のメガソーラー(大規模太陽光発電所)4MW、その他の需要家などに設置された太陽光が約20MWとなっている(図2)。同島の太陽光の接続可能量(30日等接続可能枠)は約24MWに設定されているが、さらに約17MWが接続申込済みとなっており、近い将来、出力抑制(出力制御)が始まる見込みだ。

図2●沖縄電力が直営で運営する4MWのメガソーラー
国の実証事業によって建設された(出所:沖縄電力)
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「再エネ比率90%」目指す

 同島ではすでに電力系統の短周期変動への影響から50kW以上の大規模な太陽光の接続申し込みが停止になっている上、50kW以下の低圧接続の太陽光に関しても、「30日等接続可能枠」を超えて接続した太陽光に関しては、無制限・無補償の出力抑制が条件となる。事実上、新規の太陽光発電所の開発が難しい状況になっている。

 こうしたなかにあっても宮古島市は、今後も島内に太陽光発電をさらに増やし、2030年に128MW、2050年には208MWまで導入する目標を2019年3月に公表した。

 これは「エコアイランド宮古島宣言2.0」に盛り込まれた「エネルギー自給率」の目標である2030年22.5%、2050年48.85%を達成するための手段として設定したもの(図3)。2030年に太陽光128MW、風力6.9MWの導入によって「再エネ電力比率・55.1%」、2050年に太陽光208MW、風力36.9MWの導入で「再エネ電力比率・91.9%」の達成を目指している。

図3●宮古島市が掲げた一次エネルギー自給率の目標
(出所:宮古島市)
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 これらの太陽光の目標は、現時点におけるピーク需要(約60MW)の2~3倍もの出力規模になる。こんな大量導入が太陽光発電の経済性を確保しつつ、可能なのだろうか。

太陽光とエコキュートを併設

 挑戦的な目標の前提には、電力の需給バランスを巡る発想の転換がある。「これまでの電力システムは消費者の需要に合わせて電力を供給していたが、天候による再エネ供給量の変化に合わせて消費者側が電力の使い方を調整できれば、太陽光を低コストで持続的に導入できる」(宮古島市企画政策部・エコアイランド推進課)。

 こうした考え方は、「デマンドコントロール(DC:需要制御)」や「デマンドレスポンス(DR:需要応答)」と呼ばれ、蓄電池の利用を最小化しつつ、再エネを大量に導入できる手法として注目されている。こうした需要家側の分散エネルギー機器を集約制御する「アグリゲーター」を模擬した実証事業が、国内各地で試行的に導入されてきた。

 宮古島市で2011年度から始まった「島嶼型スマートコミュニティ実証事業」も、こうした「需要の柔軟化」を目指す実証の1つになる。ただ、2018年度から始まった同事業のフィールド実証が他に比べて画期的なのは、短期的な実証事業ではなく、一般送配電事業者(沖縄電力)とアグリゲーター事業者が連携しつつ、需要家にも、送配電事業者にも利点の大きい持続的な「需要制御の仕組み」を目指している点だ。

図4●太陽光とヒートポンプ給湯機(エコキュート)の基本構成
(出所:ネクステムズ)
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 このフィールド事業で普及を目指している分散型エネルギー機器は、住宅用太陽光発電とヒートポンプ給湯機(エコキュート)、そして家庭用蓄電池とEV(電気自動車)充電器だ(図4)。

 これらはいずれも遠隔から制御できるようにし、太陽光については出力を制御する。加えて、既存の農業用散水栓に遠隔制御可能なシステムを付加し、需要制御に活用する。これは地下ダムに蓄えた水を定期的にサトウキビなどに放水するためのものだ。

「第三者所有モデル」で電気とお湯を販売

 同事業の推進主体は、ネクステムズ(沖縄県宜野湾市)とその子会社の宮古島未来エネルギー(同県宮古島市)で、前者が制御システムの開発とアグリゲーター、後者が住宅などに太陽光とエコキュートなどの分散エネルギー機器を「第三者所有モデル」で設置し、住宅などに電気と温水を販売する。居住者は初期費用を負担せずに、太陽光の電力とエコキュートのお湯を利用できる。

 ネクステムズは、2017年度までに分散エネルギー機器の遠隔制御システムを開発し、模擬負荷を使って検証してきた。HEMS(住宅エネルギー管理システム)の標準プロトコルであるECHONET Liteを使い、市販の太陽光向けパワーコンディショナー(PCS)、エコキュート、家庭用蓄電池などをマルチベンダー(複数のメーカー製品)で制御できる。

 2018年度からは、宮古島未来エネルギーが太陽光発電とエコキュートの設置を開始した。2018年度の実績は、市営住宅40棟202戸向けに太陽光を合計1217kW、エコキュート120台を設置した。総事業費は約3億円で3分の2を補助金で賄った(図5)。

図5●太陽光とエコキュートを設置した市営住宅
(出所:日経BP)
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 2019年度の計画では、戸建て住宅500戸に太陽光を合計4000kW、エコキュート400台、家庭用蓄電池300台、事業所50カ所に太陽光3000kW、EV充電器400台、市営住宅100棟600戸に太陽光3000kW、エコキュート400台を設置。さらに、2020年度の計画では、戸建て住宅1000戸、事業所50カ所などへのエネルギー機器の設置を目指している。

 居住者に対するサービス内容は、市営住宅の場合、一定の基本料金を払えば50度のお湯を100L当たり45円(水道代別)で販売するほか、共用部分の電気代が無料になる。平均的にガス代が1割以上安くなるという。また、戸建て住宅の場合、太陽光パネル7.8kW(PCS出力5.5kW)とエコキュート設置で、太陽光電気を20円/kWh、お湯を50円/100L(水道代別)の単価で販売する。平均的に光熱費は月3000円程度、安くなるという。

太陽光を「常時出力制御」

 一方、ネクステムズは、2018年度から市営住宅に設置した太陽光とエコキュートの遠隔制御を開始した。太陽光に関しては、「常時出力制御運転」で運用している。これは、沖縄電力から出力制御の指令がなくても、自主的に最大出力を抑制するもので、正午前後の高位出力帯(kW)を月ごとに固定で、夏は30~40%、冬は50~60%分抑制する(図6)。

図6●太陽光の「常時出力制御」のイメージ
高位出力帯(青色)を常に出力抑制することで島内電力系統への負荷を減らす(出所:ネクステムズ)
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 ネクステムズでは、この運用手法を「すり切り」と呼んでいる。同社の比嘉直人社長は、「高出力帯をこの程度のすり切りで出力抑制しても、年間発電量(kWh)は10%程度のロス(逸失電力量比率)で済むことが分かっている。一方で高出力帯は出力変動が大きく、すり切りによって出力が安定化することで、電力系統への負担が大幅に緩和される」と言う。

 加えて、太陽光の余剰電力が多くなる時間帯にエコキュートの沸き上げ運転を行い、自家消費する太陽光電力を積極的に増やす。エコキュートの負荷は夏1.0kW、冬1.5kWになり、夏は2時間、冬は3時間、稼働させる。これにより太陽光の余剰電力を吸収し、今後、始まる沖電による出力制御を回避できる可能性もある。

 今年度から導入する家庭用蓄電池とEV充電設備の運用方法などに関しては、現在、検討しているという。

月単位のスケジュール制御

 比嘉社長は、「太陽光のすり切り運転とエコキュートの昼運転だけでも、太陽光の余剰電力が大幅に減るとともに、系統に逆潮される量を予測しやすくなる。沖縄電力による島内系統の運用がかなり楽になるはず」と言う(図7)。

図7●太陽光とエコキュートの制御イメージ
「PV」は太陽光発電、「EQ」はヒートポンプ給湯機(エコキュート)(出所:ネクステムズ)
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 ネクステムズでは、太陽光とエコキュートとも、遠隔で月単位などの制御スケジュールを送信する形で運用しており、リアルタイムによる緻密な制御は行っていない。その理由について、比嘉社長は、「通信コストと遠隔操作の信頼性を考慮すると、データのやりとりが多くなるリアルタイム制御は、得策でない」と見ている。

 また、現時点では、ネクステムズは、島内の系統運用に貢献するアグリゲーター業務に対して、沖電から対価を受け取っていない。ネクステムズは実証事業の受託会社であり、子会社の宮古島未来エネルギーが第三者所有モデルによるエネルギー機器設置事業で収益を確保するという構造になっている。

 ネクステムズでは、さらに太陽光発電の設置が増える来年度以降、沖電の給電指令所からも遠隔制御できるようにする予定という。沖電にとっては、緊急時に需給バランスの維持に直接、制御できる電源が増えることになり、今回の事業で設置した分散エネルギー機器の価値がさらに高まる。

 「将来的には、太陽光の常時出力制御やエコキュートの遠隔制御などを可能にした顧客に関しては、沖電の電気料金を割り引くなどの形で需要家に還元するような仕組みも提案していきたい」と、比嘉社長は言う。そうなれば、分散エネルギー設備のアグリゲーター業務の対価を、需要家から得られるビジネスモデルも可能になってくる。

2階建ての展望台を建設

 宮古島では、今回の分散エネルギー機器の集約制御による需給バランスの改善プロジェクト事業に先駆け、大型蓄電池を活用して、太陽光と風力の出力変動を緩和する実証事業を行い、成果を上げてきた。

 沖電が「2009年度離島独立型系統新エネルギー導入実証事業補助金」を活用して建設したもので、2010年10月に4MWのメガソーラーと共に4.1MWもの大型蓄電池を導入した。日本ガイシ製のNaS(ナトリウム硫黄)電池を4MW分、東芝製Liイオン電池を100kW分設置した。これらを使ってメガソーラーの出力を平準化したり、事前に計画した出力ロードで発電したりすることで、系統電力の安定的な運用を実現してきた(関連記事:沖縄県宮古島、メガソーラーの出力を蓄電池で平準化)。

 この実証事業はすでに終了したものの、沖電は現在も4.1MWの大型蓄電池を島内系統の安定化に使っている。具体的には、系統周波数の変動を打ち消すように瞬時に出力する「ΔF(周波数偏差)制御」を行いつつ、より長期で充電と放電を制御することで、系統全体の長周期変動を抑制する運用にも使っている。

 一方、4MWのメガソーラーには2014年に宮古島市が、2階建て高さ8.2mの展望台を完成させ、「宮古島次世代エネルギーパーク」のメイン施設の1つとして、視認性を高めた。

 このメガソーラー施設は、島の南側沿岸に約1kmに渡って細長く、階段状にパネルを配置した。パネルの周囲は背の高い木々で囲まれているため、敷地沿いの公道からはほとんど見えないが、展望台に上がると、整然と並んだパネルの列が見渡せる(図8)(図9)。

図8●展望台から西側を眺めた時のメガソーラー
(出所:日経BP)
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図9●展望台から東側を眺めた時のメガソーラー
(出所:日経BP)
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重耐塩塗装でも赤錆が・・・

 太陽光パネルは、シャープ製の多結晶シリコン型を中心に、京セラ製多結晶シリコン型、カネカ製のアモルファス(非晶質)シリコン型を設置した。PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を導入した。

 頻繁に台風に襲われるため、太陽光パネルの設置角度は5度まで寝かせた。架台の強度は、基準風速46m/秒、瞬間最大風速73m/秒を考慮している。加えて、海に面しているため、太陽光パネルと架台は重耐塩塗装を施したほか、PCSや蓄電池などの電気設備は、すべて建屋の中に収納した。

 とはいえ、稼働から9年以上経ち、太陽光パネルのアレイ(パネルの設置単位)を支える架台の腐食が進んでいる。今春に同島を訪れてメガソーラーを見学したところ、架台を構成する鋼材の塗膜下に赤錆が出始め、塗装が剥げ落ちている箇所が目立った(図10)。

図10●架台の腐食が目立っている
(出所:日経BP)
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一部のパネルが強風で外れる

 パネルの設置エリアは、海沿いの岸壁から道路を隔てた至近距離にあり、台風など強風時には、岸壁にぶつかった波のしぶきが直接、パネルや架台に降り注ぐことも多いという。こうした苛酷な環境下で、予想以上に架台の腐食度合いが激しかったという。

 架台の腐食により、パネルを固定していた留め具が緩くなり、強風で飛散しかけたケースが見つかったため、全パネルの固定状況を確認し、外れるリスクの高いパネルについては、事前にアレイ単位などで取り外しているという。

 沖電では、今後、どんな形で対応していくか、検討しているという。

●設備の概要
施設名宮古島メガソーラー実証研究設備
住所沖縄県宮古島市城辺字福里1878-1
敷地面積9万8089m2
発電事業者沖縄電力
発電開始日2010年10月
発電容量4MW
蓄電池の容量4MW(NaS電池)、100kW(Liイオン電池)
EPC(設計・調達・建設)東芝
太陽光パネル多結晶シリコン型(シャープ製、京セラ製)、アモルファス(薄膜)シリコン型(カネカ製)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
模擬負荷装置一般家庭100軒、学校など大口需要家4軒を想定
電圧調整装置SVC(無効電力補償装置)、SVR(自動電圧調整装置)